気候変動への対応
東陽テクニカグループは、世界各地で異常気象による自然災害が多発化・激甚化している状況を踏まえ、気候変動への対応を重要な経営課題と認識しています。環境保全の推進をサステナビリティ優先課題(マテリアリティ)の一つに位置づけ、事業活動を通じた脱炭素社会の実現への貢献と、気候変動に伴うリスクおよび機会への対応を全社的に推進しています。
当社グループは、2022年に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、そのフレームワークに基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の観点から気候変動が事業および財務に与える影響とその対応について情報開示を行っています。
Scope1およびScope2の温室効果ガス排出量については、2033年にネットゼロを達成することを目標に掲げ、削減に取り組んでいます。
ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティ委員会が気候変動への取り組みを統括しています。サステナビリティ委員会は代表取締役社長執行役員を委員長、経営企画担当執行役員を副委員長とし、関連部門の責任者で構成されています。同委員会ではサステナビリティ優先課題の特定、評価および進捗管理を行うとともに、気候変動を含む重要テーマについて継続的な改善に取り組んでいます。専門的な検討が必要なテーマについては関連する委員会と連携し、取り組みの高度化と実効性の向上を図っています。
サステナビリティ委員会で検討された活動計画や進捗状況は経営会議に報告され、気候変動に関する重要事項の協議および意思決定が行われます。取締役会は経営会議で決定された重要事項について定期的に報告を受け、必要な指示および監督を行うことで、気候変動への対応を経営レベルで監督しています。

気候変動対応の役員報酬制度への反映
当社では、2025年10月より新たに業績連動型株式報酬制度を導入しています。本制度は、企業としての社会的責任を果たしながら中長期的な業績向上および企業価値の持続的な成長を実現することを目的としており、サステナビリティ経営へのコミットメントをより一層強化するものです。評価指標には、気候変動対応を含むサステナビリティ関連項目を組み込んでいます。
業績連動型株式報酬制度に関する詳細は、こちら をご参照ください。
戦略
当社グループは、気候変動に伴う規制強化や市場環境の変化を重要な事業リスクとして認識するとともに、脱炭素社会の実現に向けた中長期的な事業機会と捉えています。これらのリスクおよび機会への対応は、サステナビリティ中期計画“STY2027”に組み込み、中期経営計画と一体的に推進しています。
“STY2027”では、「技術革新への貢献」「環境保全の推進」「持続可能な経営基盤の確立」を重点課題として掲げています。当社グループの強みである計測・評価ソリューションは、脱炭素社会の実現を支える技術基盤であり、電気自動車や先進モビリティ、次世代電池の開発に加え、水素エネルギーや洋上風力など再生可能エネルギー分野の発展にも貢献しています。
これらの分野では、脱炭素社会の実現に向けた研究開発の高度化や技術革新の進展に伴い、より高度で精密な計測・評価技術への需要が高まっています。当社グループの計測ソリューションに対する市場ニーズは今後も拡大すると見込まれており、社会の脱炭素化の進展は中長期的な成長機会になると認識しています。
気候関連シナリオ分析の実施
東陽テクニカグループは、気候変動が事業に与える影響を把握するため、TCFD提言に沿ったシナリオ分析を実施しています。2022年には、気候変動に伴うリスクおよび機会の特定と財務インパクトの定性評価を行い、その結果を公表しました。2026年には、前回評価から3年が経過し、気候変動を取り巻く外部環境の変化を踏まえ、改めてリスクと機会を洗い出しました。そのうえで、定量データに基づく財務影響の評価を実施しました。
シナリオ分析のプロセス
- 重要なリスク・機会の評価
気候変動の影響が大きい事業部門を対象にインタビューを実施し、重要なリスクおよび機会を特定しました。 - シナリオの定義
気候変動によって当社の事業環境が大きく変化した場合におけるビジネス機会や事業レジリエンスを評価することを目的として、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のSSP1-1.9およびSSP5-8.5シナリオ、IEA(国際エネルギー機関)のNZEおよびAPSシナリオなどを参照しています。移行リスクおよび機会の分析では「1.5℃シナリオ」※1、物理リスクおよび機会の分析では「4℃シナリオ」※2を採用しています。 - 事業インパクトの試算
収集した外部情報を基に、当社グループの事業に与える財務影響を試算しました。機会については2035年、物理リスクおよび移行リスクについては2050年を想定し、短期(3年未満)、中期(3年~10年未満)、長期(10年~30年)の時間軸で財務への影響を評価しています。定量データの入手が困難な項目については、今後も可能な範囲で定量評価を進めていきます。 - 対応策の検討
インパクト評価の結果を踏まえ、気候変動関連リスクおよび機会について、対応策の検討を行いました。
※1:環境規制が強化され、気温上昇が産業革命以前に比べて1.5℃未満に抑えられるシナリオ
※2:温室効果ガス排出が継続的に増加し、平均気温上昇が産業革命以前に比べて4℃上昇するシナリオ
気候変動によるリスクおよび機会 対応策
リスク
| リスク 分類 |
リスク タイプ |
リスク項目 | 財務上の潜在的影響 | 影響度 (小/中/大) |
時間軸 (短期/中期/長期) |
対応策 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 移行 リスク |
政策・ 法規制 |
炭素価格の上昇 | 低炭素化に伴うエネルギー・原材料・物流等の調達コストの上昇により事業コストが増大 | 小 | 短・中 |
|
| 開示要請・規制強化 | 環境規制の強化、顧客要求の厳格化、開発支援政策変更などへの対応遅れにより商機を逃し、収益が減少 | 中 | 中 |
|
||
| 市場・ 技術動向 |
市場・技術動向の変化による業績影響 | AIの進展やエネルギーミックス転換などにより既存事業の需要が減少し、収益が減少 | 中 | 中 |
|
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| 評価 評判 |
ESG評価低下・開示不足 | サステナブル経営やESG情報開示の遅れにより企業価値やレピュテーションが低下 | 小 | 短・中 |
|
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| 物理 リスク |
急性 | 異常気象の激甚化 | 甚大な異常気象により自社施設が被災し事業中断することにより収益が減少 | 小 | 短・中・長 |
|
| 異常気象によるサプライチェーン寸断 | 甚大な異常気象が発生しサプライチェーンが寸断することによる販売機会の減少や対応費用の増加 | 中~大 | 短・中・長 |
|
機会
| 区分 | 機会項目 | 財務上の潜在的影響 | 影響度 (小/中/大) |
時間軸 (短期/中期/長期) |
|---|---|---|---|---|
| 緩和 | 次世代技術への貢献 | 電動化・AI・量子技術など、気候変動の緩和に資する高度な計測・評価ソリューションへの需要が拡大することで収益機会が増加 | 大 | 短・中 |
| 脱炭素社会への貢献 | 再生エネルギー・蓄電・水素社会の実装に向けて計測・評価ソリューションの需要が拡大することで収益機会が増加 | 大 | 中・長 | |
| 適応 | レピュテーションの向上 | サステナビリティ経営の深化、地域協働の推進、透明性の高い情報開示により、ステークホルダーからの信頼と企業価値が向上 | 小 | 中・長 |
| 社会レジリエンス強化への貢献 | 通信インフラの高度化や異常気象の頻発化に適応する社会基盤の構築において計測・評価ソリューションの需要が増加することで収益機会が増加 | 大 | 短・中・長 |
時間軸の定義:短期:3年未満、中期:3年~10年未満、長期:10年~30年
財務影響度:小:1億円未満/中:1億円以上 10億円未満/大:10億円以上
シナリオ分析の結果
分析の結果、当社グループにおいては、気候変動関連リスクによる財務影響は相対的に小さい一方で、事業機会の影響度が大きいことが確認されました。
1.5℃シナリオにおいて想定される炭素税の上昇や省エネルギー基準の強化などの政策・規制リスクについては、当社グループの事業に与える財務的影響額は軽微であると評価しています。一方で、脱炭素社会の実現に向けた技術開発の進展に伴い、電気自動車や次世代電池のほか、水素や洋上風力など次世代エネルギーの分野において、当社が提供する計測ソリューションの需要拡大が見込まれます。これにより、中長期的な事業機会が拡大する可能性があることが確認されました。
また、4℃シナリオにおいて想定される高潮や洪水などの物理リスクについては、当社グループ拠点への影響額は相対的に小さいと評価しています。
これらの分析結果から、2050年に向けて世界がいずれの気候変動シナリオに進んだ場合においても、現時点での分析においては当社グループの事業は継続可能であり、一定のレジリエンスを有していることが確認されました。
リスクおよび機会への対応
当社グループは、移行リスクへの対応として、温室効果ガス排出削減目標を設定し、非化石証書やクレジットの活用などにより段階的な削減を進めています。これらに伴う調達費用は財務計画に織り込んでおり、費用増加リスクを適切に管理しています。
物理リスクへの対応としては、豪雨災害や大型台風などの自然災害が頻発化・激甚化を踏まえ、事業継続体制(BCP)の強化を推進しています。自社施設に損害が生じた場合は損害保険で対応しつつ、重要設備の耐災害性向上や倉庫管理体制の最適化などを進め、災害時における事業影響を最小化する体制を構築します。
一方、機会への対応として、電動化、水素利活用、再生可能エネルギーなど脱炭素社会の実現を支える分野に加え、通信インフラのレジリエンス強化や災害予知・監視など、強靭な社会インフラを構築に資する分野で、高精度の計測・評価ソリューションの提供を拡大します。これらの取り組みを通じて、緩和と適応の両面で気候変動への対応を進めていきます。
今後も、複数シナリオに基づく分析の精緻化を継続し、リスクと機会の定量・定性評価を高度化させ、その結果を事業戦略に反映させることで、気候変動への対応力を一層強化し、持続的な企業価値向上につなげていきます。
リスク管理
当社グループは気候変動に関連する外部環境の変化に対応するため、サステナビリティ委員会においてリスクおよび機会が与える財務影響を「大」「中」「小」の三段階で定量的に分析・評価し、対策案を検討しています。財務影響が大きいリスクおよび機会については経営会議および取締役会に報告し、全社的なリスク管理の観点から適切な対策を審議・決定しています。これにより、リスクの最小化と機会の最大化の両立を図り、気候変動に関するリスク管理体制の強化を継続的に進めています。
指標と目標
当社グループは企業活動に伴って発生する環境負荷を軽減するため、温室効果ガス排出量について、以下のとおり目標を設定しています。
Scope1とScope2については、削減の取組みを加速させるため、2025年10月より対象範囲を従来の東陽テクニカ単体から国内外の連結子会社に拡大するとともに、ネットゼロ達成目標を2050年から2033年に前倒ししました。パリ協定が求める1.5℃基準に適合しており、2024年を基準年として2030年に60%削減、2033年にネットゼロの達成を目標としています。
Scope3については、カテゴリ11および12の排出量を算定し、サプライチェーン全体に与える影響を把握したうえで削減目標を設定する予定です。
温室効果ガス排出量目標(Scope1+2)
| 実績 | 目標 | |||
|---|---|---|---|---|
| 2024年 (基準年) |
2027年 | 2030年 | 2033年 | |
| 温室効果ガス排出量 (単位:t-CO2) |
1,624 | 1,111 (2024年比32%減) |
650 (2024年比60%減) |
ネットゼロ |
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