第12回 アクティブサウンドデザイン/
音や振動のアクティブコントロール

イントロダクションで述べたように音場の補正というのは、補正された音を他の音の印象に置き換えることができるため、既存の音を広範囲で自由に変更することができます。
これに関わるコストとは別に、“人工”の電気音響的なサウンドに対して受け入れ難いという意見があれば、それはある目標音を実現するために役立つツールとしてアクティブサウンドコントロールが製品レベルで提供する大きな可能性を消してしまうことになりかねません。
これは、音の信頼できる評価のため、他の知覚感覚が関連する複合的な環境の中で評価する必要があるためです。
この環境というのはラボでは実現できないため、製品で与えられた音を変化させるため電気音響的なコントロールの重要性は高まります。そして、これがまさにアクティブサウンドデザイン(ASD)ができることです。以下では車内の音について簡単に説明します。

歴史的に、車内音はユーザーにとって最も重要な特徴のひとつです。その結果、音はますます意識的に設計されてきました。そのような設計を行うには、ノイズと目標音の明確な切り分けが必要です。

このため、既知の音と、何らかの方法で音をコントロールし新しい音を定義し、その両者をヒアリングテストで分析し、心理音響的に評価することができます。
ただし、聴覚と音の印象は運転状況の影響を強く受けるため、このような新しい車の音は最終的にラボで評価できません。

したがって最終評価は、自動車を運転する際と同等の現場テストに基づいている必要があります。さまざまな、十分に調整された音を備えた試作車を準備するには、通常、膨大な工数が必要です。
ここでは、RPMに関する車内音のアクティブデザインとその実現により、コンポーネント自体を変更せずにエンジン関連のコンポーネントの音を変更させる開発ツールとなり得ます。

したがって、主観的に調整されたテストを可能にすることで、試作車を構築することなく、さまざまな音を評価し、完全な運転体験の環境でさらに音開発を行うことができます。

図1は、[第9回]の図2の説明で前述したように自動車の例としており、4気筒エンジンの音響特性をどのように変更できるかを示しています。
4気筒エンジンでは通常無視できる3次成分(一点鎖線)は、ASDを使用することで、目標のrpm曲線(破線)によく近似していることがわかります。3次成分によって支配されるスペクトルは、6気筒エンジンの典型的なものです。


図1:運転席(左図)および助手席(右図)での耳位置での音圧のエンジン3次成分のrpmトラッキング
ASDを使用しない場合(下側の破線)と使用する場合(上側の実線)
上側の実線近くの破線はASDの目標を示しています。

したがって、図1と2次成分の抑制が示されている[第9回]の図2を比較すると、6気筒エンジンの音の印象は、適切に制御された4気筒エンジンによって生成できると結論付けることができます。

これは、図2の通りASDを搭載した別の車の次数解析でも確認できます。ここで、図2中央では2次成分が低減され、図2下のように6気筒エンジンに典型的に現れる3次成分、6次成分、および9次成分の次数成分が上昇することがわかります。
車の車外騒音にも、アクティブコントロールによって音響特性を変更できます。排気マフラーの場合ですが、これはすでに[第7回]図5に示されていました。またエンジン吸気システムにも適用可能なことが実証されています。


図2:ドライバー耳位置の音圧の次数解析
補正なし(上図)、アクティブノイズコントロール(中図)、アクティブサウンドデザイン(下図)

測定による評価だけでなく、車でアクティブコントロールにより実現されたエンジン音の信頼性は、多くの主観的な評価がなされています。
実際、音質にバリエーションを持たせるためには図2の様に非常に細かいグラデーションを必要としますが、信憑性とともに、上記の例では、製品の音を特定および開発する際のアクティブな音のデザインの可能性を明確に示しています。

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