機械制御/振動騒音
IR情報 会社情報

技術資料

第4回 アクティブシステムの動作メカニズムに関する考察 /
音や振動のアクティブコントロール

1.アクティブシステムの動作メカニズムに関する考察
いかなる音場も任意に変更するためには、その音場の補正を必要とします。なぜなら、少なくとも元の音場を補正または縮小できなければ、音場の分布の変更または置換は有効ではないからです。この理由のため、音を発生させる機械的構造を直接変更する場合を除いて、全てのアクティブコントロールの手法は、機械的に発生する音場および振動場の負の(逆位相)再現に基づいています。

ここでは、音場の再現は一般的に、現在の1次音場 fp(x,t)を、任意の時間tと空間内の位置xにおいて2次音場 fs(x,t)で近似することを意味します。
しかしfs(x,t)の生成は有限の制御要素と自由度の範囲に制限され、fpとfsを同一にするという要望は全ての時間tと空間内の位置xで実現できる訳ではなく、限定された範囲で可能です。

どんな場の分布も、異なるパラメータによって記述することができます。したがって、このパラメータの定義は、必ずしも空間/時間領域に限定されず、モード分解(モード変換)または平面波の重ね合わせ(フーリエ変換)のような任意のパラメータの記述に基づくことができます。平面波の再現は、それらの伝播の制御を可能にし、一方、モード振幅の再現は、関連する振動振幅のアクティブな低減を直接目的とします。

可能な限り少ないパラメータから適切な場の情報を取得することは、可能な限り少ないアクチュエータで関連する場を制御するという重要な条件につながります。したがって、モードまたは波ベースのアプローチを使用するかどうかは、具体的な問題の種類から直接決定することができます。構造体のいくつかのモードのみが耳障りなノイズ成分に関係している場合、それらのモードの測定に限定したモードアプローチが推奨されます。

どちらのアプローチも、有限の数のパラメータを用いて対象の場を近似し、お互いに同じことを意味しています。伝播する波の概念は、伝統的にモード概念によって支配される振動理論によって採用されてきました。ここで、最初のアプリケーションは、大きな空間構造に集中しました。

モードおよび平面波に集中することとは別に、他の概念が、アクティブコントロールの可能性を理論的に説明するために使用されてきました。これらの中で、エネルギーの流れを直接制御、およびアクティブに実現されるインピーダンスの制御について説明します。インピーダンス制御は、その効果が対象とする媒体の局所インピーダンスにのみ依存するという事実を利用します。したがって、波の伝搬に関するモデル化は不要となります。
しかし、この利点がある一方、広範囲な場の挙動を十分に記述する局所的な基準を見つけることは困難です。室内音響において、巧みに調整して壁の音響インピーダンスを最小化することで高い減衰率を実現しているのはその一例です。

広範囲な挙動へ直接関連するものとして、エネルギーの流れの目標制御があります。全ての関連するエネルギーの流れは、それぞれ、任意の二次的尺度に強く依存するので、伝播波の振幅のような他の目標量を制御することによってのみ、エネルギーの流れを間接的に制御することが有利であるように思われます。以下において場のモデル化と重ね合わせという最も重要な概念について、アクティブシステム設計に対する体系的な解説をします。
 
2.アクティブシステム設計の概念
音や振動のアクティブコントロールは、適切な2次音場の重ね合わせに基づいているので、アクティブシステムを設計する際の本質的な仕事は、良い条件の、すなわち最も効果的な2次音源をそれらが交わる箇所と一緒に定義することです。これは、2次音源の種類、数、および位置が、考慮中のシステム(電気音響システム:EASまたは電気機械システム:EMS)の制御性(すなわち、ターゲットのZを理想とする値に近似する品質)を決定的に左右するからです。

したがって、物理的な考察に基づいてターゲットの物理量の制御性をもとに構築するのは良いやり方です。例えば、音源からターゲットにする点までの伝播経路における一次音場の系統的分析、および二次音源を追加することの効果についての調査などです。

このアプローチは、効果的なノイズコントロール手段のための最適な位置を見つけるために、音源から受信点までの制御すべき音の伝搬経路を調べることによって与えられる、パッシブノイズコントロールの確立された概念に完全に対応します。したがって、以下で例示的に、何個の音源がどの場所で、どの様な効果で、音および振動をコントロールできるかについて、考察します。

・音場の中の音源において
・音場の伝搬経路において、そして
・ターゲットとする空間内において

また、コントロール対象のターゲットの物理量やZRやYRという入力信号を取得する測定手法を定義することは、アクティブな測定の成功に大きく影響します。これは、この成功が、ターゲットの挙動を推定する品質、または制御理論の用語では、考慮中のシステム(EASまたはEMS)の観測性に直接関係するからです。信号処理ユニットGによって要求される遅延時間に関しては、適切な入力信号YRおよびZRを定義し、特に十分なリードタイムを確保することが重要です。
これらの原理から、アクティブシステムの設計戦略を導出することができます。

1. 有限なパラメータ数で行うアクティブな測定のためのターゲットの数式化。 例えば、これらのパラメータは、特定の波またはモードの複素振幅によって、またはある点における音圧の複素振幅によって与えられます。

2. 1.で定義されたターゲットを可能な範囲で最良に達成することができるようなソース(A)の仕様。

3. 1.で定義されたターゲットを可能な範囲で達成するのに最も適した測定手法の仕様。

4. 1.3で与えられたコントロールの可能性を最適に実施するための信号処理ユニットGの構造およびパラメータの仕様。 ソースの出来るだけ近くで音や振動を対策するという実証された原理は、アクティブシステムに対しても最も価値があります。励起点でのエネルギーの反射や吸収によりその伝達を防ぐことに加え、場合により場自体の発生を効率的に防ぐことが出来ます。

特に、音場または振動場が、不安定な相互作用によって引き起こされる自励サイクルによって生成される場合、単純な対策は安定性を強制し、そして、そのサイクルを抑制することです。

以下では、アクティブサウンドコントロールの最も重要な物理的概念を簡単に説明します。理想化された仮定から生じるいくつかの制限のために、これらの概念は、必ずしも実際に実現可能な構成ではない場合もあります。しかし、それらは、必要な対策または周波数の制限を推定するのに役立ついくつかの物理的洞察を含んでいます。また、エネルギーおよび/またはパワーの発生する流れに関する最も重要な質問に対して、以下の章で回答します。

前述のように、任意の場のアクティブな近似は、まず、原則として、既存の1次音場の補正を必要とします。したがって、次回以降の考察は、このような音場の補正に焦点を置いています。

 

製品詳細はこちら≫

detail__vid--text.png

はい (2)
いいえ (0)

アーカイブ

  • 第5回 音源の再生成 /
    音や振動のアクティブコントロール

    多次元波伝搬の制御、並びに高モード密度な振動場の補正は、多くの場合、実際には実現不可能なほどの多数のセンサとアクチュエータを必要とします(詳しくは第6回以降を参照)。したがって、オリジナルの音源のコピーによって音場を打ち消そうとする方法がより好ましいです。

  • 第3回 アクティブコントロールの構造 /
    音や振動のアクティブコントロール

    音や振動のアクティブコントロールについての構造図を示します。音源Qは1つまたは複数の音源を示しており、発生する一次音場はベクトルYpで表現されます。アクティブコントロールの基本的な仕組みは、これらの一次音場Ypが2次音場Ysと交わる箇所で重ねられるということです。

  • 第2回 技術的発達の歴史 /
    音や振動のアクティブコントロール

    「(電気機械的に)制御された干渉によるノイズ消去」としてアクティブノイズ低減の考えに関して記載された最初の書面は、1933年から1934年にP. Luegによって取得されたいくつかの特許の中で見つけることが出来ます。

  • 第1回 イントロダクション /
    音や振動のアクティブコントロール

    「逆相の音によるノイズ低減」:40年以上にわたってこの魅力的でキャッチーなテーマは物理的な存在以上に注目を集めています。事実、この手法は部分的にでも不快と感じられる音場、つまりはノイズの存在する音場に対して有益で役立つアプリケーションとして認められています。この手法及びその音響工学の応用的拡大は多くの人に受けいれられてきました。

  • データ収集機器(DAQ)の性能指標

    データ収集機器(DAQ)のフロントエンドには、あらゆるノイズの影響が最小限になるような設計が求められます。そのような観点からDAQフロントエンドの性能を表すために、信号にどの程度ノイズが乗ってしまうかを示す様々な指標が利用されています。

  • スピーカ計測・評価技術 / 第6回
    スピーカ特性シミュレーションとモデルベース聴感試験

    いいスピーカとは何か、測定によって数値化して、その数値が高いほどいいスピーカである、という風に定量化ができればスピーカの開発は苦労しないと思います。ご存知の通り、今のところそのような測定器はありません。そのため、実際に聴感試験を行い、製品を評価します。

  • スピーカ計測・評価技術 / 第5回
    ビリつき音(Rub&Buzz)

    スピーカより発生するひずみは、その発生原因毎にいくつかの種類があります。主に、定常的に発生する線形ひずみ、スピーカの駆動状態によって発生する非線形ひずみ、そして、接触や異物によって発生する非定常ひずみ=Rub&Buzz(以下、ビリつき音)に分類されます。中でも、ビリつき音はその性質上、非常に耳に付きやすく、製品の品質に大きな影響を与えます。

  • スピーカ計測・評価技術 / 第4回
    スピーカから発生するひずみ

    いいスピーカとはどのようなスピーカでしょうか。ハイレゾ対応のものや、心地いい低音が鳴るもの、原音を忠実に再現するもの、といった様々な特徴を持つスピーカやイヤホンがある中で、その音響製品を使用する各個人がそれぞれ異なる感性や価値観をもって、その良否を判断します。ではスピーカの設計者は、ユーザがそのスピーカで音楽を聞いた時にどう感じるかを、どのように評価するのでしょうか。

  • スピーカ計測・評価技術 / 第3回
    大信号時のスピーカ特性

    スピーカユニットは、小信号で駆動しているときと大信号で駆動しているときでは、その性質が異なります。小信号時=ボイスコイルの変位が小さい時は線形であるのに対し、大信号時=ボイスコイルの変位が大きい時は非線形性を持ち、ひずみの原因となります。どの程度の電圧/音量で大信号、つまり非線形領域での駆動となるかは、そのスピーカユニットのサイズや重さ、形状で決まります。
    線形駆動時の特性は、第1回のT/Sパラメータで解説いたしました。今回は、大信号時の非線形の性質をどのように定量化し評価していくか、解説していきます。

  • スピーカ計測・評価技術 / 第2回
    スピーカの表面振動と音の伝播

    スピーカユニット表面、つまりダストキャップ、ダイヤフラム、サラウンドが振動することで、音が発生します。故にスピーカユニットの表面がどのように振動しているかが、音の広がりに大きな影響を与えます。その振動形状の測定方法、解析方法について、解説していきます。

PAGE TOP

本ウェブサイトではサイト利用の利便性向上のために「クッキー」と呼ばれる技術を使用しています。サイトの閲覧を続行されるには、クッキーの使用に同意いただきますようお願いいたします。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。