機械制御/振動騒音
IR情報 会社情報

技術資料

第10回 放射音のアクティブな補正

多くの技術的騒音制御問題は、振動する構造体からの音の伝搬や放射を取り扱います。その様なケースでは、放射された音場よりも音の放射自身を制御しようとします。この概念を図1に記載します。

 

bbm20191120_img01.png

図1 アクティブな放射音の制御の概念

 

このためには、基本的に2つの手法があります。1つは周囲の媒体を励起する振動源を制御する手法、もう1つは振動源からの伝達を減らすために周囲の媒体を制御する手法です。始めの手法では構造の振動パターンに作用し、2つ目の手法は放射されるパワーの合計が減少する様な構造にして、放射インピーダンスを変更します。

後者は放射構造に直接2次ソースを配置し、流体力学的に放射を打ち消す様な体積の流れを作り出すことで実現できます。個別の、または分散された振動源によりこの考え方を実現するための基礎的な考察とは別に、圧電型のアクチュエータ素子をパッシブな吸収体に取り付けることも興味深い試みです。しかし、これらの実用的な有効性はさらに検証する必要があります。

他には構造物を通して音の放射に影響を与える手法もあります。最も簡単な手法は、構造物の運動エネルギーに比例する放射構造の二乗平均速度を最小化して、構造物の振動を全体的に低減することです。これは、例えば数個のソースで寄与が高い全ての固体伝搬音を再現して、構造的な振動を全体的に制御できる場合に有効です。この手法については、第5回で説明をした高速列車の室内の低周波騒音の補正の例において確認できます。この例では、ボギーの2次ばねにおける加振力を補正することで、室内の音圧レベルを大きく下げることが出来ました。
また、放射に寄与している振動モードのみを制御する手法も有効です。そしてこの手法は、前述の放射構造の二乗平均速度を最小化する手法よりも、少ない数の2次ソースで実現できます。このことは、少ないモードが放射に寄与している場合により当てはまります。

このアクティブな対策は周囲の媒体の構造と音響の相互作用に完全に集中しているので、通常“アクティブ構造騒音制御”、またはASAC(Active Structural Acoustic Control)と呼ばれます。この手法の難しさは、適切なセンサで放射に関連するすべてのパラメータを捉える必要があることです。放射音場に適切にマイクロフォンを設置することで実現できる場合もありますが、多くの場合これは実現不可能です。このため、例えば構造的な測定のみから効率的な放射モードの複素振幅の様な、放射に関連するパラメータを算出することが必要です。

代表的な例として、航空機のプロペラからの圧力が胴体に作用して発生する機内の騒音のアクティブコントロールについて記載します。機内に複数のラウドスピーカを配置する代わりに、胴体に配置された複数のアクチュエータにより機内の音場を減らすことが出来ます。
図2では航空機のある標準的な試験結果を示しています。ここでは、翼通過周波数(blade passage frequency : bpf)の次数に同期した42個の電磁フォースアクチュエータにより、80個のマイクロフォンで測定される機内の音圧が、翼通過周波数の次数音が最小化する様に制御されます。 

図2 プロペラ機内でアクティブに音の放射を制御した場合の周波数スペクトル

 

他の航空機の結果を示す表1の比較表からも、ASACの方がラウドスピーカを用いたANCよりも4つの次数音についてよい結果になったことを示しています。

 

表1 プロペラ機内の音圧低減レベルの比較(dB)

 

製品詳細はこちら≫

detail__vid--text.png

はい (0)
いいえ (0)

アーカイブ

  • 第9回 閉空間におけるアクティブコントロール(後編)

    アクティブ手法による車の室内音を制御する試みは1980年から行われ、10年後に初めて成功事例が報告されました。その後、乗用車の場合では4~6個のラウドスピーカの装置が適切かつ扱いやすいことが判明しました。又この手法/装置により、300Hz以下(この周波数帯域は車室内の全座席で検知可能であり、人が乗車した際の頭の位置や頭の動きによって影響をあまり与えない周波数帯域です)で音場を全体的に減少させたり、変化させることができることも判明しました。
     

  • 第8回 閉空間におけるアクティブコントロール(前編)

    これまでご説明してきた考えでは、ターゲットとなっているエリアや容積からなる空間がどの様に構成されているかということは考慮せずに、波の励起や波の伝播を直接制御することを扱ってきました。これまでのアプローチでは、音源にアクセスすることができない場合や、いろいろな方向からやってくる沢山の波によって音場が特徴付けられている様な場合にはうまくいきません。
     

  • 第7回 波動伝播のアクティブコントロール(後編)

    具体例として、16個のラウドスピーカーと24個の計測用マイクロフォンを用い実験室に配置し、200~500Hzの間で30dBまで減衰させることができ、一部周波数範囲を遮蔽できるという結果を得ました。
     

  • 第6回 波動伝播のアクティブコントロール(前編)

    安定性の問題とは別に、二次音場および電子コントローラ内の伝播遅延時間は、「第2回 技術的発達の歴史」で言及したようなシンプルかつ標準的なフィードバック・コントローラの性能を制限する可能性があります。
     

  • 第5回 音源の再生成 /
    音や振動のアクティブコントロール

    多次元波伝搬の制御、並びに高モード密度な振動場の補正は、多くの場合、実際には実現不可能なほどの多数のセンサとアクチュエータを必要とします(詳しくは第6回以降を参照)。したがって、オリジナルの音源のコピーによって音場を打ち消そうとする方法がより好ましいです。

  • 第4回 アクティブシステムの動作メカニズムに関する考察 /
    音や振動のアクティブコントロール

    いかなる音場も任意に変更するためには、その音場の補正を必要とします。なぜなら、少なくとも元の音場を補正または縮小できなければ、音場の分布の変更または置換は有効ではないからです。

  • 第3回 アクティブコントロールの構造 /
    音や振動のアクティブコントロール

    音や振動のアクティブコントロールについての構造図を示します。音源Qは1つまたは複数の音源を示しており、発生する一次音場はベクトルYpで表現されます。アクティブコントロールの基本的な仕組みは、これらの一次音場Ypが2次音場Ysと交わる箇所で重ねられるということです。

  • 第2回 技術的発達の歴史 /
    音や振動のアクティブコントロール

    「(電気機械的に)制御された干渉によるノイズ消去」としてアクティブノイズ低減の考えに関して記載された最初の書面は、1933年から1934年にP. Luegによって取得されたいくつかの特許の中で見つけることが出来ます。

  • 第1回 イントロダクション /
    音や振動のアクティブコントロール

    「逆相の音によるノイズ低減」:40年以上にわたってこの魅力的でキャッチーなテーマは物理的な存在以上に注目を集めています。事実、この手法は部分的にでも不快と感じられる音場、つまりはノイズの存在する音場に対して有益で役立つアプリケーションとして認められています。この手法及びその音響工学の応用的拡大は多くの人に受けいれられてきました。

  • データ収集機器(DAQ)の性能指標

    データ収集機器(DAQ)のフロントエンドには、あらゆるノイズの影響が最小限になるような設計が求められます。そのような観点からDAQフロントエンドの性能を表すために、信号にどの程度ノイズが乗ってしまうかを示す様々な指標が利用されています。

PAGE TOP

本ウェブサイトではサイト利用の利便性向上のために「クッキー」と呼ばれる技術を使用しています。サイトの閲覧を続行されるには、クッキーの使用に同意いただきますようお願いいたします。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。