機械制御/振動騒音
IR情報 会社情報

技術資料

第3回 アクティブコントロールの構造 /
音や振動のアクティブコントロール

pak20190220_info_img.png
図1 一般的な構造


図1に音や振動のアクティブコントロールについての構造図を示します。音源Qは1つまたは複数の音源を示しており、発生する一次音場はベクトルYpで表現されます。アクティブコントロールの基本的な仕組みは、これらの一次音場Ypが2次音場Ysと交わる箇所で重ねられるということです。

その結果発生する音場Yは、いくつかの演算処理をされて機械的なシステムの中を伝搬します。このことは行列のブロックCとアクティブコントロールのターゲットであるZで表現されています。このターゲットZは、出来る限り理想とするZsに近づく様にします。アプリケーションに応じて、ZとZsの仕様は下記した様なそれぞれの設計目標によって変わります。

・1つまたは複数の場所で、音場、または音の強さをキャンセルする(Z=0)
・1つまたは複数の場所で、任意の周波数帯でのスペクトラムを最適に近似する
・ある帯域での平均された音のエネルギーや振動エネルギーを最小化する
・放射されるサウンドパワーを最小化する
 同様に、音の他の特徴も考慮されます。
・スペクトラムの振幅を任意の値に調整する
・任意の心理音響パラメータ(ラウドネスやラフネスなど)を実現する

ターゲットの定義が広範囲になる可能性があることから、これらは直接計測することが難しい場合もあります。このため効果的なターゲットを、計測やZ以外の他の音場から推定することが必要になります。計測されたすべての音は信号処理ユニットGで演算され、フィードバック信号ZRが生じます。
ブロックCからQに伸びる矢印は、発生する音場から音源Qへのフィードバック効果になります。これは、複雑な構造の場合に発生する不安定性による音や振動のメカニズムを示しています。

特にQからCを経てQに戻る閉ループは、多くの振動や波動の原因となる自励振動の構造やメカニズムを示しています。例えばこの閉ループに追加の閉ループを追加して構造を変えることで、その様な不安定性の発生を防ぐことが出来ます。 信号処理ユニットGは電気的な変換器Aを駆動するための信号uを提供し、Aは2次音場Ysを励起するために必要なアクチュエータとして動作し、Bの機械的なシステムの伝達経路を介して交差する箇所に伝わります。

最適な制御信号uを演算するために必要な情報を提供するGの入力信号は、その情報の内容により区別されます。図1の中でYRは音源Qや交差点における1次音場Ypに関する重要な情報を含むすべての信号を含んでいます。このことから、YRはしばしば参照信号と呼ばれます。一方、ZRはターゲットを推定する様な信号になります。

これまで説明してきた経路とは別に、図1のBからQへの経路でも2次音場から音源へのフィードバック効果が考慮されます。これは1次音場の歪みの他に、Qを介した2次音場によりYRに与えられる情報に対する変化をもたらします。適切な対策をしない場合、この望まれないフィードバックは誤った2次音場を発生させ、さらには第2回で説明した様な深刻な不安定性を発生させる可能性があります。

その様な不安定性に対する典型的な対策としては、2次音場に対する影響を抑制する様な計測であり、例えば2次音場の影響を受けない1次音場の直接的な計測やその様な1次音場を表現する物理量の計測です。また不安定性は、以降の章で説明するフィードバック補正により回避することも出来ます。

図1の一般モデルは、様々な構成を表現し説明することが出来ます。例えばもしQが内燃エンジンである場合、Zは排気システムやエンジンから直接放射されるサウンドパワーを表しています。また車両の基本構造に影響を与える固体伝搬のサウンドパワーも、ターゲットZを定義する際に有効です。2次変換器を駆動させるために、YRはrpm信号や2次音源上流の排気管の音圧を含みます。ターゲットに応じて、ZRは2次音源下流の排気管の音圧、事前に選定された車室内や車外のポイント、そして車両構造の中の物理量になります。

YR、Z、そしてZRを計測する装置とは別に、ブロックB、CとQは1つの音響システムASや機械式システムMSに組み込む、単一の音響(または機械式)システムになります。Aに含まれている電気機械変換器を統合することで、システムは電気音響システムEASや電気機械システムEMSに拡張することが出来ます。

この形式は、適切な(受動的な)音響/機械的な対策による騒音や振動の低減、及びASやMSにおける音響的なターゲット量の制御という古典的な課題を、電気音響/電気機械変換器を使用することで電気音響システム(EAS)/電気機械システム(EMS)というアクティブ制御能へとどの様に変換していくかということを示しています。

 YPは、Zに含まれるターゲットが最小化されるように、Aに含まれる2次音源により補正されるべき外乱を表現しています。YRにYPの時間的なふるまいについて十分な情報が含まれていれば、要求される制御信号uはYRだけから算出できます。このことは最終的に標準的フィードフォワード制御になります。

 これとは対照的に、制御するターゲットZ=Yとして評価することは、Y=0が目標の信号として規定される場合には、外乱ノイズを伴う標準的フィードバック制御になります。

 どの様なアプリケーションでも常に、純粋なフィードフォワード制御による計測可能(YRによる)な補正、かつ外乱の影響を予測して補正ができる様なシステムが設計されるべきです。この時に初めて、フィードバックコントローラによって制御信号Yの誤差に対しての動作が意味を持つ様になります。

コントローラの構造とその適切な各パラメータ類は、1つの制御信号または複数の制御信号を使用したアナログまたはデジタル制御理論に基いて定義されるべきであり、又信号処理システムや関連システムの設計思想に基づいて定義される必要があります。

 

製品詳細はこちら≫

detail__vid--text.png

はい (0)
いいえ (0)

アーカイブ

  • 第5回 音源の再生成 /
    音や振動のアクティブコントロール

    多次元波伝搬の制御、並びに高モード密度な振動場の補正は、多くの場合、実際には実現不可能なほどの多数のセンサとアクチュエータを必要とします(詳しくは第6回以降を参照)。したがって、オリジナルの音源のコピーによって音場を打ち消そうとする方法がより好ましいです。

  • 第4回 アクティブシステムの動作メカニズムに関する考察 /
    音や振動のアクティブコントロール

    いかなる音場も任意に変更するためには、その音場の補正を必要とします。なぜなら、少なくとも元の音場を補正または縮小できなければ、音場の分布の変更または置換は有効ではないからです。

  • 第2回 技術的発達の歴史 /
    音や振動のアクティブコントロール

    「(電気機械的に)制御された干渉によるノイズ消去」としてアクティブノイズ低減の考えに関して記載された最初の書面は、1933年から1934年にP. Luegによって取得されたいくつかの特許の中で見つけることが出来ます。

  • 第1回 イントロダクション /
    音や振動のアクティブコントロール

    「逆相の音によるノイズ低減」:40年以上にわたってこの魅力的でキャッチーなテーマは物理的な存在以上に注目を集めています。事実、この手法は部分的にでも不快と感じられる音場、つまりはノイズの存在する音場に対して有益で役立つアプリケーションとして認められています。この手法及びその音響工学の応用的拡大は多くの人に受けいれられてきました。

  • データ収集機器(DAQ)の性能指標

    データ収集機器(DAQ)のフロントエンドには、あらゆるノイズの影響が最小限になるような設計が求められます。そのような観点からDAQフロントエンドの性能を表すために、信号にどの程度ノイズが乗ってしまうかを示す様々な指標が利用されています。

  • スピーカ計測・評価技術 / 第6回
    スピーカ特性シミュレーションとモデルベース聴感試験

    いいスピーカとは何か、測定によって数値化して、その数値が高いほどいいスピーカである、という風に定量化ができればスピーカの開発は苦労しないと思います。ご存知の通り、今のところそのような測定器はありません。そのため、実際に聴感試験を行い、製品を評価します。

  • スピーカ計測・評価技術 / 第5回
    ビリつき音(Rub&Buzz)

    スピーカより発生するひずみは、その発生原因毎にいくつかの種類があります。主に、定常的に発生する線形ひずみ、スピーカの駆動状態によって発生する非線形ひずみ、そして、接触や異物によって発生する非定常ひずみ=Rub&Buzz(以下、ビリつき音)に分類されます。中でも、ビリつき音はその性質上、非常に耳に付きやすく、製品の品質に大きな影響を与えます。

  • スピーカ計測・評価技術 / 第4回
    スピーカから発生するひずみ

    いいスピーカとはどのようなスピーカでしょうか。ハイレゾ対応のものや、心地いい低音が鳴るもの、原音を忠実に再現するもの、といった様々な特徴を持つスピーカやイヤホンがある中で、その音響製品を使用する各個人がそれぞれ異なる感性や価値観をもって、その良否を判断します。ではスピーカの設計者は、ユーザがそのスピーカで音楽を聞いた時にどう感じるかを、どのように評価するのでしょうか。

  • スピーカ計測・評価技術 / 第3回
    大信号時のスピーカ特性

    スピーカユニットは、小信号で駆動しているときと大信号で駆動しているときでは、その性質が異なります。小信号時=ボイスコイルの変位が小さい時は線形であるのに対し、大信号時=ボイスコイルの変位が大きい時は非線形性を持ち、ひずみの原因となります。どの程度の電圧/音量で大信号、つまり非線形領域での駆動となるかは、そのスピーカユニットのサイズや重さ、形状で決まります。
    線形駆動時の特性は、第1回のT/Sパラメータで解説いたしました。今回は、大信号時の非線形の性質をどのように定量化し評価していくか、解説していきます。

  • スピーカ計測・評価技術 / 第2回
    スピーカの表面振動と音の伝播

    スピーカユニット表面、つまりダストキャップ、ダイヤフラム、サラウンドが振動することで、音が発生します。故にスピーカユニットの表面がどのように振動しているかが、音の広がりに大きな影響を与えます。その振動形状の測定方法、解析方法について、解説していきます。

PAGE TOP

本ウェブサイトではサイト利用の利便性向上のために「クッキー」と呼ばれる技術を使用しています。サイトの閲覧を続行されるには、クッキーの使用に同意いただきますようお願いいたします。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。