技術資料

IR補正率85%以下が推奨される理由

1. はじめに

BioLogic社電気化学測定システムに付属のソフトウェアEC-Labでは、溶液抵抗の影響を低減するためにIR補正を行うことができます。
溶液抵抗の影響を可能な限り除去したいと考えると、IR補正率は100%に設定するのが望ましいように思えます。しかし、メーカーの推奨値は85%以下とされています。
本稿では、この推奨値の理由について、イメージしやすい簡単な例を用いてご紹介します。

2. IR補正率50%の場合

まず、IR補正を行わない状態で、全体の抵抗が100 Ωのサンプルがあるとします。また、IR補正後に測定対象へ10 mVを印加して測定を行う場合を想定します。
補正率を50%に設定した場合、補正対象となる溶液抵抗は50 Ωとなり、測定対象となる抵抗も50 Ωとなります。
この場合、測定対象の50 Ωに10 mVを印加するためには、サンプル全体には20 mVを印加する必要があります。
測定中に溶液抵抗や測定対象の抵抗値が多少変化したとしても、全体に印加する電圧の変化量は比較的小さいため、電圧制御は安定して行えると考えられます(図1)。

図1

図1. IR補正率50%の場合の電圧印加イメージ

3. IR補正率を高くした場合

次に、補正率を90%、99%、99.9%と徐々に高くした場合を考えます。
補正率が高くなるほど、測定対象として残る抵抗値は小さくなり、同じ10 mVを印加するために必要な全体印加電圧は大きくなります(図2)。
例えば、補正率を99.9%に設定した場合、10 mVを制御するために、サンプル全体には約10 Vの電圧を印加しなければなりません。
この状態で測定対象にわずかな変化が生じると、全体に印加する電圧を大きく変化させる必要があります。そのため、制御は不安定になりやすくなります。

図2

図2. IR補正率90%、99%、99.9%の場合の電圧印加イメージ(上から順に90%、99%、99.9%)

4. 発振が発生する可能性

さらに、測定中に溶液抵抗や測定対象の抵抗値が変化し、測定対象の見かけの抵抗値がゼロ付近あるいは負の値になると、制御系が不安定となり、位相反転による発振が生じる可能性があります。

5. まとめ

このような理由から、IR補正率を100%に設定することはできません。
測定中に溶液抵抗や測定対象の特性が変化した場合でも、安定した制御を維持できる範囲の目安として、IR補正率は85%以下が推奨されています。

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