技術資料
高電圧での誘電率測定システム構成例
1. はじめに
誘電特性は、コンデンサ、半導体、光学デバイス、各種絶縁材料の基礎的な電気特性として広く測定されます。近年はパワー半導体の高耐圧化に伴い、誘電材料の評価条件として高電圧印加を前提とした測定が求められています。
誘電材料評価の基礎項目である比誘電率は、市販のLCRメータやインピーダンスアナライザ(以下、測定器)で簡便に測定できますが、測定器から直接印加できる電圧はDC/ACを合わせて50 V程度が上限のため、実動作電位とは大きく異なる条件での評価となるという課題があります。
この課題に対しては、電圧アンプで測定器の出力を増幅する方法が有効です。当社では広い周波数帯域と高い出力電圧を両立した高電圧アンプA800を取り扱っており、最大±400Vの出力電圧とDC~300kHzの周波数特性を備えています。
一方、400 Vを超える高電圧を印加する場合には、より高耐圧な電圧アンプを使用する必要があります。しかし、一般的な高電圧アンプは出力電圧の増加に伴い周波数特性が制限されるため、高電圧条件下で数kHz以上の評価を行うことが難しい場合があります。
当社ではこの課題を解決するために、インピーダンスアナライザの測定信号と直流電圧アンプおよび交流電圧アンプの出力を安全に合成し、サンプルへ印加できる高電圧インターフェースを開発しています。本インターフェースを用いることで、1kVを超える高電圧を印加しながら、数十kHz ~ 100kHz領域までの誘電率評価が可能となります。
本稿では、誘電率測定に関わる設定パラメータと測定器仕様の関係を概説し、当社が提案できる測定器・電圧アンプ・サンプルホルダを例に、具体的なシステム構成をご紹介します。
以下の数値は代表値です。具体的な装置検討につきましては、条件に応じてご提案可能ですので、お問い合わせください。
2. 測定パラメータと構成品の対応関係
誘電率測定の装置選定で検討する主なパラメータは、以下の4項目です。
- ① 直流電圧(DC Bias)
- ② 交流電圧(AC Test Level)
- ③ 静電容量(サンプルの比誘電率・厚み・電極サイズに依存)
- ④ 周波数範囲
一般的な誘電率測定では、測定器とサンプルホルダのみで測定できます。一方、高電圧下で測定する場合は、電圧アンプや、条件に応じてDC/AC分離用インターフェースが必要になります。各機器は上記パラメータと対応関係にあるため、次章で具体例を示します。
3. ケーススタディ
一般に数百V程度までであれば、LCRメータと電圧アンプを組み合わせた構成で対応可能です。一方、1kV級以上の高電圧印加や高周波測定では、DC/AC分離構成や高感度なインピーダンスアナライザが必要となります。以下に、数百Vレベルでの評価(ケースI)と、1kVレベルでの評価(ケースII)を例として、システム構成例を示します。
▼ケース I
■目的: 厚み100 µm、比誘電率10程度のサンプルについて、DC 200 V、AC 200 V、50 Hz~10 kHz付近の誘電率評価を行いたい。
■構成例:
- ・計測器:E4980A EDMS
- ・電圧アンプ:A800
- ・インターフェース:不使用
- ・サンプルホルダ:SH2-Z
■想定できる測定レンジ(要点):
以下は、上記構成において仕様上見込まれる代表的な測定範囲です。
- ・直流電圧範囲:±400 V
- ・交流電圧範囲:±400 V
- ・周波数範囲:20 Hz ~ 100 kHz
- ・静電容量レンジ:約100 pF ~ 1 nF
■適用例
サンプル厚みが 100 µm、SH2-Zで電極直径 30 mmを用いた場合、空気の静電容量は約 70 pFです。この条件では、比誘電率およそ 1.5 ~ 1500のサンプルを測定できます。測定の構成イメージを図1に示します。
※ 上記は代表的な条件に基づく目安です。ケーブルやジグの寄生容量、シールド状態、補正条件(Open/Short/Load)により実効レンジは変化します。
表1. ケースI構成品の仕様


図1. 直流電圧と交流電圧を合わせて増幅する場合の回路図
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▼ケース II
■目的: 厚み100 µm、比誘電率約1000のサンプルについて、DC 1000 V、AC 100 V、50 Hz~100 kHz付近の誘電率評価を行いたい。
■構成例:
■想定できる測定レンジ(要点):
以下は、上記構成において仕様上見込まれる代表的な測定範囲です。
- ・直流電圧範囲:±1000 V
- ・交流電圧範囲:±100 V
- ・周波数範囲:20 Hz ~ 100 kHz
- ・静電容量レンジ:約1 pF ~ 2 nF程度
■適用例
SH2-Zの電極直径 2.5 mmを用いると、空気の静電容量は約 0.43 pFになります。この条件では、MIA-5Mで比誘電率およそ 2.3 ~ 4500の評価ができます。測定の構成イメージを図2に示します。
※ 上記は代表的な条件に基づく目安です。ケーブルやジグの寄生容量、ガード配線、補正条件(Open/Short/Load)により実効レンジは変動します。
表2. ケースII構成品の仕様

※3kV対応オプションは標準仕様外のため、適用条件については要事前相談

図2. 直流電圧と交流電圧を個別に増幅する場合の回路図
4. 注意点
高電圧下での誘電率測定では、回路構成、測定器・アンプの実効帯域、インターフェースによる影響、安全対策を含めた総合的な設計が重要です。特に誤ショート時の過電圧印加を防止するため、適切な保護回路やインターロック機構の導入が不可欠です。
5. まとめ
本稿では、高電圧下での誘電率測定における装置構成の考え方と、具体的なシステム例をご紹介しました。DC/AC分離印加、周波数特性、耐電圧、安全性を考慮した構成設計により、実動作条件に即した信頼性の高い評価が可能になります。測定条件に応じた最適なシステム構成をご提案できますので、お気軽にご相談ください。
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