技術資料
K熱電対使用時におけるEC-Labでの温度データ取得方法
1. はじめに
電気化学測定では、試料の反応速度や電気特性が温度に大きく左右される場合があるため、温度データは測定結果を正しく解釈するうえで重要な情報です。また、発熱を伴う反応や長時間の測定では、異常発熱の早期発見や装置の安全運用のためにも温度監視が欠かせません。このように、温度データの取得は「測定精度の向上」と「安全管理」の両面で重要な役割を果たします。
当社では以前より、BioLogic社純正のPt-100センサを取り扱っています。Pt-100センサは高い測定精度を備えていますが、抵抗値から温度を算出する方式のため、特に長距離配線が必要な環境では配線抵抗による誤差が生じやすいという課題があります。本来、Pt-100センサは3線式または4線式で配線することで配線抵抗による誤差を低減できますが、BioLogic社製ポテンショスタットはこれらの配線方式に対応していないため、誤差補正が困難です。
このような環境では、K熱電対が有効な選択肢となります。Pt-100センサが抵抗値をもとに温度を算出するのに対し、K熱電対は熱起電力を利用して温度を測定します。この方式では配線抵抗が測定値に直接影響しないため、長距離配線が必要な環境でも安定した温度測定ができます。
そこで本稿では、K熱電対を用いた温度測定システムの構成例と、BioLogic社製ポテンショスタットの制御ソフトウェア「EC-Lab」における温度データ取得方法をご紹介します。
2. Analog In入力端子
BioLogic社製ポテンショスタットには、外部機器と信号をやり取りするためのAuxiliary I/O端子(以下、AUX端子)が標準搭載されています。この端子の機能の一つとして、外部アナログ信号を取り込むためのAnalog In入力端子が搭載されており、外部機器からデータを取り込むことができます。
Analog In入力端子の概要は以下のとおりです。
・Analog In1、Analog In2の計2系統が利用できます。
・Analog In(1番ピンまたは6番ピン)とGround(7番ピン)間に入力された電圧を読み取り、任意の物理量へ変換して記録できます。

図1. AUX端子およびAnalog In端子配置
3. 温度測定のためのシステム構成例
BioLogic社製ポテンショスタットでK熱電対を用いて温度測定を行う際に必要な機材の一例を以下に示します。

図2. 温度測定時のシステム構成例
必要な機材は以下のとおりです。
・AUX端子からAnalog In1(またはAnalog In2)およびGNDを取り出すためのケーブル
・カップル変換機(熱電対の温度信号である熱起電力を0~10Vのアナログ電圧に変換する機器)
・K熱電対
※温度測定箇所が装置から離れている場合など、熱電対の延長が必要な際には補償導線も使用します。
4. EC-Labソフトウェア上の設定
EC-Labソフトウェア上での設定手順を以下に示します(Analog In1を使用する場合)。
設定例
・温度範囲:-50~200℃
・電圧出力:0~10V
設定手順
・「Experiment」メニューから「External Devices」を選択します。
・「Device Type」を「Other」に設定します。
・「Analog IN1」欄の「Convert E/V」にチェックを入れ、プルダウンメニューから「to T/℃」を選択します。その後、電圧と温度の対応関係を設定します(本例では0V=-50℃、10V=200℃)。

図3. EC-Lab上での設定例
5. 製品のご紹介
当社では、BioLogic社製ポテンショスタットと組み合わせて使用できるK熱電対用温度電圧変換モジュールも取り扱っています。

図4. K熱電対用温度電圧変換モジュール
※BioLogic社製ポテンショスタット専用
本製品は、「温度測定のためのシステム構成例」で紹介した以下の機材を一体化した製品です。
・AUX端子接続ケーブル
・カップル変換機
・K熱電対接続部
BioLogic社製ポテンショスタットのCHボードに本製品を接続し、ミニチュアコネクタ部(画像中の黄色の部材)にK熱電対を取り付けることで、すぐに温度測定を開始できます。シンプルな接続で運用できるため、取り扱いや運用が容易です。
本製品の詳細については、営業担当までお問い合わせください。
6. まとめ
本稿では、K熱電対を用いた温度測定システムの構成例と、BioLogic社製ポテンショスタットの制御ソフトウェア「EC-Lab」における温度データ取得方法をご紹介しました。
温度データの取り込みに使用したAUX端子は、トリガー入出力機能や電圧出力機能なども備えており、温度測定以外にもさまざまな装置との連携ができる柔軟なインターフェースです。
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