技術資料
電気化学測定におけるポテンショスタットの必要性~電源との比較~
1. はじめに
電気化学測定は、化学反応や二次電池の充放電挙動を評価するために、測定対象に電圧を印加し、電子の移動を電流として観測する手法です。反応を進行させるには一定以上の電圧エネルギーが必要で、例えばリモコンや時計で使用される1.5 Vのアルカリ乾電池、3.3 Vのリチウムコイン型電池、リチウムイオン二次電池の3.6–3.7 Vセル電圧などが挙げられます。測定の目的は、反応を駆動する電圧を様々な環境条件下で正確に制御し、その結果として得られる電流応答を解析することです。
2. 電気化学測定におけるポテンショスタット
なぜ電気化学測定では単純な電源装置ではなくポテンショスタットを使用するのでしょうか。その理由は、測定対象物の反応に必要な電圧を、正確かつ様々な環境条件下で繰り返し同じように印加する必要があるためです。
ポテンショスタットという名称は、「ポテンシャル(電位)をスタット(一定に保つ)」という意味に由来します。一般的な電源装置(電池なども含む)でも二極間の相対的な電位差を印加することは可能ですが、ポテンショスタットでは参照電極と呼ばれる基準電極を用いた三電極測定により、測定対象物に印加する電圧を常に参照電極基準で正確に制御できます(図1)。

図1. 二電極測定と三電極測定のイメージ図
二電極測定では、二極間の相対的な電位差を確認することはできますが、作用極の実質的な電位を正確に把握することはできません。一方、三電極測定では参照電極に対して作用極に印加する電圧を正確に制御できるため、作用極にかかる電圧を絶対的に評価できます。つまり、作用極には青の ⇔ の大きさ分だけのエネルギーが与えられることになります。
3. 各種電極の紹介
■作用電極
作用電極は、化学反応の挙動を観測するための電極です。①電極自身で起こる反応や、②作用電極が浸漬されている溶液中の測定対象物が、どの電位でどの程度反応(電流が流れるか)するかを観測します。
■参照電極
参照電極は、系の基準電位を与える電極です。ポテンショスタットは参照電極電位を0 V基準として作用電極に印加する電圧を制御します。この電圧を常に一定に保つため、装置内部にはフィードバック回路が組み込まれています。
■対極
対極は、作用電極に流れる電流を受け渡す役割を担います。十分な電流を確実に流すため、作用電極よりも少なくとも2倍以上の面積を持つことが必要です。
なお、ポテンショスタットは参照電極に対する電位を制御する装置であるため、参照電極自体の電位が変動すると、作用電極に印加される電圧も変動してしまいます。したがって、使用している参照電極が基準電極として安定しているかどうかは、ポテンショスタット単体では判断できません。
4. まとめ
電源装置とポテンショスタットの大きな違いは、電源装置が二極間の相対的な電位差を印加するのに対し、ポテンショスタットは参照電極の電位を基準に作用電極の電位を常にモニタリングし、指定した値に維持するフィードバック回路を備えている点にあります。
ただし、ポテンショスタットは参照電極に対する電圧を正確に制御できるものの、参照電極自体が基準電極として安定しているかどうかは判断できません。つまり、測定の信頼性を確保するためには、参照電極の安定性が極めて重要であることがわかります。
- Bio-Logic社電気化学測定システム
- ・ハードウェア
- ・EC-Lab
- ・トラブルシューティング
- ソフトウェア
- ・Zviewおよび東陽テクニカ製ソフトウェア
- 電気化学測定
- ・基礎電気化学
- ・インピーダンス
- ・バッテリー
- ・腐食
- ・その他
- 燃料電池
- ・燃料電池評価






