技術資料
グローブボックス用ケーブル作成時に確認すること
1. はじめに
グローブボックス内で電気化学測定を行う際は、測定機器との接続を確保するために、測定ケーブルをグローブボックス内部に引き込む必要があります。このような環境では、専用の測定ケーブルと真空フランジを組み合わせて使用する構成が一般的です。
専用の測定ケーブルは、グローブボックスに取り付けられた真空フランジを通して外部と内部を接続します。
そのため、専用ケーブルを準備する際には、真空フランジの規格や呼び径を確認することが重要です。
真空フランジの規格や呼び径は、グローブボックス導入時の仕様書や取扱説明書に記載されていることが多いため、ケーブル準備の前に参照されることを推奨します。
2. グローブボックス
グローブボックスは、内部環境を制御し、気密性を確保する装置です。リチウムイオン電池の研究では電極材料が空気中の水分や酸素に非常に敏感に反応するため、グローブボックスを使用して外界から遮断し、測定環境を維持する必要があります。また、内部環境を真空や不活性ガス雰囲気に保つことで、再現性のある測定が可能になります。
グローブボックス内で測定を行うことにより、大気中の酸素や水分による試料の劣化を防ぎ、より正確で安定した測定が可能になります。特に、リチウムイオン電池の電極材料や触媒反応に関する測定では、不活性雰囲気を保つことで、外部環境の影響を受けずに高精度なデータを取得できます。
そのため、電気化学測定装置のケーブルを引き込む際には、気密性を維持したまま電気的に接続する必要があります。この役割を果たすのが真空フランジとフィードスルーです。
図1. グローブボックス内外の接続模式図
3. 真空フランジ
真空フランジは、グローブボックスに標準装備またはオプションとして取り付けられ、多くの場合「ブランクフランジ(開口のないフタ)」が装着されています。測定ケーブルをグローブボックス内に引き込む際には、この真空フランジにフィードスルーを取り付ける必要があるため、もし予備のブランクフランジがない場合、フィードスルーを取り付けるためのブランクフランジを用意する必要があります。そのため、すでにグローブボックスに設置されている真空フランジの規格や呼び径を正しく把握することが重要です。
■主な真空フランジの規格
真空フランジには国際規格に基づいたいくつかの種類があります。
表1. 真空フランジの国際規格
■真空フランジの呼び径について
真空フランジのサイズは「呼び径(ノミナルサイズ)」で表され、一般的にフランジの内径を基準に決められています。ただし、規格ごとに表記方法が異なるため注意が必要です。
●NW/KF 規格(例:NW10, NW25, NW50など)
→ 数字は内径(mm)を示しており、一般的なサイズはNW10~NW50
●JIS-VF / JIS-VG 規格(例:VF40, VG100など)
→ 数字はフランジの内径(mm)で、一般的なサイズはVF40~VF200
●ICF 規格(例:ICF34, ICF70など)
→ 数字はフランジの外径(mm)を示しており、一般的なサイズはICF34~ICF253
※ 呼び径が同じでも、規格が異なると形状や接続方式が変わるため、注意が必要です。
4. フィードスルー
フィードスルーは真空フランジに装着され、気密性を保ちながらグローブボックスの内部と外部を電気的に接続する役割をもった部品です。
グローブボックス内に測定ケーブルを引き込む際には、ブランクフランジに適切な穴を開け、メーカー提供のフィードスルーを取り付けます。そして、グローブボックスの内部と外部からそれぞれケーブルをフィードスルーに接続することでサンプルと電気化学測定装置とを電気的に接続します。
5. まとめ
グローブボックス内で電気化学測定を行うためには、気密性を維持しながら測定ケーブルを引き込むことが最も重要です。そのため、グローブボックスに取り付けられている真空フランジの規格や呼び径を事前に確認し、適切なブランクフランジにフィードスルーを取り付けることが肝要です。これにより、グローブボックス内の気密性を保ちながら、外部との安全で確実な接続を実現できます。
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