技術資料
実信号と記録されたデータの違いについて
1. はじめに
計測器から得られるデータには、製品開発や品質管理において重要な情報が含まれています。
一方で、記録されたデータは本来の信号をそのまま記録したものではなく、測定条件や記録設定の影響を受けることに留意する必要があります。
本稿では、信号の記録および処理について簡単に解説し、測定データを正しく理解し活用するための注意点を紹介します。
2. どのような信号を観測したいか
測定を行う際には、まず「どのような信号を観測したいのか」を明確にする必要があります。
例えば、図1のような信号が得られる系では、どのような方法でデータを記録するのが最適でしょうか。

図1. オーバーシュートおよびランダムノイズを含むステップ応答信号の例
本例では、オーバーシュート成分としてステップ周期の10倍の周波数を有するAC信号を重畳しています。
・過渡応答を詳細に観測したい場合
この場合は、過渡応答部分を十分な点数で記録できるよう、サンプリング間隔を細かく設定する必要があります。
・各ステップの高さを観測したい場合
この場合は、立ち上がり部分のデータを評価対象に含めるか、あるいは除外するかを事前に検討する必要があります。
・ノイズを除去したい場合
この場合は、本来の波形に含まれる重要な成分を損なわないよう配慮しながら、適切な信号処理を実施する必要があります。
3. データ記録におけるポイント
適切な測定結果を得るためには、信号をどのような条件で記録するかが重要です。
3-1. サンプリング間隔をどこまで細かくするか
信号をデジタルデータとして記録する際には、十分なサンプリング点数が必要です。
サンプリング点数が不足すると、図2の赤線で示すように波形の詳細情報が失われることがわかります。

図2. 元データ10000点に対し、サンプリング点数を1/500にした場合の比較
(青線:元波形、赤線:サンプリング1/500波形)
この現象はエイリアシングと呼ばれ、サンプリング定理とあわせて信号処理の分野でよく知られています。サンプリング定理では、観測したい信号を正しく記録するためには、対象信号に含まれる最も高い周波数成分の2倍以上(その半分以下の周期)のサンプリング周波数で記録する必要があるとされています。
そのため、変化の少ない安定領域では比較的少ない点数での記録でも問題ありませんが、変化の速い部分についてはより細かいサンプリングが必要です。
3-2. 平均値設定について
平均値で記録する機能は、ノイズ低減に有効な手法の一つです。
図3では、元データに対して100点の移動平均を適用した結果を赤線で示しています。平均化処理により、周期的なノイズ成分が抑制され、より滑らかな波形として記録できていることがわかります。
一方で、瞬間的に変化する信号では、本来の波形が滑らかになってしまう場合があり、その部分には平均化処理を適用しない方が適切なこともあります。

図3. 元データ10000点に対し、100点移動平均を適用した場合の比
較
(青線:元波形、赤線:100点で移動平均した波形)
3-3. フィルタ機能について
測定器によっては、ノイズ除去を目的としたフィルタ機能が搭載されています。
例えばローパスフィルタは、高周波成分を除去して信号を滑らかにする効果があります。その一方で、ステップ応答の立ち上がり部分に含まれる高周波成分も減衰してしまいます。
その結果、図4の赤線で示すように、本来の波形と比較して立ち上がり時間が長くなる場合があります。

図4. 元データにカットオフ周波数5 Hzのローパスフィルタを適用した場合の比較
(青線:元波形、赤線:ローパスフィルタを適用した波形)
なお、ここで示したものはデータ処理の一例です。実際には、サンプリング条件や平均化処理、フィルタ処理などを適切に組み合わせることで、観測目的に応じたデータ取得ができます。
4. まとめ
測定器が記録するデータは、あくまでも処理された結果であることを理解しておく必要があります。
信号の本質を正しく捉えるためには、サンプリング条件や各種データ処理の特徴を理解し、観測対象となる物理現象を意識した上で各種のデータ処理を行うことが重要です。
- Bio-Logic社電気化学測定システム
- ・ハードウェア
- ・EC-Lab
- ・トラブルシューティング
- ソフトウェア
- ・Zviewおよび東陽テクニカ製ソフトウェア
- 電気化学測定
- ・基礎電気化学
- ・インピーダンス
- ・バッテリー
- ・腐食
- ・その他
- 燃料電池
- ・燃料電池評価




