技術資料
クーロン効率測定の重要性
I. はじめに
リチウムイオン電池の性能と寿命を評価するうえで、クーロン効率(Coulombic Efficiency、以下CE)は重要な指標の一つです。CEは、充電時に蓄えた電荷に対して、放電時に取り出せた電荷の割合を示します。本稿ではクーロン効率の概念とその重要性および必要な測定技術をご紹介します。
II. クーロン効率とは
クーロン効率は次の式(1)で定義されます。
理論上、CEは1が理想ですが、充電、放電時に生じる非可逆な反応(副反応)によって、実際のCEは1より小さくなります(図1)。副反応は1サイクル目から発生し、この反応量を測定することで電池の性能評価や寿命予測ができます。
CEが高いほど、電池のエネルギー損失が少なく、長寿命であることを示します。
図1. クーロン効率 - サイクルグラフの例
リチウムイオン電池のCE(クーロン効率)は、一般的に1を下回ります。これは、サイクル試験中に発生するリチウムの失活や電解液の酸化といった副反応により、電池容量が徐々に失われることが原因とされています。
さらに、試験期間が長くなるにつれて、電解液の劣化など時間に依存する反応も進行するため、CEは単に充放電サイクル数だけでなく、経過時間の影響も受けます。特に低レートでの充放電では、1サイクルに要する時間が長くなるため、時間経過に起因する劣化反応の影響をより慎重に評価する必要があります。
副反応の影響を数値化する際、クーロン非効率(Coulombic Inefficiency、CIE)は「1-CE」で定義されます。CIEの値が小さいほど、副反応が少なく、性能の良いセルであることを示します。
同一仕様のセルであっても、充放電レートが異なると、低レートで測定した場合の方がCIEは大きくなる傾向があります(図2)。しかし、これを単位時間あたりの値に換算することで、レートや測定時間に依存せず、クーロン効率を評価することが可能です。この手法により、サイクル試験中にのみ発生する副反応の影響を定量的に捉えることができます。
図2. 低レート試験時のクーロン非効率
III. クーロン効率を測定する方法
一般的な充放電装置を用いた場合でもCEおよびCIEを計算することは可能です。しかし、電池作成後の初期状態で起きる、ごくわずかな副反応を評価するためには通常の充放電装置では不十分です。クーロン効率の微小な変化を測定するには、非常に高い精度の充放電測定システムが必要です。
弊社取り扱いの充放電システムでは、以下の製品で測定が可能です(表1)。
表1. 仕様比較表
IV. まとめ
クーロン効率は電池の性能と寿命を評価する重要な指標であり、一般的な充放電装置よりも高精度な充放電システムを使用することで、クーロン効率のわずかな差を測定することが可能です。また、副反応の評価や電池寿命の予測のためには、サイクル試験の初期段階でクーロン効率、クーロン非効率の変化を評価することが重要です。
参考
1)NOVONIX社書 「Coulomic Efficiency with NOVONIX™UHPC」
- Bio-Logic社電気化学測定システム
- ・ハードウェア
- ・EC-Lab
- ・トラブルシューティング
- ソフトウェア
- ・Zviewおよび東陽テクニカ製ソフトウェア
- 電気化学測定
- ・基礎電気化学
- ・インピーダンス
- ・バッテリー
- ・腐食
- ・その他
- 燃料電池
- ・燃料電池評価