UHPCシリーズ 精密充放電評価システム
UHPCシリーズは、精密充放電試験(Ultra High Precision Coulometry)の略称で、カナダDalhousie大学のProf. Jeff Dahnが考案したリチウムイオン電池の寿命評価のための測定技術です。当システムでは、10ppm以下の安定度、50ppm以下の計測確度で精密充放電試験を行い、リチウムイオン電池の初期段階でわずかなクーロン量の差異による電池の副反応・寿命予測を評価することができます。
株式会社東陽テクニカ 理化学計測部
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特長
高精度クーロメトリー(HPC:high precision coulometry)は2010 年にカナダ・ダルハルジー大学のJeff Dahn 教授により初めて提案された評価手法で、電池のクーロン効率(CE)を正確に測定し、そこから副反応の定量評価や劣化要因の解析を行います。この手法を用いることで、充放電測定の初期段階でクーロン効率のわずかな差異を見分けることができ、電池の性能評価・寿命予測を短時間で行うことができます。
NOVONIX社精密充放電評価システム(左図) と他社充放電装置(右図) とのクーロン効率の性能差
高精度のクーロン効率測定
NOVONIX社の創業メンバーはProf. DahnのHPC測定システムの開発プロジェクトに携わっているため装置概要、評価方法法の利点、データ解析を深く理解しており、HPC測定システムの製品化に成功しました。NOVONIX社のUHPCシリーズ 精密充放電評価システムでは、セルおよび計測器部を一定温度に保つシステムを構築し、温度変化による電圧ドリフトを最小限に抑えることで典型値10ppm以下の高安定度、50ppm以下の高確度での充放電測定を行うことができ、クーロン効率を高精度に算出することができます。
一般的な充放電装置では様々な誤差要因により高精度クーロメトリーは測定は難しくその主な誤差要因は下記となります。
- 電流制御精度
- 電圧測定精度
- セル温度 ※原則としてCレートはC/10以下で発熱を抑える
- 計測器部の温度ムラによる測定誤差
※ 超高精度クーロメトリーの開発により測定が可能に!
高精度の温度制御
UHPCシリーズ 精密充放電評価システムではNOVONIX社が自社開発した恒温槽を標準搭載しており、±0.5℃の制御確度、典型値±0.075℃の安定度を誇ります。恒温槽内は温度ムラが発生しない工夫が施されており、1台の恒温槽につき最大16チャンネルの電池を収めることが可能です。
仕様
UHPC-2A | UHPC-10A | UHPC-20A | |
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チャンネル数 | 8 | 8 | 4 |
電流出力 | |||
電流レンジ | 200µ~2A(5レンジ) | 100µA~10A(6レンジ) | 2A~20A(2レンジ) |
電流分解能 | レンジの0.002%以下 | ||
制御確度 | レンジの0.01% | ||
ノイズ | レンジの0.002% | ||
温度係数 | レンジの0.002%(23±5℃の環境下) | ||
電圧出力 | |||
電圧レンジ | 250mV,5V | 0~5V | |
電圧分解能 | 1µV | 100µV以下 | 50µV以下 |
制御確度 | 100µV(<250mV) 200µV(>250mV) |
200µV | |
電流測定 | |||
測定分解能 | レンジの20ppm以下 | ||
測定確度 | レンジの0.005% | ||
測定確度 | レンジの 0.002%(23±5℃の環境下) | ||
電圧測定 | |||
測定分解能 | <50nV (<250mV) <1µV (>250mV)) |
1µV | |
測定確度 | 100µV(<250mV) 200µV(>250mV) |
200µV | |
温度測定 | |||
分解能 | 0.01℃ | ||
その他 | |||
サンプリングレート | 6Hz |
※仕様は予告なく変更する場合がございます
ペルチェ冷却式恒温槽 | |
---|---|
温度範囲 | 室温-10℃ ~ 60℃ |
制御確度 | ±0.5℃ |
安定度 | ±0.15℃(typically < ±0.075℃) |
セルホルダ
4端子ラミネート用セルホルダ |
ラミネートセル用 (クリップタイプ) |
4端子筒型用セルホルダ (18650, 28650用) |
4端子コインセルホルダ |
ハードウェア構成
ご研究の用途に合わせて、充放電モジュール/恒温槽/セルホルダを自由にカスタマイズできます。
- ① 充放電モジュール:
- 2Aモデル(8ch構成)
10Aモデル(8ch構成)
20Aモデル(4ch構成) - ② 恒温槽:
- ペルチェ式恒温槽(温度範囲:室温-10℃~60℃)
外部恒温槽
※安全監視ユニットと組合せ、安全機構に対応、より低温の試験も可能 - ③ セルホルダ:
- ラミネート、円筒型、コインセル用から選択
技術資料
1. 精密充放電評価システムとは?
1-1. 開発背景
理想の電池では「充電による反応」=「放電による反応」、つまりクーロン効率が100%となります。しかし、実際には放電に寄与しない「副反応(劣化反応)」が起きてしまい、クーロン効率は100%になりません。この「副反応」は1サイクル目から発生しており、この反応量を測定することで電池の性能評価、寿命予測ができると考えられています。しかし、反応量が微少のためクーロン効率に与える影響が小さく、従来の充放電器では「副反応」を正確に測定することができませんでした。そのため、より高精度に測定可能な精密充放電評価システムが開発されました。
1-2. 一般的な充放電器との違い
一般的な充放電器では、様々な誤差要因により精密にクーロン効率を測定することができません。主な誤差要因としては電流制御・電圧測定精度、セルの温度ムラ(充放電によるサンプルの発熱も含む)、計測器部の温度ムラによる測定誤差が挙げられ、クーロン効率を精密に測定するためには100ppm以下(ノイズレベルは10ppm以下)の確度が必要となります。
UHPCシリーズ 精密充放電評価システムでは、セルおよび計測器部を一定温度に保つシステムを構築し、温度変化による電圧ドリフトを最小限に抑えています。また、Jeff Dahn教授が開発したプロトタイプのシステムではセル用と計測器用に恒温槽を2台用意する必要があり、コストが大きい、広いスペースが必要、配線が煩雑というデメリットもありました。
NOVONIX社が開発したUHPCシリーズの基本的な設計概念、測定確度はJeff Dahn教授が開発したシステムと同様ですが、複数セルの同時測定に対応したハードウェア設計がなされています。電圧計、電流計、シャント抵抗を一定温度で保つシステムを1パッケージにまとめ、セル用の恒温槽にはサンプルホルダを設置するだけの簡単なものになっており、プロトタイプのデメリットを全て解決しています。
2. 精密充放電評価システムを用いた評価方法
2-1. 超高精度クーロメトリーで計測できるパラメータ
- 容量 (QC/D)
- クーロン効率 (CE = QD/QC = 1 - ΔD/QC)
- Discharge slippage (ΔD)
- Charge slippage (ΔC)
- Capacity loss (Fade = ΔD – ΔC)
充電による反応 (充電容量)
放電による反応 + 副反応(分解反応 等……)
2-2. サイクル - Ch. End Cap.曲線への適用
1サイクル目の充電容量を100%として2サイクル目以降の充電容量Chの変化を評価します。 これにより、副反応( slippage)の量を定量的に評価する事ができ、充電時の「副反応」の影響をとらえることができます。 ※ΔDn – ΔCn が正であることが前提条件
炭酸ビニレン(VC)の有無で”Charge slippage”が大幅に減少
→ 電池性能の向上が確認できます。
サイクル - Ch. End Cap.曲線を用いることにより、性能の違いがより明確化
【低寿命】添加剤無 < 1wt% VC < 2wt% VC 【長寿命】
3. 精密充放電評価システムを用いた解析
精密充放電評価システム、高精度クーロン効率測定法については、より詳細な技術資料がございます。
ご希望の方は、弊社(biologic@toyo.co.jp)まで、お問い合わせください。