技術資料

BioLogic社装置におけるセル接続モードの使い分け ― Grounded / Floating および Standard / CE to Ground / WE to Ground ―

1. はじめに

測定対象となるアプリケーションによって、最適なセル接続モードは異なります。 そのため、BioLogic 社製ポテンショ/ガルバノスタットでは、以下の 3 種類のセル接続モードを提供しています。

  • ● Standard
  • ● CE to Ground
  • ● WE to Ground

どの接続モードが適しているかは、アプリケーションの特性や測定環境に応じて判断する必要があります。
本稿では、これらのセル接続モードの基礎となる Grounded/Floating の概要を整理したうえで、 CE to Ground および WE to Ground モードが必要となる代表的なアプリケーションについて説明します。 以下にセル接続モード選定のフローチャートを示します。

図1. セル接続モード

図1. セル接続モード

2. Grounded と Floating の概要(アドバンスドモデル対応)

2.1 Grounded と Floating の違い

BioLogic 社製ポテンショ/ガルバノスタット本体は、3ピン電源プラグを介してアースに接続されています。Groundedの場合はチャンネルボードのアナロググラウンドをアース端子に接続し、アース電位を基準として測定を行います(図2左)。

一方、Floating モードでは、アナロググラウンドとアース端子の接続が開放され、電気的にアースから浮いた状態で動作します(図2右)。

図2. Grounded(赤)と Floating(青)の概略図

図2. Grounded(赤)と Floating(青)の概略図

Grounded/Floating の切り替えは、装置内部のリレー回路によって行われます。
Grounded モードでは、数 kΩの保護抵抗を介してアースへ接続され、グラウンド電流が制限されます(図3左)。
Floating モードでは、アナロググラウンドとアース間は無限大の絶縁ではなく、Typical 値として 10 MΩ 抵抗と 10 nF キャパシタが並列接続された構成となっています(図3右)。これにより、安全性と安定性を維持しながらグラウンドから浮いた状態が実現されます。

図3. Grounded/Floating の切り替え回路

図3. Grounded/Floating の切り替え回路


2.2 Grounded/Floating の選択指針

GroundedとFloating の選択方法については表1を参考に適切な設定を選択する必要があります。

表1. Grounded/Floating の選択指針

セル接続の選択表

一般的には多くのアプリケーションでは Grounded が適用されますが、例えばオートクレーブやパイプライン内にセルがある場合や、セル自体が金属製でアースに接続されている場合、接地された外部機器と接続する場合などで Floating を適用することが推奨されます。


■サンプルが接地している場合

接地されているサンプルの測定時に、Grounded を選択してしまうと、測定回路内に新たな閉回路が形成されるグラウンドループとなり、予期せぬ電流が流れることによって、測定に悪影響を及ぼす可能性があります(図4)。

そのため、接地されているサンプルを測定する場合には、Floatingを選択し、セルケーブルの黒色の端子が接地電位にならないよう、接地電位から浮かせた状態を維持する必要があります。

図4. 接地されたサンプルにおいて Grounded モードを使用すると発生するグラウンドループ

図4. 接地されたサンプルにおいて Grounded モードを使用すると発生するグラウンドループ

■サンプルが接地されていない場合

一方で、接地されていないサンプルを測定する場合に Floating の設定を行うと、測定回路内に接地電位が存在しない状態となり、測定回路の基準点となる電位が不定(回路全体が浮いている状態)になります。

このような状態では、外部からのノイズに影響されやすくなり、測定結果の安定性や再現性が低下する可能性があります。したがって、接地されていないサンプルを測定する場合には、Grounded を選択して測定を行うことが推奨されます。

図5. AUX端子使用時に Grounded モードを使用すると発生するグラウンドループ

図5. AUX端子使用時に Grounded モードを使用すると発生するグラウンドループ

また、AUX 端子を連動先の機器に繋いでいる場合で、連動先からの入力信号が接地されている場合には、サンプルが接地されていなくとも Floating が推奨されます。

これは、接地されたサンプルを測定する場合と同様に、AUX端子を介して2つの接地端子が繋がり、閉回路を形成してしまうことに起因します。

こうしたケースでは、IS1 アイソレーションモジュールを使用することで、AUX 端子経由でのグラウンド接続を遮断し、チャンネルをFloating状態に保つことができます。

AUX端子を使用している際に、チャンネルボードが正しくFloatingになっているかを確認するには、チャンネルボードとアースグラウンド間の導通検査を行うことが有効です。導通がある場合は、意図せず接地されている可能性があるため、接続構成の見直しが必要です。

3. CE to Ground モード

サンプル内に複数の作用極が存在し、共通の対極および参照極を使用する構成では、CE to Ground モードが適しています。この接続モードは、同一セル内での多電極測定を想定して設計されており、複数の作用電極を同一条件下で同時に測定・比較することが可能です。これにより、例えば複数の材料や触媒のスクリーニングを効率的に行うことができます。


例:回転リングディスク電極(RRDE)

RRDE では、ディスク電極とリング電極がそれぞれ作用極として機能し、共通の参照極および対極を使用します。このような構成では、2チャンネルを同期させたバイポテンショスタットとCE to Ground モードの組み合わせが適しています。

3.1 “Standard” と “CE to Ground” 設定の違い

セル構成を簡略化し、共通の対極および参照極を持つ2電極セルを図6に示します。通常の測定では、Standard設定が使用されます。この設定は、最大の測定性能を提供し、単一セルを用いた多くの測定に用いられます。 接続モードの選択により、これらの要素の配置や極性が異なります。
ただし、両設定に共通して以下の構成が維持されます:

・電流計は作用極側に配置される。
・電圧計は作用極と参照極間に接続される。


一方、CE to Groundモードでは、セルの接続が反転され、対極がグラウンドに接続される点がStandard設定との主な違いです。この構成は、複数の作用極を持つ多電極測定や、対極が接地されている特殊なアプリケーションに適しています。

図6. Standard/CE to Ground 設定の違い

図6. Standard/CE to Ground 設定の違い

3.2 Floatingモードの代替としてのCE to Groundの活用

オートクレーブや配管内での電気化学実験では、容器や配管内自体を対極として使用するため、対極がアースグラウンドに接続されるケースが一般的です。このような場合には、CE to Groundモードの使用が推奨されます。CE to Groundモードでは、チャンネルボードのグラウンドが対極と接続され、アースと共通の電位を持つ構成となります。これにより、装置全体の電位基準が安定し、測定の信頼性が向上します。

注:上記のようなアプリケーションでは、Floatingモードも有効な選択肢です。特に、外部ノイズの影響を避けたい場合や、他の接地経路との干渉を防ぎたい場合には、Floatingモードの使用が適しています。

3.3 RRDEの例

回転リングディスク電極(RRDE)のように複数の作用極を持つセルにおいて、CE to Ground設定が有効である理由を示します(図7)。このような構成でStandard設定を選択し、かつチャンネルが接地されている場合、各チャンネルの制御回路(S1, S2など)がグラウンドを介して短絡してしまう可能性があります。この短絡により、チャンネル間で意図しない電流が流れ、過負荷状態が発生し、測定が正常に行えなくなる可能性があります。 この問題を回避するためには、CE to Ground設定を使用し、共通の対極をグラウンドに接続することで、各チャンネルの制御回路をグラウンドから絶縁し、独立した動作を確保する必要があります。

この構成により、複数の作用極を用いた測定でも、チャンネル間の干渉を防ぎ、安定した測定が可能になります。

図7. 複数作用極セルにおける Standard/CE to Ground 設定の比較

図7. 複数作用極セルにおける Standard/CE to Ground 設定の比較

4. WE to Ground モード(アドバンスドモデル対応)

4.1 WE to GroundとCE to Groundの違い

WE to Groundでは共通の作用極を使用しつつ、各セルに独立したREとCEを持たせる構成が適しています(図8)。例えば、透過セルを用いたアプリケーションでは、2つの異なる電気化学界面を同時に独立して研究する必要があります。このため、2つの独立した参照極が必須となり、CE to Groundモードのような共通グラウンド構成では対応できません。
このようなケースでは、共通の作用極を使用しつつ、各セルに独立したREとCEを持たせる構成が適しています。これにより、膜を挟んだ両側の電気化学反応を個別に制御・観察することが可能となり、拡散挙動の詳細な解析が実現できます。

図8. WE to Ground 設定

図8. WE to Ground 設定

4.2 透過セルアプリケーション

透過セル(Permeation Cell)は、材料中の原子や分子の透過性を測定するための装置です。この研究では、対象となる材料を膜(メンブレン)として用い、その両側で物質の濃度変化を観察します。一方の側(入力側)では、ある種の物質の濃度が生成され、材料内部での物質の拡散により、もう一方の側(検出側)では、濃度変化が観察されます。


このとき、検出側で濃度変化が現れるまでのタイムラグは、膜中の物質の拡散係数を評価するための指標となります。この測定には、2つのポテンショスタット/ガルバノスタットのチャンネルボードが必要です。各セルには、参照極と対極が1つずつ含まれます。作用極は2つのセルで共通のものが使用されます。

図9. 透過セルの模式図

図9. 透過セルの模式図

4.3 QCMアプリケーション

作用極が何らかの理由でアースグラウンドに接続されている場合、WE to Ground設定の使用が推奨されます。例えば、一部の電気化学式水晶振動子マイクロバランス(EQCM)装置はWE 電極が接地端子に接続されています。たとえポテンショスタットとEQCMの両方が形式上は非接地(Floating)であっても、シグナルグラウンドとアースグラウンドとの間の絶縁抵抗は有限であるため、アナロググラウンドと接地端子間にリーク電流が流れることがあります。そのような場合には、WE to Ground 設定が推奨されます。

5. まとめ

BioLogic社製ポテンショ/ガルバノスタットでは、アナロググラウンドをアースに接続する Grounded と、アースから浮かせた状態にする Floating の設定に加え、通常の接続(Standard)のほかに CE to Ground モードおよび WE to Ground モードを選択することができます。
サンプルの接地状態や外部機器との接続構成、測定系を考慮してこれらを適切に使い分けることで、再現性の高い測定を実現することができます。

6. 参考文献

[1] Connection to the cell – Part 1 – What is “ground”? - BioLogic Learning Center

[2]『EC-Labによるアプリケーション別測定および解析例』
上記文書[2]は本ページの製品サポートからダウンロードいただけます。ご覧いただくには、ご登録が必要です。
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