技術資料

リチウムイオン電池の保管寿命試験による評価方法

1. 概要

リチウムイオン電池は、モバイルバッテリーや車載用途など、幅広く使用されています。リサイクルも進んでおり、電池の寿命評価への関心が高まっています。
電池の寿命評価の方法としては、以下の2つがあります。

・充放電測定を繰り返し行うサイクル試験(サイクル寿命)
・特定の電圧にて放置し開回路電圧を測定する試験(保管寿命)


今回は、保管寿命の測定手法をご紹介します。この試験は、リチウムイオン二次電池を所定のSOC(充電状態)と温度条件で保管し、保存期間中の電池特性の変化(劣化)を評価する手法です。
製品の保管中や輸送中、販売前などの非使用期間での劣化傾向を把握するために実施されます。
電池の性能・寿命特性評価は、JIS C 8715-1(産業用リチウム二次電池の単電池及び電池システム — 第1部:性能要求事項)1)で規定されています。


■自己放電について
リチウムイオン電池における自己放電(self-discharge)は、使用していない状態でもわずかに電荷が失われる現象で、電池の保存性や安全性、長期信頼性に直結する重要な性能指標です。

2. 保管寿命評価の測定手法

電池の性能・寿命特性評価は JIS C 8715-1(産業用リチウム二次電池の単電池及び電池システム―第1部:性能要求事項)で規定されており、ここではその中に示される保管寿命試験(Storage test)の方法について表1に示します。

表1. 試験手順の構成

表1. 試験手順の構成


製品ごとの仕様により異なりますが、合格基準の一例は下記の通りです。

表2. 合格基準の例

表2. 合格基準の例

※1 容量保持率(%)=(保管後容量 / 初期容量)× 100
※2インピーダンスの増加やDC抵抗の変化を確認


表1や表2の「容量維持率」や「電圧変化」が自己放電を判断する目安です。寿命試験評価には数か月を要します。

3. 自己放電測定を短縮するためのソリューション

自己放電を評価する手法には、表1に示した開回路状態で所定電圧からの電圧低下を時間経過とともに測定する方法のほか、一定電圧に保持したときの時間変化による寄与電流を評価する方法があります。この方法では一定の電圧を印加し続け、その時の電流値をµAオーダーで正確に測定できることが求められます。

4. 精密充放電測定装置(UHPC)の利点

ここでは、電流と電圧を正確に測定できることが特徴の、UHPC(Ultra High Precision Coulometry)装置を用いた測定事例を示します。その特性を生かし、負極活物質のグラファイト材料の寿命を評価するための新しい方法を紹介します2)。 グラファイト材料には、天然黒鉛(Natural graphite A)、人造黒鉛(Synthetic Graphite A, B, C, D, E)の合計6種種を使用しました。 これらの材料を負極活物質として使用し、2032サイズのコインセル(ハーフセル)を作製しました。このセルを45℃に設定した恒温槽に入れ、5mVの定電圧を48時間印加し、その時の寄生電流を評価しました。
図1はその結果を示しています。図中の-0.1 mA/gはおおよそ-1.5 μAに相当します。 30時間ほどで電流が一定になりますが、他の充放電装置ではノイズに埋もれてしまい、天然黒鉛以外の人造黒鉛A-Eの5種類の差を見分けることが困難です。しかし、UHPC装置ではノイズが小さいため、A-Eの順序を見分けることができます。


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図1. 炭素負極ハーフセルの48時間定電圧保持(5mV)時の電流時間変化

図1. 炭素負極ハーフセルの48時間定電圧保持(5mV)時の電流時間変化

UHPCは、自己放電測定の一つの手法である定電圧測定において、微小な電流を測定することができ、電池の性能評価・寿命予測を正確に行うことができます。


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5. 参考

1) JIS C 8715 1「産業用リチウム二次電池の単電池及び電池システム — 第1部:性能要求事項」
2) novonix-application-note-screening-graphite-materials-for-lifetime.pdf

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