技術資料

クーロン効率ブログシリーズ:第3部/全5回 - 容量劣化について - NOVONIX

本書はNOVONIX社が発行する” Coulombic Efficiency Blog Series: Part 1 of 5 – Introducing Coulombic Efficiency”を2025年12月時点で翻訳したものです。今後、原文が改訂され、内容が変更された場合には、改訂後の原文の内容を優先いたします。

1. はじめに

第1部では、クーロン効率(CE)がバッテリーの将来的な性能を予測するうえで重要な指標であることを紹介しました。また、第2部では、1時間あたりのクーロン非効率(CIE/hr)は、クーロン効率(CE)を時間で正規化した指標であり、異なるレートや電圧範囲でサイクルされたセル間の比較を可能にすることを解説しました。CIE/hrはCEを時間で正規化することで得られるため、両者を支配する根本的なメカニズムは同じです。そのため、CEを構成する要素をより深く掘り下げることは価値があります。そこで、セルのCEを構成する2つの要素のうち、ひとつめの要素である容量劣化の要因について解説します。

2. クーロン非効率毎時(Coulombic Inefficiency per hour, CIE/hr)とは

バッテリーはサイクルを重ね、経年劣化するにつれて、利用可能なリチウム量は不可逆的に減少します。リチウムは様々な原因で減少しますが、その原因は時間、サイクル数、温度、動作電圧、化学的性質など、様々な要因によって影響を受けます。利用可能なリチウム量が時間とともに減少する現象は、容量劣化と呼ばれます。

たとえば、メープルシロップをガラス瓶に保存したときの結晶化現象を思い浮かべてください。保存開始時は結晶化していませんでしたが、毎日使用すれば、瓶が空になる頃には、少量の結晶が見られるようになります。これらの結晶のせいで、シロップをすべて出し切ることができません。瓶に再びシロップを詰めてみると、保存開始時と同じ量しか入れられず、次に瓶が空になる頃には、さらに多くの結晶が形成され、シロップの保存可能容量が減少していきます。つまり、瓶を空にして詰め替える回数が増えるほど、また瓶を冷蔵庫に入れておく時間が長くなるほど、結晶が増え、シロップを保存できるスペースが少なくなります。 メープルシロップを充填できる瓶の容積減少は、リチウムイオン電池の容量の不可逆的な損失に似ています。

3. リチウムイオン電池の容量劣化の理由

リチウムイオンセルの容量劣化には、さまざまな原因があります。主な原因は、電解質成分が負極表面で反応し、固体電解質界面の形成につながることです。たとえば、リチウムイオン、溶媒分子、電子が負極表面で反応すると、溶媒還元反応が起こります。この反応は不可逆的であり、充放電サイクル中に電極に挿入・放出できるリチウムの量を減少させ、セル容量を低下させます。この問題は、負極表面の保護層を強化することで反応速度を低下させる電解質添加剤によって部分的に解決できます。

様々な電気化学的メカニズムに加え、粒子の亀裂や集電体との電気的接触の喪失により、一部の電極材料が不活性になり、利用可能なリチウムがさらに減少する可能性もあります。電極材料の不可逆的な相転移によってリチウムが使用不能になり、セル容量がさらに低下することもあります。

充放電に利用可能なリチウムの損失を総じて、リチウム在庫損失と呼びます。セルの放電容量が時間の経過とともに減少する度合いは、電解質との反応や活電極材料の損失によって不可逆的に失われたリチウムの量を示しており、これを容量劣化と呼びます。容量劣化への各メカニズムの寄与は、UHPCシリーズ 精密充放電評価システム(UHPC:Ultra High Precision Coulometry、以下UHPC)の非常に高精度な測定による「dV/dQ分析」から明確に特定できます。

図1. UHPC測定の実例
左図:放電容量とサイクル数の関係、中央:各サイクルでの容量劣化、右図サイクル数に応じた累積容量れか

図1は、ほぼ同一のセルにおいて、わずか25サイクルで容量劣化の差が認められたUHPC測定の実例を示しています。電解質添加剤の異なる2組のセルについて測定が行われました。電解質1(黒)には添加剤が含まれておらず、電解質2(赤)には添加剤が1%含まれています。左図は放電容量とサイクル数の関係、中央は各サイクルでの容量劣化、右端はサイクル数に応じた累積容量劣化を示しています。 わずか25サイクルで、添加剤1%(電解質2、赤)を使用したセルは、電解質1を使用したセルよりも約0.001 Ahの損失が少なくなっています。これらのセルの正極と負極は同一であることから、電解質2ではリチウムを消費する不可逆反応が少なくなる(リチウム在庫損失が少なくなる)と考えられます。なお、これらのセルはすべて同一の条件でサイクルされています。サイクル寿命の初期段階で異なるセル化学組成間のリチウム在庫損失の違いを検出することは、電解質と電極の組み合わせがリチウム在庫損失にどのように影響するかを迅速にスクリーニングする上で非常に有効です。

本稿で紹介したNOVONIX UHPCシステムの詳細については、こちらの製品ページをご参照ください。

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