技術資料

BCSシリーズ:LIB解析(Part 2)        Variable機能を用いた拡散係数自動算出

1. 拡散係数とは

リチウムイオン電池の性能は、電極材料中におけるリチウムイオンの挿入・脱離速度に大きく左右されます。特に高出力特性や長寿命化を議論する際には、リチウムイオンが固体電極内をどれだけ速く拡散できるかを定量的に評価することが不可欠です。この指標となるのが「拡散係数(Diffusion Coefficient)」です。拡散係数を評価することで、電極材料の本質的な輸送特性が明らかになり、材料開発やセル設計の方向性を見極める際の基盤データとして利用できます。研究開発現場では、新規材料の性能比較や劣化メカニズムの解明に欠かせないパラメータです。

2. 従来の拡散係数の算出

拡散係数の代表的な測定手法の一つが GITT(Galvanostatic Intermittent Titration Technique, 定電流間欠滴定法) です。GITTでは、電極に定電流を一定時間印加し、その後定電流印加と同じだけ休止時間(電位の変動が小さくなるのに十分な時間)を設けます。この操作を繰り返すことで、電位変化の二種類の情報が得られます。

  • ΔEt:定電流印加前後の電位変化
  • ΔEs:サイクル毎の休止終了時の電位の変化

これらの値と、実験条件から得られるパラメータを用いて、リチウム拡散係数DLiは次式で計算されます。

リチウム拡散係数の導出式

ここで、τはパルス時間、nmは移動したリチウムの物質量、VMは電極材料のモル体積、Sは電極の反応面積を表します。(データから得られるものはΔEt、ΔEsのみ)
実際にGITTデータから拡散係数を算出するには、一つ一つ対応する点を抽出(図1)し、計算式に代入する(図2)必要がありますが、この作業を実施するにはかなりの手間がかかります。

図1. GITT測定イメージ

図2. 拡散係数算出イメージ

3. Variable機能を用いた拡散係数の自動算出

上記の作業を効率化する手段として、Bio-Logic社製充放電装置BCSシリーズに搭載された「Variable機能」が有効です。この機能では、ユーザーが任意の変数を設定し、それらを用いて測定条件の制御などを行うことができます。また、GITT測定シーケンスの作成時には、ΔEtやΔEsの自動算出(該当データの自動抽出)や拡散係数の計算を同時に実行することが可能です。これにより、サイクルごとの拡散係数をGITT測定データと併せて表示でき、解析時間を大幅に短縮することができます。

図3. BCSでのGITT測定シーケンス例

図4. GITT測定データと拡散係数 (青線:GITT測定データ、オレンジ点:拡散係数)

この機能はさまざまな用途に応用でき、たとえば初期サイクルにおけるDCIRが1.5倍に達した時点で測定を停止する、といったリミット設定にも適用可能です。本稿では、Variable機能の一例を紹介しましたが、用途に応じて多様な設定・応用が可能です。

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