KLA Corporation

NanoFlip 顕微鏡組み込み型ナノインデンター

NanoFlipは各種光学顕微鏡やAFMなどの既存のイメージング装置に搭載して、イメージング&機械特性評価を実現する新しいタイプのナノインデンターです。

Geminiオプションにより2軸測定が可能となり、ナノスケールでのトライボロジー特性評価を実現しました。

特長

  • 独自のフリップステージを採用
    ステージポジション変更でイメージングとインデントを切り替え
  • 高精度InForce50アクチュエータを装備
  • 既存のSEM, FIB, AFM, 光学顕微鏡,等へ組み込み可能
  • ISO14577 Part 1準拠
  • 連続剛性測定法(CSM)による硬度/ヤング率の深さ方向へのプロファイル測定
  • ポリマーの局所動的粘弾性、高速マッピングNanoBlitz3D/4Dなどに対応
  • Geminiオプションにより、トライボロジー評価が可能

テクノロジー

NanoFlipは、押し込み試験の第一人者Dr.Warren Oliverにより新たに設計された最新のナノインデンターで、小型で高精度なInForce50押し込みヘッドと、90°フリップ動作するサンプルステージを組み合わせ、サンプルの表面イメージングとその場のナノインデンテーションを実現します。手のひらサイズの小型ボディーのため、電子顕微鏡(SEM)やFIB、各種光学顕微鏡、AFM(原子間力顕微鏡)、ラマン、XRDなど既存のイメージング装置に容易に組み込み、各種光学情報と機械特性の同時評価ができます。

ダイナミックモード

測定モードには、ISO14577準拠する準静的モードとダイナミック(CSR)モードの2種類があります。準静的モードでは、最大侵入深さにおける特性を算出し、一つのスチフネスS(剛性)データを出力します。CSRモードでは、侵入深さの連続関数として、荷重及び変位データと共にスチフネスデータSが得られます。CSRモードにより、試料表面から最大深さに対して、「硬度」と「ヤング率」がプロファイルとして得られます。この手法により得られるプロファイルデータから、薄膜、コーティング、その他の表面処理材料の評価に関して常に考察が必要とされる基板の影響を視覚的に捉えられ、薄膜のみの硬度とヤング率を正しく判断できます。
またポリマーなどの動的粘弾性特性では、ダイナミック周波数を変更して、各周波数に対する貯蔵モジュラス・損失モジュラス・損失係数tanδを求められるナノ粘弾性評価装置として利用できます。

100kHzの高速データ収集

NanoFlipに搭載されるInQuestコントローラは、準静的モードとダイナミックモードを1台のコンパクトなコントローラで実現しています。100kHzという高速データ収集スピードにより、高分解能・高密度なデータ収集と高速なフィードバック制御を実現でき、ナノスケールの極微小な材料の機械特性も高感度に検出できます。

押し込みヘッド

機械的インデンテーション試験の全ての測定は、基本の「荷重(フォース)」と「変位」データより算出されています。 ナノインデンター・システムには、独自の電磁コイルベースの荷重制御機構が使用され、サンプルに対する非常に高精度な「荷重」の印加を実現しています。
コイルに流れる電流によって圧子軸は電磁力で下側に駆動され、同時に容量センサによって「変位」を高精度に計測します。容量センサとは完全に独立した2枚のリーフスプリングの採用によって、圧子の押し込み軸は安定に上下し、横方向の移動は全くありません。独自のセンサ/荷重制御機構の設計により、高精度で再現性の非常に高い、材料の機械的特性データが得られます。

仕様

ヘッド InForce50
荷重印加方式 電磁コイル
変位検出 キャパシタンスゲージ
最大押し込み深さ 25μm
最大押しこみ荷重 50mN
荷重分解能 3nN
変位分解能 0.02nm
測定位置確認 取り付けた装置による(SEM, FIB, 各種光学顕微鏡, AFM他)
測定モード
 (一部オプション)
準静的モード(ISO14577準拠)、連続剛性測定法(CSM/CSR)、
粘弾性、硬度・ヤング率の2次元/3次元マッピング

システム構成

  • 電磁コイルベースの荷重制御機構
  • プリマウント型「バーコビッチ」ダイヤモンド圧子
  • 高速・高分解能InQuestコントローラ
  • InView制御・解析ソフトウェア
  • ディスプレイ一体型PC

様々な測定機への搭載

光学顕微鏡(ラマン顕微鏡、レーザー顕微鏡等)やXRDなどの様々な顕微鏡・分析装置と組み合わせてナノインデンテーション試験が可能です。

グローブボックスへの搭載

ガラス基板上に成膜したリチウム箔(5um厚)の測定例

AFM(原子間力顕微鏡)への搭載

事例紹介

4µm程度のガラス球のヤング率を算出

圧縮試験前

圧縮試験後

ひずみ率とヤング率の測定データ

各球の測定データ


約4µm球(N=12)のヤング率を測定した結果73.6GPaとなり、期待していたソーダガラスの文献値72-74GPaと一致しました。

Geminiオプション

Geminiシステムは2軸での試験を実現し、ナノスケールでのトライボロジー特性評価を実現できる装置として期待されています。これは商業ベースでは世界で初めてとなります。これまで薄膜材料では測定困難とされてきたスティックスリップ現象や潤滑性といった様々な摩擦・磨耗特性およびポアソン比の測定が可能になります。

Geminiヘッドの外観

Geminiは押し込みヘッドを直行させる形で取り付けられており、それぞれが微小振動を加えることが可能です。その微小振動から接触剛性(スティフネス)を計算しすることができます。これらの比をとればポアソン比が算出できます。下図は熱溶融石英のポアソン比算出事例で、求まった0.196という値は文献値0.188に非常に近い値です。押し込み深さは600nm程度で、今後薄膜の評価が期待できる深さです。

熱溶融石英のポアソン比算出例

位相の変化を検出することにより、スティックスリップ摩擦の検出も可能です。下図は水晶に対して実験を行ったものです。滑り出しがどのようにして起き始めるか、今までは検出不可能であった事象の解析が可能になります。

水晶上でのスティックスリップスライディング

メーカーアプリケーションノート(英文)