AD変換の基礎 / 第5回 デルタシグマAD変換器

 連続的なアナログ信号から離散的なデジタルデータへの変換を請け負うADコンバーター(Analogue-to-Digital Converter)は、データ収集の中で非常に重要な役割を果たしています。ADコンバーターの発展は長い歴史を持ち、現在に至るまでに様々なタイプが存在します。リアルタイムデータ収集に最も良く使われているタイプは、いわゆるシグマデルタ型ADコンバーターです。

今回、シグマデルタ型ADコンバーターの動作原理をご紹介するに当たっては、内容を二つのパートに分けています。今回のPAK InfoLetterでは、シグマデルタ型ADコンバーターのごく基本的な部分と一般的なコンセプトについてご紹介します。次回のPAK InfoLetterでは、このタイプのコンバーターがノイズから受ける影響について取り上げる予定です。
 

シグマデルタ型ADコンバーターの動作原理

従来のADコンバーターのように入力信号の絶対振幅を記録するのではなく、(シグマ)デルタ型ADコンバーターは信号振幅の変化を記録し、それを1bit量として保存します。さらに特徴を挙げると、この変換方式では、少なくともナイキスト周波数の2倍以上でアナログ信号をオーバーサンプリングする事を前提としています。(オーバーサンプリングに関するより詳しい情報に関しては、次回InfoLetterを参照してください)。次回のInfoLetterでは、オーバーサンプリングに関する詳細と、このサンプリング手法が持つ、信号のノイズ成分について優れた点についてご紹介する予定です。

以下では、段階を追ってコンバーターの動作を見ていく事で、シグマデルタ型ADコンバーターのコンセプトについて考えていきます。Figure 1とTable 1のサイクルナンバー2を参照しながらお読みください。

(A)アナログ入力信号
シグマデルタ型ADコンバーターでは、信号を大幅にオーバーサンプルします。そのために、コンバーターの動作周波数は非常に高く、便宜上、入力はDC信号を想定してシンプルに考える事ができます。今回は、リファレンス電圧Vrefの3/4倍(3/4Vref)が入力され続けた場合について考察します。

(B)フィードバックとの差異
変換器はフィードバック・ループを基本にして動作します。フィードバック・ループの性質上、サイクル数が増加するに連れて、図中のBでの値は 0に収束しようとします。図中のEに相当するこのフィードバックの詳細は、本稿の後半で解説します。今のところは、1 Vrefのネガティブフィードバック(その結果、Bでの値は3/4 Vref – 1 Vref = -1/4Vrefになります)として考えます。

(C)積分器
積分器は、積分器の過去の出力を新しい入力値に加える役割を果たします。従って、Bでの値に依存して、積分器からの出力は増加、もしくは減少します。今回の例では、積分器からの出力は、-1/4 Vref + 3/4 Vref = 2/4 Vrefとなります。

(D)比較器
このコンポーネントは入力された値を0Vのリファレンスと比較します。比較器からの出力はデジタル信号です。比較器への入力値がリファレンス値になる(もしくはリファレンスを横切る)時、出力値は1から0、もしくは反対に0から1に反転します。今回の例では、入力値2/4 Vrefがリファレンス値よりも大きいため、出力値は1です。

(E) フィードバック
比較器からの出力は1bit-DAコンバーターに入ります。このコンポーネントでは、単に、入力値が1の時は1 Vrefを、入力値が0の時は-1 Vrefを出力します。ネガティブフィードバックによって、DAコンバーターから出力される電圧の平均は入力値に近づきます。このサイクルに関して言えば、比較器からのデジタル信号1は、DA変換器を通して、入力Aに対するフィードバック1 Vrefになります。

比較器から出力されるデジタル信号は、基本的に、シグマデルタ型ADコンバーターの出力そのものです。そのため、コンバーターはパルス幅変調器であると言うこともできます。内部のDA変換器からの出力の平均値(図中Eの平均値)が入力値に近づく事と同様に、比較器から出るデジタル信号の0に対する1の割合は入力電圧に対応する測定量になります。今回の例では、この割合は7/8となります。この数字の意味は次のように考えることができます。

-1 Vref ~1 Vrefの範囲を1/4 Vref ステップ幅で分割すると、8 + 1 =9つのステップ(入力値として処理可能な値)を作る事ができます。最も小さな値(-1 Vref)を0/8、最も大きな値(1 Vref)を8/8に対応させると、7/8は3/4 Vrefに相当し、まさに入力したDC信号を表しています。

より直感的にいえば、シグマデルタ型AD変換器では、基本的に、現在の値を過去の値と比較し、現在の値が昔の値よりも高ければΔV、低ければ-ΔVを加えていると言えます。加える±ΔVの数を記録する事で、この変換器は入力信号を再現することができます。

雑記

  • シグマデルタ型AD変換器からの1bitの信号は、ユーザーの要求に合わせて、10bit,16bit,24bitなど、あらゆるbit深度の値に変更することができます。
  • シグマデルタ型AD変換器の精度は、サンプリング周波数やビット数だけではなく、DA変換器内のリファレンス電圧の精度にも大きく影響を受けます。想像できるように、この値にわずかでも誤差があると、まったく間違った値が出力されてしまいます。シグマデルタ方式では、Vrefは信号に毎サイクル加えられているため、その精度は生命線なのです。
サイクル# アナログ(A) 差異(B) 積分(C) 0との比較(D) フィードバック(E)
0 3/4 0 0 0 0
1 3/4 3/4 3/4 1 1
2 3/4 -1/4 2/4 1 1
3 3/4 -1/4 1/4 1 1
4 3/4 -1/4 0 0 -1
5 3/4 7/4 7/4 1 1
6 3/4 -1/4 6/4 1 1
7 3/4 -1/4 5/4 1 1
8 3/4 -1/4 4/4 1 1
9 3/4 -1/4 3/4 1 1
10 3/4 -1/4 2/4 1 1
11 3/4 -1/4 1/4 1 1
12 3/4 -1/4 0 0 -1
13 3/4 7/4 7/4 1 1
14 3/4 -1/4 6/4 1 1
15 3/4 -1/4 5/4 1 1
16 3/4 -1/4 4/4 1 1
17 3/4 -1/4 3/4 1 1
18 3/4 -1/4 2/4 1 1

Table 1.シグマデルタ型AC変換器でのサイクル数例
A~C項目の数値はリファレンス電圧 Vrefの比率

製品詳細はこちら≫