AD変換の基礎 / 第3回 量子化

  エンジニアが取り扱う信号のほとんどは連続的です。例えばFigure1の青線で示すような信号であり、経時変化する電圧、温度、加速度信号などがその代表例です。コンピューター上でこのような信号を取り扱うためには、一度、AD変換(Analog-to-Digital Conversion)を行う必要があります。AD変換で生成されたデジタル情報は、元となるアナログ信号とまったく同じでは無く、Figure1に示す黒線のようになります。

まさに、Figure1の黒線はデジタル化された(量子化された)信号を表しています。図に示すように、デジタル信号は、飛び飛びの決まった振幅値しか取ることができません。そのため、連続信号をデジタル信号に変換する際には、AD変換の分解能に依存した誤差が発生します。このような誤差の最大値は、最小有効ビット(LSB : Least Significant Bit)と関連があります。LSBとは、二つの隣り合う量子ステップ(ビット)間の差異を電圧単位で測定した量と定義されます。既にお気づきかもしれませんが、ある電圧レンジに対してより多くのビット数が使われれば、量子ステップはより小さくなり、その分誤差も小さくなります。LSBは、“フルスケール振幅”/2^nビットで計算することができます。

特筆すべき特徴として、量子化誤差はランダムノイズと非常によく似た形で現れます。この特徴は、誤差が0になる確率が、0.01LSBや0.02LSB、もしくはその他の誤差の発生確率とまったく同じであると考えれば、最もわかり易いでしょう。このノイズは±0.5LSBの間に一様な分布を持ち(Figure2)、その平均値は0、標準偏差は1/√12 LSBになります。量子化誤差による影響は、信号への付加的なノイズとして現れます。

かつてのAD変換器は、十分なbit数を持っておらず、標準的には16bit(もしくはそれ以下)の量子化ステップでした。十分な精度を確保するためには、(比較的小さな振幅の信号をカバーする)ダイナミックレンジが複数必要になり、各レンジには、入力信号をAD変換器の動作レンジに増幅するための増幅器が必要でした。

現在では、ほとんどのアナライザーが信号を24bitの分解能で量子化できます。以前よりも格段に高くなったこのビット深度によって、事実上、量子化誤差を排除することができ、ダイナミックレンジは以前ほど重要ではなくなりました。±10Vレンジを使用して、非常に小さい信号でも精度良く測定する事ができるようになった訳です。

24bitのADコンバーターを使用すれば、実際問題として量子化誤差を最小化することができます。そのため、量子化誤差に関して、通常のアプリケーションではそれ以上気をつけるべき点はありません。しかしながら、24bitのAD変換器を持つ全てのアナライザーがノイズレベルをLSB以下にできるというわけではありません。内部の配線やAD変換器自身から発生するアナログノイズは量子化誤差よりも大きな値を取ります。実際に、これらのアナログ要素が24bitアナライザーのノイズ要因としては支配的であり、全ての24bitのADコンバーターが、必ずしもノイズフロアをLSB程度に抑えることができるわけではありません。

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