技術資料

電流レンジの選択について

1. はじめに

ポテンショ/ガルバノスタットでは、電流測定時に電流レンジを選択できます。本稿では、適切な電流レンジの選び方や、BioLogic社製ポテンショ/ガルバノスタットにおける電流レンジに関する便利な機能についてご紹介します。

2. 電流レンジの選択

使用可能な電流レンジは計測器によって大きく異なるため、ポテンショ/ガルバノスタットを選定する際には、電流レンジの仕様を確認することが重要です。一例として、BioLogic社製ポテンショ/ガルバノスタット SP-300 の電流測定仕様を表1に示します。

表1. BioLogic社製 ポテンショ/ガルバノスタット SP-300 の電流測定仕様

表1. BioLogic社製 ポテンショ/ガルバノスタット SP-300 の電流測定仕様

SP-300では、1A~10nAの9種類の電流レンジ、およびAutoレンジを選択することができます。例えば、1Aレンジで1Aの電流の測定を行う場合、分解能は33µA、確度は真値(1A)に対して±1.3mAの範囲内で測定できるという仕様となります。一方、最小レンジである10nAレンジでは確度が10pA ± 読値の0.03%となるため、例えば、測定電流が1nAの場合は約1%、100pAの場合は約10%の範囲で測定できます。さらに小さな電流を測定する場合には、微小電流測定オプションを搭載したポテンショ/ガルバノスタットの使用が推奨されます。

測定に使用する電流レンジは、測定開始時にソフトウェア上で設定します。測定電流がµAオーダーやnAオーダーであるにもかかわらず、1Aレンジのような大きなレンジを選択すると、分解能や確度が不足し、適切な測定ができなくなります。一方で、測定電流より小さいレンジを選択した場合は、エラーにより測定が停止します。そのため、測定電流より十分大きく、かつ必要以上に大きくない電流レンジを選択することが重要です。

3. Autoレンジの活用

測定電流を事前に予測できない場合や、測定中に電流値が大きく変化する場合には、Autoレンジが有効です。Autoレンジでは、測定電流に応じて適切な電流レンジへ自動的に切り替えが行われます。本章では、Autoレンジに関するBioLogic製品特有の機能を紹介します。

3.1 Auto Limitedレンジ

Autoレンジは、測定電流に応じて電流レンジを自動的に切り替える便利な機能です。一方で、レンジ切り替え時には計測器内部のシャント抵抗が切り替わるため、わずかなノイズが発生する場合があります。

このようなレンジ切り替えに伴う影響を低減したい場合に有効なのが、BioLogic社製品に搭載されているAuto Limitedレンジ機能です。本機能では、初期の電流レンジや使用可能な電流レンジの範囲を設定することで、不要なレンジ切り替えを抑制できます。


① 初期電流レンジの指定

通常のAutoレンジでは、測定開始時の電流レンジを任意に選択することはできません。一方、Auto Limitedレンジでは初期電流レンジを指定することが可能です。

例えば、固定電流レンジでの電流制御測定後に電圧制御測定へ移行する場合、直前の測定と同じ電流レンジから開始できます。そのため、測定テクニック移行時の電流レンジ切り替えを回避でき、レンジ変更に伴うノイズの影響を最小限に抑えることができます。


② 最大・最小電流レンジの制限

測定電流の変化が大きい場合や、電流値がレンジ切り替え境界付近で変動する場合には、Autoレンジによって頻繁に電流レンジが切り替わることがあります。このような場合、レンジ切り替えに起因するノイズが測定データに影響を与える可能性があります。

Auto Limitedレンジでは、測定中に使用する最大・最小電流レンジを制限できます。例えば、最小電流レンジを設定した場合、設定したレンジより小さいレンジへは切り替わらなくなります。その結果、不要なレンジ切り替えを抑制でき、より安定したデータ取得につながります。
図1にEC-Lab制御ソフトウェア上のAuto Limitedレンジ設定画面を示します。

図1. EC-Lab制御ソフトウェア上のAuto Limitedレンジの設定画面

図1. EC-Lab制御ソフトウェア上のAuto Limitedレンジの設定画面

3.2 電流制御・電圧測定における電流Autoレンジ

従来のポテンショ/ガルバノスタットでは、Autoレンジを利用できるのは主に「電圧制御 - 電流測定」の場合に限られていました。 一方、BioLogic社製ポテンショ/ガルバノスタットのアドバンスドモデル(SP-300、VSP-300など)では、EC-Lab v.11.50以降、「電流制御 - 電圧測定」のテクニックにおいてもAutoレンジを利用できます。
これにより、電流掃引や電流ステップのように制御電流が大きく変化する測定でも、適切な電流レンジを維持した測定が可能となります。
また、電池のCC-CV充電では定電流(CC)でセル電圧が上限値に達すると定電圧(CV)制御へ移行し、充電の進行に伴って過電圧が小さく なり充電電流は徐々に低下します。アドバンスドモデルでは、この低電流域でも適切な電流レンジを自動選択できるため、充電終盤まで精度よく評価できます。

4. まとめ

電気化学測定において、電流レンジの選択は高確度・高分解能な測定を実現するために重要です。BioLogic社製ポテンショ/ガルバノスタットは幅広い電流レンジを備えているだけでなく、Auto Limitedレンジや電流制御時のAutoレンジなど、柔軟な機能を搭載しています。これらの機能を活用することで、多様な測定条件において最適な測定が可能となります。

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