技術資料
温調制御付き誘電率測定システム
I. 誘電率測定とは
誘電率(dielectric constant)は、物質が電場に対してどの程度応答するか、すなわち電場をどれだけ通しやすいかを示す指標であり、材料の電気的特性を理解する上で重要なパラメータです。誘電率は一般に温度に依存して変化するため、測定においては試料の温度を所定の値に安定して制御する必要があります。
本資料では、温度制御機能を備えた誘電率測定システムについてご紹介します。
※誘電率の基本的な概要および算出方法については、以下のURLを参照してください。
■誘電率測定 概説 | 東陽テクニカ | “はかる”技術で未来を創る | 脱炭素/エネルギー
II. システム概要
誘電体をインピーダンス測定することで、誘電緩和特性、バルクおよび粒界の状態、相転移などに関する有用な情報を取得することが可能です。
当社では、用途に応じてインピーダンスアナライザと温度制御システムを組み合わせ、温度依存性の評価を自動で行うインピーダンス測定システムを提案しています。ノイズ低減に関する技術的知見を活かし、温度制御と高精度な測定を両立させた最適なシステム構成を実現しています。本文書では、本測定システムの構成および特徴についてご紹介します。
本システムは、PCにインストールされた制御ソフトウェア「EDMS」、温度調整機能付きホルダ、およびインピーダンスアナライザによって構成されます。(図1)
制御ソフトウェアEDMSにより測定シーケンスを設定することで、試料の温度制御と誘電率測定を自動的に繰り返すことが可能です。
図1. 温調制御付き誘電率測定システムの概要図
III. サンプルの設置方法
サンプルは、温調機能付きホルダ「TOPシリーズ」に設置します。ここでは、低温対応ホルダである「TOP-400G(温度範囲:-120℃~400℃)」を使用する場合の設置方法についてご紹介します。
まず、サンプルの準備を行います。サンプルが誘電体である場合、測定に先立ち、電極として導電性材料を蒸着する必要があります。
また、正確な誘電率測定を行うためには、ガード電極の形成も重要です。ガード電極は、サンプル表面を回り込む漏れ電流の影響を排除し、測定精度を向上させる役割を果たします。ガード電極は、図2のように中心電極との間に約0.5 mmの間隙を設けて設置してください。
ガード電極について詳しくは、以下を参照してください。
■高抵抗サンプルにおけるガード電極の必要性 | 電気化学測定ラボ | 東陽テクニカ | “はかる”技術で未来を創る | 物性/ エネルギー
図2. サンプルのイメージ図
※銀ペースト等を用いて電極形成する場合、空気が入らないよう注意が必要。
サンプルは表面側が見えるようにホルダへ設置します。TOP-400Gのステージ素材は銀であり、ホルダ筐体の外側コネクタを電極として利用できます(Drive側)(図3)。また、ホルダには針先径35 μmまたは250 μmのプローブが4本取り付けられており、今回はそのうち2本を使用します(Return側およびガード電極用)(図4)。
図3. サンプルの設置イメージ図
図4. ホルダ(TOP-400G)のコネクタ部
IV. 測定
制御ソフトEDMSにて測定を行います。シーケンス”Set Temperature”にて温度制御を設定し、シーケンス”Meas / Sweep Freq.Measurement”にてインピーダンス測定を行います(図5)。また、これらを組み合わせることで測定の自動化(温度制御→誘電率測定→温度制御→・・・)も可能です。
図5. 制御ソフトEDMSのシーケンス設定画面
取得したデータはEDMSもしくはZViewにて確認できます。比誘電率や誘電正接(Tanδ)も表示可能です。ZViewであれば測定したデータの重ね書きも可能であり、測定データの比較が用意に行えます。さらに、当社開発ソフトウェアを用いることで等価回路フィッティングの自動化も実現可能です。
V. まとめ
本文書では、温度制御機能付き誘電率測定システムの概要、設置方法、および測定方法についてご紹介しました。当社では幅広いラインナップを取り揃えており、温度範囲や測定周波数範囲など、多様なニーズに対応した提案が可能です。詳細については、下記のお問い合わせ先までご連絡ください。
参考文献
・インピーダンスアナライザ | 東陽テクニカ | “はかる”技術で未来を創る | 脱炭素/エネルギー
・サンプルホルダ比較表 | 東陽テクニカ | “はかる”技術で未来を創る | 脱炭素/エネルギー
- Bio-Logic社電気化学測定システム
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