ゴム硬さとナノインデンテーション

硬さとは

 硬さ(または硬度)とは材料(サンプル)の特に表面または表面近傍の機械的性質の一つです。材料が異物によって変形や傷を与えられようとする時の、物体の変形しにくさ、物体の傷つきにくさの指標を表す数値です。工業的に比較的簡単に検査できるため、品質を評価するために広く用いられます。
 しかし、硬さは評価法により直接比較が難しく、手法を超えて直接比較することができません。硬さを評価する手法としてビッカース硬さが広く用いられています。四角錐の圧子を材料の表面に押し込み、できた圧痕のサイズを顕微鏡で測定します。圧痕のサイズの大小で硬さを評価するのですが、ゴムのように弾性回復の非常に大きな材料においては不向きです。極端な話、傷の残りやすいアルミニウムよりも天然ゴムの方が硬いということになり、感覚的に違うと思われる方が多い結果となります。
 ゴムの硬さの評価は様々ありますが、押し込みの手法としてはショア硬さ(デュロメータ)が挙げられます。デュロメータのタイプAでは先端が平らな圧子を材料の表面に押し当て凹み量を計測します。基本的に傷はつきません。人肌はA10程度、消しゴムはA30~A50程度、タイヤはA65程度、ゴルフボールはA95というような指標になります[1]。
 

表1) デュロメータのタイプと圧子形状

 

ナノインデンテーションにおける硬さ測定結果

図1) フラットパンチ圧子

 ナノインデンテーション(ISO14577など)によって求められる硬さもビッカース硬さ同様塑性変形に寄与する指標ですので、ゴム硬さと比較することには向いていません。そこで、デュロメータと圧子の形状が似ているフラットパンチで比較することにしました。フラットパンチ圧子を用いてゴムに押し込み試験を行う場合、基本的に圧痕は作られません。

   ナノインデンテーションでフラットパンチ圧子を用いる場合、手法としては動的粘弾性測定を多く利用します。このモードでは圧子を材料へ押し込んだ状態で振動させ、位相や振幅の変化から弾性率を求めます。材料は市販の5mm厚の様々なゴムを測定対象としました。
 下図はシリコーンゴム[2]の測定結果です。ゴム硬さと貯蔵弾性率の高低が対数的にではありますが対応していることがわかります。
 

図2) シリコーンゴムの貯蔵弾性率(周波数範囲:1~200Hz)


 さらにシリコーンゴム以外の材料も比較しました。結果は下図の通りで、やはりおおよそゴム硬さに応じた結果となりました。
 

図3) 様々なゴムの貯蔵弾性率(周波数範囲:1~200Hz)

 

図4) ゴム硬さと貯蔵弾性率(@15Hz)の比較

 

まとめ


 今回のようにゴムの硬さをナノインデンテーションで評価する場合、貯蔵弾性率を求められればおおよそショア硬さ(ゴム硬さ)と同様の評価が可能であることが解りました。他のナノインデンテーションの手法でも相関が取れる可能性は十分にありますが、動的粘弾性測定モードがゴムの測定において最も簡便であり、おおよその指標としては役に立つのではないかと考えられます。
 
 

参考


[1] モノタロウ「ゴムの種類と特長」https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/gum_type/
[2] モノタロウ「コードレインボー」https://www.monotaro.com/g/00429997/