DLC膜の強度評価

ナノインデンター(またはナノインデンテーション装置)はμmレベルの薄膜の硬さ・ヤング率を高精度に測定できる装置です。押し込みによる硬度・ヤング率が求められ、さらにスクラッチ試験により薄膜の水平方向に対する強度、すなわち密着性や耐摩耗性などを求めることが可能です。スクラッチ試験では鉛筆硬度やスチールウール試験などで測定していたサンプルに対し、より定量的な評価を実現します。

<サンプル>
SUJ2基板上 DLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜 2種類

  • CVD成膜 1μm厚
  • 水素フリー成膜 1μm厚

押し込み試験例

i)  ISO14577に準拠した試験
ii) 連続剛性測定法(CSM法)を用いた試験

i)  ISOに準拠した試験結果

  ヤング率
[ GPa ]
硬度
[ GPa ]
弾性変形仕事率
[%]
クリープ
[%]
平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差
CVD 204.9 2.99 21.06 0.41 66.33 0.78 2.04 0.28
水素フリー 505.6 13.44 68.61 2.93 86.52 0.79 0.99 0.20

ii) 連続剛性測定法を用いた試験

深さ方向に対して連続して得られた硬度・ヤング率のプロファイルから下地の影響を認識可能です。

スクラッチ試験例


ランプアップ試験:距離に比例して荷重を増加させる

試験条件:

  • 最大試験荷重 : 70mN
  • スクラッチ長 : 300μm
  • スクラッチ速度 : 30μm/sec
  • 試験回数 : 4回

結果:

スクラッチ試験後のCCD画像は以下の通りです。


CVD成膜の試料

水素フリー成膜の試料

*対物レンズ:×10倍、視野範囲は500μm×750μm

一般的なスクラッチテスターでは試験後の光学像からスクラッチの痕跡を確認しています。ナノインデンターのナノスクラッチ試験では、光学像に加え、スクラッチ前後の形状とスクラッチ中の変形も記録されます。


CVD成膜の試料

300μm以降の位置で大きな破壊が発生しています。この領域でのスクラッチ痕の深さは約1μmです。300μmを越える位置でDLC膜が剥がれたのだと考えられます。なお、大きな破壊が確認された位置の試験荷重は約60mN です。


水素フリー成膜の試料

スクラッチ試験により試料は変形しますが、この変形は試験後にほぼ回復しています。その為、試験後のCCD画像では明瞭なスクラッチ痕は確認できません。

ナノインデンターによるナノスクラッチでは、スクラッチによる形状変化だけでなく水平力や摩擦係数も得られます。様々なパラメータを組み合わせて解析することにより、より総合的なスクラッチ特性が得られます。

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    iMicro 薄膜機械的特性評価装置は、最大1N(約100gf)の荷重を発生できる、マイクロインデンターとナノインデンターの間の領域をカバーする、新しいレンジのナノインデンターです。InForce1000とInForce50の両ヘッドを付け替え可能で、薄膜の機械特性評価に欠かせない、ダイナミックモードやスクラッチ試験、高速3D/4Dマッピング機能まで幅広い機能を装備可能です。

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    Nano Indenter G200は、バルク材料やミクロンオーダー厚の薄膜は勿論、従来困難であったサブミクロン厚の薄膜まで硬度・ヤング率評価を高精度で測定可能です。計装化押し込み試験の規格、ISO14577-1,2,3 に完全準拠した、まさに標準機と評価される製品です。高速インデンテーションを用いた硬さ・ヤング率の2次元定量イメージングにも対応します。

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