技術資料
電気化学測定装置の仕様の読みとき方
目次
1. はじめに
装置カタログやWebサイトに記載されている仕様には、測定機器特有の専門用語が含まれている場合があり、内容の理解には一定の予備知識を要することがあります。 本稿では、電気化学測定装置の導入を検討されている方に向けて、BioLogic社製電気化学測定システム(アドバンストモデル)の主要仕様の一部を取り上げ、その内容について解説します。装置仕様を読み解く際の参考資料としてご活用ください。
2. BioLogic社電気化学測定システム・アドバンスドモデルの仕様
以下に、Bio-Logic社製電気化学測定システム(アドバンストモデル)の仕様のうち、本稿で解説する一部のパラメータを抜粋して示します(表1)。
表1. アドバンスドモデルの仕様(一部抜粋)
2.1 出力電圧/制御電圧/出力電流
出力電圧は、装置が作用極-対極間に出力できる最大電圧値を意味します。同様に、出力電流は、作用極-対極間に出力できる最大電流値を指します。
一方、制御電圧は、作用極-参照極間で制御できる最大電圧値を意味します。ご参考までに出力電圧/電流と制御電圧についてのイメージを図1に示します。
図1. 出力電圧/制御電圧/出力電流の関係イメージ図
2.2. 電流測定分解能
電流測定分解能とは、測定器が識別可能な電流の限界値を示します。この電流測定分解能がより小さい測定器を使用することにより、より微小な電流まで検出できるようになります。アドバンストモデルの電流測定分解能は電流レンジの0.0033%です。例えば、1µAの電流レンジを選択した場合、33pAの分解能、100nAの電流レンジを使用した場合には3.3pAの分解能となります。
2.3. 電流測定確度
電流測定確度とは、測定された電流値がどれだけ真値に近いかを示す尺度です。アドバンストモデルの電流測定確度は、電流レンジの0.1%、読み値の±0.03%となっております。例えば、出力電流が1Aで電流レンジ1Aを設定していた場合、レンジの0.1%、読値の±0.03%から、1Aに対して±1.3mA以内の誤差で測定可能であることを意味します。
2.4. 入力インピーダンス
ポテンショ/ガルバノスタットにおいては、オペアンプの入力端子に、見かけ上並列で接続されるインピーダンスのことを入力インピーダンスといいます(図2)。入力インピーダンスが大きい方が電圧測定端子へのリーク電流が小さいので、電圧をより正確に測定できます。測定する試料が電池やコンデンサの様に電荷を持っている場合には、このインピーダンスにより、電圧が下がっていく現象が見られます。アドバンスドモデルでは、1 [TΩ]以上となっております。
試料の静電容量(C [F])と見かけ上の並列抵抗(R [Ω])が成す時定数(τ [s] =CR)で放電されていくので、試料の電圧は以下の式で表すことができます。
V(t) [V] = V(0) [V] *exp(-t [s] / τ [s])
図2. 入力インピーダンスのイメージ図
2.5. バイアス電流
バイアス電流とは、一定の電流を押し出す、あるいは引き込むオペアンプの入力端子の性質のことです(図3)。試料の両端に同じ回路構成の電圧測定端子が繋がっているので、両方のバイアス電流の差の分だけ、試料に電流が流れることとなるため、誤差の原因になります。
アドバンスドモデルでこの値は10[pA]以下であり、例えば、測定するサンプルが100[MΩ]、バイアス電流が10[pA]の場合には、オームの法則で計算すると1mVの誤差が生じる可能性があります。
図3. ポテンショ/ガルバノスタット中の電流測定部内のオペアンプ略図
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