薄膜硬度計

自動車部品で多用されるダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜やコネクタの電極表面の金属メッキ膜、樹脂表面の保護用ハードコート膜など、製品の機械的特性を向上させる薄膜の使用が増えています。薄膜硬度計では、従来の押しこみ試験では測定が困難であったミクロンレベルの薄膜に対し、高精度かつ自動で硬さ・ヤング率等の機械的特性が取得可能です。

<伝統的な押しこみ硬さ試験>

ビッカースやヌープなどの硬さ試験は押しこみ試験後に圧痕の大きさを観察することにより硬さを求めます。

<5~10倍則>

押しこみ試験では、押込み深さの5~10倍深いエリアの影響を受けると言われています。そのため、薄膜の硬度を測定するには膜厚の1/5~1/10の押込み深さで評価する必要があります。なお、5~10倍則はあくまでも経験則です。近年の研究では少なくとも10倍以上は下地の影響を受けると言われています。伝統的な圧痕観察を行う硬度測定において、薄膜や極表層の硬度を測定する場合、圧痕が小さくなり正確な計測ができません。

軟らかい基板上の硬質薄膜を押込み試験した場合の有限要素解析


<薄膜硬度計は計算のみで硬度・ヤング率を取得>

薄膜の硬度測定は、膜厚の5 ~ 10 分の1の押込み深さで測定し、基板の変形を抑えなければなりません。1μmの薄膜では、100~200nmの押込み深さでの測定となります。このようなスケールでの押込み試験では、装置に要求される精度はもちろんのこと、作業者の個人差による測定誤差を防ぐための自動測定機能が必要です。
100~200nmの押込み試験では、圧痕の大きさを観察して計測することは困難です。薄膜硬度計は押込み試験時の荷重と深さを測定し、そのカーブを解析して硬度とヤング率を計算します。ロックウェルと同様に圧痕観察が不要で、簡便かつ自動測定に対応し、誰でも利用できます。

薄膜硬度計で収集する荷重-変位曲線


薄膜硬度計は最大荷重印加時の押込み深さや、曲線を解析することで求められる硬度・ヤング率、塑性変形と弾性変形との仕事率 等多彩な情報を得られます。