低温での少量のスチレンブタジエンゴムの動的機械特性

はじめに

 スチレンブタジエンゴム(SBR)は、天然ゴムの代わりに設計された合成ゴムポリマーです。 SBRは用途の広いゴムであり、乳化重合と溶液重合の両方のSBRが、タイヤ、バインダー、バッテリー、スピーカー、および建設用途で使用されています。SBRは、その弾性特性と耐摩耗性のために広く利用されます。この研究では、ナノインデンターを使用した局所動的機械分析を使用してSBRゴムの貯蔵弾性率を低温下で測定します。
 

図1. スチレンブタジエンゴム(SBR)の化学式

実験方法

図2. 冷却チャンバー

 InForce 50アクチュエーターに直径50μmのフラットパンチを取り付けたKLA社製ナノインデンターを使用しました。SBRサンプルは冷却チャンバー内に設置し、局所動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis; DMA)試験を実行しました。 冷却チャンバーは、ナノインデンテーションへのアクセスを残しながら、サンプルを-60℃まで冷却することができます。サンプル温度は、チャンバーの外面が室温に維持されている間、加熱要素と冷却要素の両方でPID制御されます。 不活性ガスをチャンバー内にフローし、大気との化学反応を緩和し、試験中にサンプルの表面に氷が形成されにくい環境を作ります。

プローブDMAテクニック

 プローブDMA™は、周波数に対する粘弾性材料特性を測定するためのナノインデンテーション技術です。 プローブDMAには、ナノインデンターで特定の表面位置をターゲットにすることにより、局所的な機械的特性を定量化するという利点があります。さらに、プローブDMAは、従来のDMA試験機では測定が困難であったサンプルであるポリマーコーティングや薄膜を試験することができます。 プローブDMAの試験フローを図3に示します。

図3. プローブDMA試験フロー:既知の接触面積を持つフラットパンチが粘弾性材料の表面に押し込まれ、圧子が周波数掃引によって振動するときに動的な機械的応答が測定されます。


 プローブDMAは、すべてのKLA社のインデンターで使用でき、さまざまなフラットパンチ圧子で動作します。KLAは、さまざまなプラットフォームで-60℃から800℃のサンプル温度範囲を提供しています。この温度範囲により、さまざまな材料での時間と温度の重ね合わせの実験とクリープコンプライアンス関数の測定が可能になります。

結果とまとめ

 温度と周波数の関数としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)の貯蔵弾性率が図4のように両対数グラフに表示されました。室温、-28.5℃、および-66.0℃の3つの温度条件、および1Hzから200Hzまでの周波数条件でのデータを表しています。 周波数1Hzかつ21.0℃では貯蔵弾性率が80MPaでしたが、周波数1Hzかつ温度を-66℃まで低下させると、貯蔵弾性率1600MPa剛性が著しく増加します。温度の関数として剛性の深刻な変化を捉えることは、動作温度でポリマーを試験する必要性を浮き彫りにします。

図4. プローブDMAナノインデンテーションによって測定された
スチレンブタジエンゴムの貯蔵弾性率
 


※本記事はメーカーのアプリケーションノートの和訳です。
 

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