ナノインデンターによるクリープ試験

ISO14577によるクリープ試験の概要

ISO14577では硬度ヤング率以外にも機械特性を評価するうえで有用なパラメータが定義されています。クリープ試験もその一つです。クリープ現象とは試料に印加する試験力を一定に保持した場合に、試験時間の経過とともに押込み深さ(試料変形)が増大する現象です。ゴムや高分子材料では室温で発生する現象です。金属材料の場合、一般的には高温環境下で発生する現象ですが、スズや鉛など融点の低い金属では室温でも発生することが知られています。JISでも規格化された機械特性ですが、通常、バルク材又はシート状の試料に対して適用されています。その為、基板上の塗膜(薄膜)には適用できません。又、試料サイズにより試験結果が異なるため微小部位(微小部品)を比較するのは非常に困難です。これらの問題を解消するためにISO14577ではクリープ試験を規定しています。以下にナノインデンターを利用したクリープ測定の試験例を紹介させて頂きます。

ナノインデンターによるゴムの評価

試料はゴムパッキンです。新品(試料1)と使用時間の経過したゴム(試料2)を比較測定しました。試験条件は同一とし、硬度、ヤング率に加えクリープ、弾性変形仕事率を比較しました。

ナノインデンターで通常表示される荷重変位曲線から、試料1は試料2よりも変形が大きい事がわかります。このグラフにOliver-Pharrの解析手法を用いる事で、ISO14577に準拠する硬度、ヤング率が算出できます。

 

試験力と押込み深さの時間推移を表示することでクリープ量がより明確に視覚化できます。

硬度・ヤング率に加えクリープと弾性変形仕事率を算出した結果が以下になります。弾性変形仕事率は他のパラメータと同様にISO14577で規定される機械特性です。弾性回復量を定量化した数値です。数値が大きいほど、弾性回復が大きいことを示します。

試験結果から、使用時間の経過した試料2は新品である試料1に比べて硬化しただけでなくクリープ率が増大していることが判ります。又、弾性回復量も低下しています。
使用時間の経過により、試料2はパッキンとして劣化した事が判りました。

ナノインデンターでは試験力の印加をプログラムすることも可能です。以下はクリープ計測を行う緩和時間を5時間に設定し、その後試験力を50%減衰させて更に5時間試験力を保持しています。始めの5時間だけでなく、残りの5時間でのクリープ変位を算出することも可能です。

樹脂部品に対する加熱時のクリープ評価

2種類の樹脂部品に対して加熱状態でクリープ試験を実施しました。
ナノインデンターでは、部品の状態で微小部位のクリープが評価可能なだけでなく温度を変えたクリープ試験も可能です


試料1(黄色試料)


試料2(黒色試料)

試験結果:


注:試験点数は5箇所

 

黄色試料は黒色試料よりクリープ変位が大きいことがわかりました。
温度の上昇に伴い、両試料共にクリープ変位が増大しましたが黄色試料はより大きなクリープ変位を示しました。

      

まとめ

ナノインデンターによるクリープ試験には以下のような利点があります。

  • 微小部位、成型品に対して試験が可能である。
  • 硬度・ヤング率など他の機械特性パラメータが得られる。
  • 異なった試料サイズでも比較可能である。
  • 加熱状態での試験も可能である。