技術資料
平板電極の腐食測定
I. はじめに
水素社会の推進により金属の水素脆性や、半導体配線の微細化による異種金属接合など腐食測定の必要性は増大しています。耐食性の試験は重量測定や肉厚測定、顕微観察など様々な手法が知られていますが、電気化学測定は比較的短時間での測定が可能であるという利点があります。
本項では、腐食測定で広く使われている平板電極について、測定に使用する設備と、よくあるトラブル事例を紹介します。
II. 測定設備
電気化学的に腐食測定を行う場合には、一般に電気化学測定システムとよばれる計測器、電気化学セル、参照極や対極といった電極類が必要になります。各種製品の説明と装置選定の注意点は下記の通りです。
電気化学測定システムは、分極測定や異種金属間接触腐食測定を行うために電圧・電流の制御や計測を行うための装置です。一部の装置にはFRA(周波数応答アナライザ)が内蔵されており、交流インピーダンス法による抵抗測定も可能です。交流インピーダンス法は非常に小さい交流電圧をサンプルに印加するため、サンプルを非破壊で測定することが可能です。
各社様々な装置を販売していますが、サンプルや電解液が高抵抗の場合は装置スペックに注意して選定する必要があります。
電気化学セルは溶液だけでなく、作用極であるサンプルと参照極および対極をセットする必要があります。さらに、①「作用極が電解液に接触する面積が規定されていること」、②「電極の設置位置(電極間距離)が再現よく行えること」、③「溶液中の酸素や二酸化炭素など反応に影響を及ぼす可能性のある気体を除去するための孔があること」、④「溶液の温度を一定に保つことができること」などが好ましい条件になります。フラットセル(図2、3)と呼ばれる大型セルは上記①~④の機能を満たすだけでなく、内容量が大きいため腐食に伴う溶出物が拡散しやすく測定への影響を最小限に抑えることが可能です。
III. 測定内容
腐食試験には腐食電位や腐食電流を測定する分極測定、腐食抵抗を測定する分極抵抗法や交流インピーダンス法、JISG052に基づく腐食すきま再不動態化測定などが挙げられます。具体的な測定事例については、下記リンクを参照してください。
測定事例:酸性溶液中における鉄電極の腐食電流測定 | 電気化学測定ラボ | 東陽テクニカ | “はかる”技術で未来を創る | 物性/ エネルギー
IV. よくあるトラブル
・データがノイジー
測定データにノイズが含まれる場合、その原因は多岐にわたります。主な原因として、電源由来のノイズによる影響、それ以外の外乱ノイズの影響(特に10nA以下などの微小電流測定を行いたい際、顕著です)、物理的な影響(ウォーターバスの振動)が挙げられます。また、インピーダンス試験においては、腐食速度が速く測定系が定常状態にない場合など、測定系そのものがノイズの原因となることもあります。
こうしたノイズに対して、いくつかの対策が挙げられます。電源ノイズはアース付きの3Pコンセントを使用することやノイズカットトランスなどを使用することで改善が期待できます。外乱ノイズは、金属構造物(ファラデーゲージ)内に測定系を配置し、金属構造物内と測定系のグラウンドを同電位にすることで効果的に抑制できます。振動による影響は、除振シートを設置することなどで緩和が可能です。なお、腐食速度が速い系でのインピーダンス試験では、様々な方法での解析手法が提案されており、ドリフト補正や時間方向への補完(3Dインピーダンス法)などがあります。
・測定の再現性がとれない
溶液中の酸素濃度や二酸化炭素、電解液の温度による影響が原因となるケースが多々あります。この場合は窒素などで脱気することや温度調整可能な電気化学セルやウォーターバスを用いることで改善する場合があります。
・どのような反応が起きているのかわからない
電気化学においては電流・電圧・時間のパラメータを測定するため、この測定のみですべての反応を解析することはできません。様々な測定手法(計測器)と組み合わせて評価することが望ましいですが、単純な系においてはプールベダイアグラム(Pourbaix diagram)などで基礎的な反応を推測することも可能です。
V. まとめ
本項では、腐食測定によく用いられる平板電極の測定において必要な測定設備、よくあるトラブルをまとめました。 本文書でご紹介した内容や当社製品について、さらに詳しく知りたい方は、以下の「記事に関するお問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。
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