技術資料

サイクリックボルタンメトリー(CV)を用いた電気化学測定の評価方法

1. サイクリックボルタンメトリー(CV)の概要

サイクリックボルタンメトリー(CV)は、電気化学反応を評価するために有効な手法であり、二次電池、触媒、電極材料の特性評価に広く用いられています。本手法では、電位を一定速度で掃引しながら電流を測定し、電極反応の可逆性や拡散係数、酸化還元ピーク電流などの重要な情報を取得できます。

2. 定量的な評価方法

■2.1 酸化還元ピークの解析

CVの測定結果として得られるボルタモグラム(電流-電位曲線)から、酸化還元ピークの位置や電流値を分析し、以下の情報を取得できます。


・ピーク電位差(ΔEp):酸化ピーク電位(Epa)と還元ピーク電位(Epc)の差は、反応の可逆性を示します。

     〇 理論値:ΔEp ≈ 59 mV(1電子移動の可逆反応)

     〇 ΔEp > 59 mV の場合、準可逆または不可逆反応の可能性

・ピーク電流(Ip):ピーク電流値は、反応物の濃度や拡散係数に依存します。

     〇 可逆反応の場合、Randles-Sevcik式に従う:

          ●n:電子移動数
●A:電極面積(cm²)
●D:拡散係数(cm²/s)
●C:電解質中の物質濃度(mol/cm³)
●v:掃引速度(V/s)

■2.2 掃引速度依存性の解析

引速度 v を変化させた際のピーク電流やピーク電位の変化を解析することで、反応メカニズムを評価できます。

• 可逆反応:ピーク電流 Ip は v^{1/2} に比例(拡散律速)
• 準可逆反応:ピーク電位差 ΔEp が v に依存して増加
• 吸着支配型反応:Ip は v に比例

■2.3 拡散係数の求め方

拡散係数 D は、Randles-Sevcik式を用いて算出できます。掃引速度を変化させた複数の Ip 値から、v^{1/2} に対する直線回帰を行い、傾きから D を求めます。

3. 実験条件の最適化

定量的なCV解析を行うためには、以下の実験条件を最適化することが重要です。

• 参照電極の選択:Ag/AgCl や 標準水素電極(SHE)などの安定した参照電極を使用
• 電解質溶液:十分な導電率を持ち、不活性な支持電解質(例:0.1 M KCl)を使用
• 電極前処理:電極表面の汚染を防ぐため、適切な洗浄や活性化処理を実施
• 温度制御:拡散係数や反応速度が温度依存性を持つため、一定温度で測定

4. 実験条件のポイント

• スキャンレート:典型的には 0.1 ~ 10 mV/s
• 電解質:一般的には LiPF(有機溶媒系)
• 参照電極:リチウム金属(Li/Li)を使用することが多い

5. 代表的な応用

• 新規電極材料の開発
• 電極の安定性評価
• リチウムイオン拡散係数の測定
• 電解質や界面反応の研究

6. CV曲線の典型的な例

グラファイト負極とLFP正極のCV曲線を図1に示します。
・青色(グラファイト負極):0~0.3V付近にリチウムの挿入(還元ピーク)・脱挿入(酸化ピーク)の特徴的なピークが見られます。
・赤色(LiFePO₄=LFP正極):約3.45V(還元)と3.6V(酸化)に明瞭なピークが現れています。
このような曲線の形状を解析することで、電極の可逆性や反応特性を評価できます。

図1. グラファイト負極とLFP正極のCV曲線

7. まとめ

サイクリックボルタンメトリー(CV)は、酸化還元反応の解析や物質の拡散係数の測定に有効な手法です。ピーク電位やピーク電流、掃引速度依存性などの定量的指標を解析することで、二次電池の電極材料や触媒特性を詳細に評価できます。適切な実験条件の設定とデータ解析により、高精度な電気化学測定が可能です。さらに、EISやGITTなど他の評価手法と組み合わせることで、より精密な解析を行うこともできます。

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