電気化学ソリューションマガジン Vol.04

電気化学測定法の基礎-サイクリックボルタンメトリー 1.概要

理化学計測部 電気化学チーム マーケティング担当です。
連日、新型コロナウイルスに関連したニュースが報道されています。私たちの生活への影響も大きく、教育機関では卒業(修了)式が中止になったり、職場では時差通勤、在宅勤務、テレワークなどの言葉を頻繁に耳にするようになりました。
電気化学会大会や日本化学会年会など、この時期の定例行事も相次いで中止となるなど影響が広がっています。
今回、電気化学会大会が開催される予定だった、名古屋工業大学と最寄りの鶴舞駅との間にある鶴舞公園はとても美しい公園で、特に桜の季節はお花見で賑わい、観光客はもちろん、大学の先生方や学生さんにも人気のスポットだそうです。
今は様々なイベントなどが中止や自粛になっていますが、コロナウイルスの影響が一刻も早く収束し、たくさんの方がお花見を楽しめるようになることを願っております。

それでは、前号から引き続き参照電極のメンテナンスからはじめ、実際の測定法であるサイクリックボルタンメトリーの導入までを解説いたします。
後半では新製品のご紹介もございますので、お見逃しなく!

1. 電気化学測定の基本(3 電極系)-参照電極 2.保管とチェック

【参照電極】

以前お話しした作用電極とともに重要な参照電極の保管とチェックについてご紹介します。
ポテンショスタットなどの電気化学測定器は、測定系へ“参照電極に対して”□V という電圧を正確に印加する装置であるため、参照電極の状態によっては制御ソフトなどで適切な値を設定しても、実際にはおかしな電圧がサンプルにかかってしまうことがあり得ます。そのため、参照電極使用前のチェックと使用後の適切な保管が必要です。

  1. 参照電極を使用する際の主なチェック
    ≪電極先端部(液絡部)≫
    液絡部にはバイコールガラスやセラミックスなど多孔質の材料が用いられているため、色素などが吸着されやすい状態です。 液絡部の見た目に多少色が付いていてもすぐに使用できなくなるわけではありませんが、目詰まりなどしている可能性もありますので、後述の電極電位のチェックは行ってください。
    ≪気泡の付着≫
    参照電極内部(液絡部付近)や測定溶液に浸けた際に液絡部先端に気泡が付いていることがあります。この場合は参照電極と測定溶液間で全く導通が取れない状態になってしまうので、その状態で無理に測定しようとするとポテンショスタットは電極電位を認識することができず、作用電極におかしな電圧が印加されることになり、電極材料や測定溶液が変性してしまうことがあります。電極内部の気泡は、電極本体を軽く指ではじくことで上部に移動させることができますし、先端部についている場合は多少電極を測定溶液中で動かせば除くことが可能です。
    ≪電極電位のずれ≫
    可逆水素電極などと比較して文献値付近の電位を示しているか、ポテンショスタットでは2極で自然電位(OCV)を測定することにより確認ができます。水素電極の用意が難しい場合には、“測定には使用しない“参照電極を1本用意しておいて、測定に使用する電極と OCV 測定をすることで電位差が小さければ(10mV 以下程度)問題ないと簡易的にみなすことが可能です。
    ≪実測してチェック≫
    作用電極のチェックと同じく、以下のような溶液中などで CV 測定を行いその波形(ピークの生じる電位など)を確認しても良いでしょう。
    ・ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム(1 mM 程度)+支持電解質 KCl など(1 M 程度)の水溶液
    ・0.5 M 程度の硫酸水溶液
  2. 参照電極の保管方法
    ≪水系≫
    測定に使用した後はイオン交換水などで充分に洗浄して、電極の内部溶液と同じ溶液に浸漬して保管しておきます。保管するための溶液の水分が蒸発して濃度が変わらないよう、また、密封できるよう保存ビンを使用すると良いでしょう。
    水系で良く用いられる参照電極(Ag/AgCl)
    ≪非水系(Ag/Ag+参照電極)≫
    水系と同様に測定後はアセトンなどで充分に洗浄して、内部溶液と同じ溶液に保存します。ただし、水系と異なり有機溶媒が揮発しやすいことや、内部溶液に含まれる銀塩の溶解度が低いことなどから、水系の参照電極に比べ組成が変わりやすい(電極電位が変動しやすい)ため、なるべく測定する日ごとに内部溶液を更新することが望ましいです。
    非水系で良く用いられる参照電極(Ag/Ag+)

2.電気化学測定法-サイクリックボルタンメトリー(CV)_1.概要

これまで電気化学測定に使用する電極についてご紹介しましたが、今回から実際の電気化学測定法についてもお話しします。
まずは電気化学において最も汎用的な測定であろうサイクリックボルタンメトリー(CV)についてです。CVは酸化還元状態を評価する測定テクニックとして、電気化学が関わる広い分野で使用されています。各種金属イオンや錯体ほか様々な化合物が酸化もしくは還元される電極電位を CV により判断することができ、測定系における電極反応のおおよその全体像をつかむための初期診断としてよく利用されています。

≪測定法≫
一般的には、測定溶液中で、電位E(V)を一定の掃引速度vで初期電位(Ei)から折り返し電位(E1)まで掃引した後に、折り返して Ei まで逆掃引した際の電流 I の変化を電位の関数として記録します。得られた曲線は(サイクリック)ボルタモグラムと呼ばれます。ボルタモグラムは逆掃引により反応の可逆性を評価することや、電気化学反応における電荷移動過程/物質移動(拡散)過程などにより特徴的に変化するため、直感的に反応全体の概要を知ることができます。
≪主なパラメーター≫
・初期電位
・折り返し電位
・最終電位
・電位掃引(スキャン)速度(v/s)
≪測定の準備と主な流れ≫
1. 三電極(作用電極・参照電極・対極)および電解液、電解セルを準備する
2. 作用電極の研磨、洗浄を行い、参照電極の電位をチェックする
3. 窒素や Ar で溶存酸素除去のためパージを行う
4. 作用電極や参照電極先端に気泡などないかチェックする
5. 支持電解質のみの電解液で CV 測定を行う(バックグラウンド測定)
※ 電位窓(溶媒や支持電解質の反応が起こらない電位範囲)の確認や溶存酸素が除けているかも判断することが可能
6. 電解液に測定対象の化合物を溶解させて CV 測定を行う
7. バックグラウンドの測定結果と比較、もしくは 5.の測定結果からバックグラウンドを差し引いて考察を行う
※ 通常、電気化学測定システムのソフトウェアにはバックグラウンドデータを減算する機能があります。
標準的な CV 測定用の電解セル

3.電気化学アクセサリーのオンラインストア掲載開始

今号までメルマガでもご紹介してきた作用電極、対極、参照電極、また、それらと一緒に用いる 電解セルなどをオンラインストアで販売開始いたしました!
簡単な会員登録をいただくだけで、注文はもちろん、価格を確認しながらの見積り作成・発行も可能です。
すでに当社とお取引のある場合は従来と同じお支払方法でご購入いただけます。

オンラインストア

もし他にもオンラインストアをご利用するにあたり、ご要望がおありの方はお気軽にご相談ください。
できる限りみなさまのご要望にお応えしてまいります!

4.新製品 マテリアルインピーダンスアナライザー「MIA-5M」のご案内

東陽テクニカ製「MIA-5M」は、TΩ レベルまでの高抵抗測定が可能なインピーダンス計測システムです。 錯体・トナー・有機半導体など様々なアプリケーションに適用できます。高確度を実現するため、オープン/ショート/ロード補正機能も備え、リファレンスの測定が不要なので時短にもなります。誘電体の物性評価に必須の高電圧アンプや温度制御オプションも用意して
おり、専用ソフトウェアから一括で連動させることもできます。

製品詳細

5.新製品 高温高周波インピーダンス測定システムのご案内

ご好評をいただいております、全固体電池などに向けた東陽テクニカ製高周波インピーダンス測定システムに、HT-Z2-HF 高温対応モデル(RT~600℃)が登場しました!
従来の LN-Z2-HF 低温域(80K~473K)モデルに加え、酸化物系・プロトンやヒドリドイオンを利用した全固体電池向け固体電解質や SOFC 用途の固体電解質などの評価にも対応可能です。特に水素の陰イオンであるヒドリドイオンは、イオン伝導に適した小さなイオン半径と価数により、新たな電気化学デバイスへの応用としても期待されています。

製品詳細

6.バッテリージャパン(二次電池展)出展のご報告

当社ブースにご来訪いただきました方々に心より御礼を申し上げます。
ブースにて展示していた製品は以下の Web ページでもご紹介しております。

展示会概要

7.あとがき

次回はサイクリックボルタンメトリーの続きとして測定結果からわかることなどについてご紹介する予定です。
解説内には、厳密には必ずしも精確ではない用語の使用や説明もございますが、なるべく簡潔にご紹介したいということもあり、ご容赦いただければと思います。
それでは、また次回号でお会いしましょう!

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