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水中ロボットが安全な作業を支援

廃炉への新たな挑戦

水中ロボットが安全な作業を支援

東日本大震災により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、
被災された皆さまとそのご家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。

長きにわたる複雑かつ重層的な「廃炉プロジェクト」

2011年3月11日に事故を起こした福島第一原子力発電所。
全号機が廃炉決定となり、その廃炉プロジェクトは30年から40年を要する複雑かつ重層的な構想で、特にこれからは廃炉の本格化に向けて未踏領域の課題に挑戦する段階と言われています。
この廃炉プロジェクトにおいて、2020年6月に実施された、震災後初となる2号機の使用済燃料プール内調査に、東陽テクニカが取り扱う超小型水中ロボットが使用されました。
(参照:東京電力ホールディングス「廃炉プロジェクトとは」

震災後初の2号機プール内調査 機材を入れた新たな試み

この使用済燃料プール内調査は、燃料取り出しに向けてプール内に大きな障害はないかを調べ次の計画に繋げる重要なステップになります。
放射線量の影響で調査に人が介入できるエリアが限られている中、これまで4号機のプール内調査に他社の水中ロボットを使用したことはありましたが、2号機では東京電力ホールディングスの社員が自ら遠隔操作して水中ロボットをプールに投入しプール内を調査するという、初めての試みでした。

一方、東陽テクニカにとっては、水中用の小型ロボットとはいえ、廃炉となった原子炉建屋内のプールで使用すること自体初めての挑戦でした。プール内の広さに適応するのか?放射線下でも正常に稼働するのか?未知なる環境に対してさまざまな懸念はありましたが、使用されるほかのロボットとの相性や放射線下で使用するうえでの確認を重ね、「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市)では東京電力ホールディングスの皆さんに操作訓練をしていただき、実際に調査で使用されることとなりました。

<訓練の様子>2号機使用済燃料プール内調査に向けた水中ROV(ロボット)実際の操作
(出典:東京電力ホールディングス)

今回、プール内調査で実際に操作にあたった東京電力ホールディングスの新野さんにお話を伺いました。

使用済燃料を安全に取り出すために

―新野さんがご担当されている業務について教えていただけますか。

「現在、2号機燃料取扱設備グループに所属しており、僕たちのグループは使用済燃料プールから燃料を取り出すための装置(燃料取扱設備)を設置することを業務としています。グループは、燃料取扱設備の設置を進めるチームと、設置に必要なエリアの除染や遮蔽を進めるチームで構成されています。」

東京電力ホールディングス株式会社
廃炉推進カンパニー福島第一原子力発電所
プール燃料取り出しプログラム部
2号燃料取扱設備PJグループ
新野 恭乃祐(にいの きょうのすけ)さん
(出典:東京電力ホールディングス)

―2020年6月に実施されたプール内調査について教えていただけますか。

「2号機のオペレーティングフロアは線量が高いため人が入って作業することができずプール内の調査が困難な状況でした。そこで原子炉建屋内にロボットがアクセスするために設置された西側の構台を活用し、プール内に水中ロボットを降ろす装置を遠隔で設置しました。また、燃料取扱設備を設置するうえで、燃料そのものが今現在どのような状況なのかさえわかっておらず、まずはプール内の状況-地震の影響はないかなど-の確認が必要で、そこで水中ロボットを使用しプール内の状況調査を行いました。」

使用済燃料プール南西側の機材設置イメージ
(出典:東京電力ホールディングス)

水中ロボット(ROV)を使用済燃料プールへ投入する際のイメージ
(出典:東京電力ホールディングス)

簡単な操作でプール内調査に有効だった水中ロボット

―今回のプール内調査にどのような点で水中ロボットが活躍したのでしょうか。

「まず、遠隔による調査が可能となったことで、原子炉建屋内に直接人が入って調査する必要がなくなり、被ばく線量を抑えて作業することができました。今回の水中ロボットは操作性という点でとても扱いやすく、ロボット操作に対して素人である僕たちでも数時間の訓練でその操作を理解し扱えたことが本当に助かりました。また原子炉建屋という特殊な建物の中での作業では想定外のトラブルも考えられ、万が一何か起こったとき機材の回収が必要になるのですが、その点でも今回の水中ロボットは機材を繋いでいるケーブルをプールの水面上で確認でき位置確認や回収もしやすく想定外の対応に対しても有効と捉えました。」

東陽テクニカが事前に作成していた水中ロボット(ROV)構成図

―当社の水中ロボットの操作訓練で苦労した点などあれば教えてください。

「正直なところ、苦労した点はないというのが本音です。僕自身、水中ロボットを使用すること自体初めての体験でしたが、操作技術のない者でもコントローラーで簡単に操作ができ、数時間の訓練で思い通りに操作ができるようになりました。
強いて言えば、作業そのものが特殊なせいもありますが、(汚染防止のために)全面マスクと手袋をした状態でのコントローラーによる操作や(プールに人が近づけないために)水中ロボットのケーブルがプール内の設備に引っかかっていないか注意を払うところに苦労しました。」

実際の操作の様子(出典:東京電力ホールディングス)

水中ロボット走行の様子(出典:東京電力ホールディングス)

<実際の操作>2号機使用済燃料プール内調査完了について
(出典:東京電力ホールディングス)

燃料取り出しに向けて続く新たな挑戦

―今回使用した水中ロボットは(放射線の影響で)もう使用できない状態でしょうか?

「いえ、まだ使用できる状態です。調査後、除染し保管しています。今回のプール内調査で操作性もわかりましたし、今後別の調査でも機会があれば使用したいと思います。」

―2号機における次のステップについて教えていただけますか。

「今回の調査結果から、燃料取り出しに向けての次の計画に大きな予定変更は必要ないことがわかりました。次は燃料取扱設備を作る段階になり、まずは原子炉建屋の南側に設備を設置するための構台を2024年までに建てる予定です。ただ、原子炉建屋の線量が非常に高いため、原子炉建屋内での有人作業を可能にするために、構台を建てる計画と並行して建屋内の除染や遮蔽の作業を遠隔で実施していくことを予定しています。」

―2011年3月11日から10年が経とうとしています。新野さんにとってこの10年は。

「10年前に比べると現場の環境もかなり改善されたと感じていますし、最近では3号機の使用済燃料プールから燃料取り出しが完了し、廃炉に向け着実に前進していると思います。一方、課題もまだまだ残っており、2号機の燃料取り出しもその一つです。
また、福島第一原子力発電所構内には線量が高く人が介入できない箇所がまだまだ多く、そういった点で今後も必ず必要となる遠隔操作技術を磨き、その技術を次の世代へも引き継いで廃炉作業を着実に進めていく必要があると感じています。」

燃料取り出し用構台構成図
(出典:東京電力ホールディングス)

オンラインでインタビューにご対応いただいた新野さん
(出典:東京電力ホールディングス)

「普段は大勢の作業員の皆さんとチームを組んで作業を行っています。自分一人では困難な作業でも、コミュニケーションを大切にし、世代を超えお互いを尊重しあえるこのチームだからこそ、着実に作業を進めることができています。」と新野さん。
機器に頼らざるを得ない厳しい環境の中だからこそ人と人とのつながりが成果につながるのだと感じました。

2011年3月11日から10年。
あれから復興に向け日本はさまざまな変化・変容を遂げてきましたが、まだまだ道半ばであり、私たちはあの日の教訓を胸に今後も歩み続けなければなりません。
東陽テクニカは、当社ならではの方法―“はかる”技術―でこの歩みの中で止まることなく、今後も防災や災害復興の役に立ちたいと考えています。

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