歩行を“はかる”ことで未病予防につなげる
健康寿命に関わる取り組み「軽井沢健診」をサポート
長寿国の日本では健康寿命の延伸がこれからの課題に
平均寿命が約84歳と、世界屈指の長寿国である日本。
一方、健康寿命も世界トップでありながら約74歳、と平均寿命との間に約10年の差が生じています。(WHO(世界保健機関)データ「Healthy life expectancy and Life expectancy」より)
健康寿命とは、自立して元気に生活できる期間であり、平均寿命との差が生じている10年は、何かしらの支援や介護などを必要とするような、日常生活に制限が生じていることを意味しています。
人生100年時代という言葉もある今、人生において心も身体も健やかな日々を少しでも長く送るために、この健康寿命を延ばすことに関心が寄せられています。
健康寿命に関わる取り組みとしてスタートした「軽井沢健診」
この健康寿命に関わる取り組みとして長野県の軽井沢町で2020年から実務が始まったのが、軽井沢町と信州大学社会基盤研究所が共同で実施する健康プロジェクト「軽井沢健診」です。
認知症やフレイル(寝たきりになる一歩手前の段階で、適切な取り組みにより健康状態に戻れる状態)の病因や高血圧との関連を明らかにすることを目的とした健診で、特定健診の結果を活用する他、認知機能検査や筋肉量・歩行スピード等の測定、受診者自身による自宅での夜間血圧測定など、約5年間継続して参加していただく研究事業です。
この研究事業に東陽テクニカが共同研究として携わっています。
参照:軽井沢健診 | 信州大学 社会基盤研究センター (shinshu-u.ac.jp)
「軽井沢健診」会場:「木もれ陽の里」
「軽井沢健診」会場の様子
認知症の早期発見やフレイルの評価から適切な治療や予防を推奨
団塊世代が75歳以上となる2025年には高齢者の5人に1人が発症すると言われている認知症。健常者と認知症の中間にあたる軽度認知障害(MCI)を早期発見することで、適切な治療や予防に取り組むことができ、認知機能を改善したり症状の進行を遅らせたりすることができるだろうと言われています。
「軽井沢健診」では認知機能検査を行い、MCIと診断された受診者にはMRIによる精密検査を勧め、認知症の早期発見につなげています。
また、筋力低下に伴い生じる身体機能の低下がフレイルを起こしやすいという観点から、筋肉量・歩行スピード等の測定をすることで、フレイルの評価を行っています。
このフレイルの評価につながる歩行計測において、東陽テクニカが自社開発の「KGウォーク」を使いサポートをしています。
「KGウォーク」の計測技術で歩行におけるデータ計測を実現
「軽井沢健診」に関するプロジェクトが机上に上がったとき、健診内容にある歩行計測ではストップウォッチを使う一般的な手法が検討されていました。
この内容を耳にした当社研究員は、「KGウォーク」による計測を提案します。
「KGウォーク」は、スピードスケートに関する研究から生まれた計測技術「KGウエア」を改良、機能拡張し、100人単位での計測・解析を可能にしたものです。
(参照:人の動きを測る「KGウエア」の開発│株式会社東陽テクニカ (toyo.co.jp))
「KGウエア」は、トップアスリートのための研究で、一つ(一人)のデータを収集・解析することに重きを置いていました。今回の「KGウォーク」では、多くの人が受診する健診での活用を考え、100人単位での計測とその結果をデータ化し管理できるようにしています。装着についてもより簡易的にできるようベルトタイプに改良しました。
この「KGウォーク」では、二足歩行の加速度ベクトルを精密に測り、歩く速さや姿勢などを計算で求めることができます。
「KGウォーク」を着用し一定の距離を歩くだけの簡単な計測方法で、複数の医学的規準に対応した歩行速度を算出できることから、この「軽井沢健診」プロジェクトでの採用が決まりました。
受診者は「KGウォーク」を装着し、スタート位置からゴール位置までを普段通りに歩きます。
その結果から、歩行時の左右のバランス、歩幅の間隔と、一定距離の速度を計測します。
例えば左右のバランスが傾いている等の個人の歩く癖や、歩幅が年々短くなっている等の変化を見つけることができます。
歩行計測で使用している「KGウォーク」
「軽井沢健診」での歩行計測
「KGウォーク」で歩行計測をしたデータ解析イメージ
2021年7月19日には、2021年度で7回目となる「軽井沢健診」が開催されました。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、密を避けながら受診者皆さんに健診を受診していただき、歩行計測においては、「KGウォーク」の装着から歩行まで、時間をかけることなくスムーズに実施することができました。
「KGウォーク」の装着、歩行計測の様子
2021年度は4月~7月に7回、9月~11月には9回実施する予定です。
受診の申し込みは今年度まで受け付け、来年度以降はこれまでの受診者の方々が継続して受診される予定です。
「軽井沢健診」のプロジェクトでは長期にわたり一定の受診者に受診してもらうことで、認知症やフレイルの前兆を捉え、早期の予防や治療につなげていきます。
東陽テクニカは、計測に関するノウハウと柔軟な発想で新たな価値を創造し、人々の健康な暮らしをこれからも支えてまいります。