JAXA美笹深宇宙探査用地上局に「基準信号・時刻標準装置」を納入 ~深宇宙探査機の追跡・管制を支える原子時計~
2020年7月2日
株式会社東陽テクニカ
JAXA美笹深宇宙探査用地上局に「基準信号・時刻標準装置」を納入
~ 深宇宙探査機の追跡・管制を支える原子時計 ~
株式会社東陽テクニカ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:五味 勝)は、深宇宙※1探査機の追跡・管制などに使用するための、水素メーザ原子時計を利用した「基準信号・時刻標準装置」を、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)が長野県佐久市に建設中の美笹深宇宙探査用地上局(以下美笹局)に3月30日に納入いたしました。
※1 地球からの距離が200万キロメートル以上である宇宙(電波法より)。地球から月までの距離は約38万キロメートル。

「基準信号・時刻標準装置」
(写真はシステム全体の中の一部)

水素メーザ「iMaser3000TM」
用途・製品特長
今回納入した「基準信号・時刻標準装置」は、深宇宙探査機の追跡・管制などに活用されます。内部に原子周波数標準器(原子時計)※2としてT4Science S.A.(本社:スイス、ヌーシャテル州ヌーシャテル、以下T4Science社)の水素メーザ「iMaser3000TM」を使用しているのが特長です。
水素メーザは水素原子を用いて誘導放出により高純度のマイクロ波を発振する装置です。水素メーザ原子時計は現在の技術において安定度が高い原子時計のひとつで、電波天文や測地への利用をはじめ、日本の標準時決定にも使用されています。美笹局で行われるような深宇宙探査機の運用で必要となる、精密な受信信号の測定を行うためには、高精度の基準周波数信号や時刻信号の生成が必要です。また、高精度の時刻信号はVLBI(超長基線干渉法)※3という複数のアンテナを使った高精度の測定手法で精密な時刻差を検出する際にも要求され、それにより探査機の軌道を正確に測定し、コントロールすることができます。
※2 電磁波が通過するとき分子や原子は固有な周波数の電波に共振する。この周波数を利用して一定の周波数の信号を発生させて動かす時計。
※3 Very Long Baseline Interferometry。複数のアンテナ(電波望遠鏡)の観測データを合成し、一つの観測データとして扱う手法

水素メーザ利用例(VLBIの原理)
出典:国土地理院ウェブサイト
水素メーザ「iMaser3000TM」について
T4Science社製水素メーザ「iMaser3000TM」は、周波数安定度や位相雑音といった主な性能が世界で最も良い製品の一つであり、長期にわたる地上局の運用に適した長寿命設計がされているほか、美笹局のような無人局でも運用できるように遠隔地からの操作にも対応しています。T4Science社の前身であるヌーシャテル天文台時代からを含め、これまで100台以上の導入実績があることや、1982年以来現在も稼動している製品があるなど、スイス製製品としてその品質が証明されています。
水素メーザ「iMaser3000TM」の主な特長
- 非常に高い周波数安定度 (6.0 x 10-14/秒、1.5 x 10-14/10秒、4.0 x 10-15/100秒、 1.5 x 10-15/1,000秒、1.0 x 10-15/10,000秒)
- 低位相雑音 (-132dBc/Hz)
- 長寿命 (20年以上)
- メンテナンスフリー
- ネットワークを経由して遠隔操作が可能
美笹深宇宙探査用地上局(GREAT)について
JAXAはこれまで深宇宙探査ミッションを支えてきた臼田宇宙空間観測所(臼田局)の後継地上局として、美笹深宇宙探査用地上局を長野県佐久市に建設しています。美笹局は臼田局で運用されていた周波数帯域よりさらに高く、また「はやぶさ2」でも採用されているKa帯(32GHz帯)での運用にも対応しており、より多くのデータ受信が必要となるこれからの宇宙ミッションを支える予定です。2021年4月の本格的な運用開始にむけ、現在建設および試験運用中です。
▼GREAT関連情報
http://www.jaxa.jp/projects/sas/great/index_j.html
http://www.isas.jaxa.jp/home/great/index.html
https://www.facebook.com/JAXA-深宇宙探査用地上局-219351031820297/
T4Science S.A.について
T4Science社は2006年にスイス・ヌーシャテル天文台からメーザ技術を譲り受け、1982年以来メーザの設計を担当し、3代のメーザ製品を提供してきたチームとともに創業しました。高性能、低価格、高品質でスマートな機能を搭載したコンパクトな次世代メーザの設計・製造・販売において、世界をリードする企業です。T4Science社の製品は時刻・周波数を含むさまざまな科学技術の用途で利用されています。
★ 本件に関するお問い合わせ先 ★
株式会社東陽テクニカ EMCマイクロウェーブ計測部
TEL:03-3245-1244(直通)
E-mail:emc@toyo.co.jp
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