ICP®加速度計入門

はじめに

ICP®加速度計は、加えられた加速度に比例した電気出力を生成します。さまざまなアプリケーションの振動と衝撃を測定するように設計されています。簡単に使用でき、幅広い周波数レンジにわたり正確なので、多くのテストで幅広く使用されています。

ICP®(Integrated Circuit Piezoelectric)は、PCB®社のアンプを内蔵したセンサに対する登録商標です。この装置は圧電素子で発生した高インピーダンスの電荷信号を低インピーダンスの電圧信号に変換し、通常の2線ケーブル、または同軸ケーブルでデータ収録装置または計測機器に送ります。

ICP®加速度計の構造

適切な信号変換を可能にするために、ICP®加速度計には慣性マスが取り付けられた圧電体(水晶等)を含むさまざまな機械部品が使用されています。加速度が加わると、慣性マスにより、圧電体が変形し加速度に比例した電気出力が得られます。その結果が直線的になるようにプリロードリングまたはスタッドは圧電体と強固な一体構造になっています。出力は電極に集められ、ICP®加速度計のアンプに送られます。

シェア型加速度計

ICP®加速度計の電源供給

PCB®のすべてのICP®加速度計は、定電流のDC電圧源からの電源供給が必要です。ICP®加速度計には、専用の電源のみを使用する必要があります (それ以外の市販の電源は内部の電子回路の損傷、破壊を起こす可能性があります)。PCB®は+18~+30VのDC電圧、2~20mA電流を供給可能な各種ICP®シグナルコディショナを取り揃えています。

周波数範囲

データ収録装置によっては、ICP®電源を含んでいるものもあります。そのような場合は、シグナルコンディショナは必要ありません。

ICP®加速度計とICP®電源を備えたデータ収録装置

加速度計のDCバイアス電圧(ターンオン電圧)は、一般に+8~+12Vの範囲です。DCバイアス電圧は出荷前の校正時に測定され、付属する校正シートに記載されます。

ICP®加速度計の振幅レンジ

ほとんどのICP®加速度計のフルスケール出力電圧は±5Vです。出力は、加速度計の測定レンジと感度に直接関係します。例1、2でこれを説明します。

例1:

352C33の感度は10mV/(m/s2)であり、ピークレンジは±500m/s2です。
500m/s2×10mV/(m/s2)=5000mV=5V

例2:
352C33の感度は10mV/(m/s2)であり、ピークレンジは±500m/s2です。
500m/s2×10mV/(m/s2)=5000mV=5V

加速度計の感度は、小さなスケールの入力からフルスケールまで直線性が保たれています。これを図4に示します。

モデル353B03の振幅リニアリティ

ICP®加速度計のシステム低周波応答

ICP®加速度計はACカップル装置であり、変動しない加速度(静的またはDC加速度とも呼ばれる)は測定できません。加速度計内部の電気容量と抵抗値によって、放電時定数(DTC)と低周波応答が決まります。等加速度がかかると、出力信号は放電時定数にしたがって低下します。出力信号は、時定数の5倍の時間で完全に放電されます

ICP®加速度計のシステム高周波応答

ICP®加速度計毎に、周波数測定レンジの上限が決まる固有の共振周波数があります。この共振周波数は、物理設計に依存します。図5で示されているように共振周波数に近づくと感度は急速に上がり、信号出力がオーバーロードになることがあります。

共振点におけるICP®加速度計

高周波を正確に測定するには、取付けが重要になります。モデルごとの正しい取付方法については、取付図面および製品マニュアルを参照してください。

校正/再校正

すべてのPCB®が提供するICP®加速度計には図6で示されるような校正証明書が付いてきます。この証明書には、各加速度計の特性と、いくつかの重要な仕様値が記載されています。

図6: ICP®加速度計の校正証明書

図6: ICP®加速度計の校正証明書

  校正は、加速度計に基準加速度計を取り付け、両方同時に加振して出力されるデータを比較して行われます(back-to-back比較校正)。この技術は幅広い周波数レンジに渡る加速度計の感度を手早く、簡単に確定するための方法です。使用される基準加速度計は、認証された規格団体で校正されています。

図7:back-to-back比較校正法のセットアップ

両方の加速度計にかかる加速度は同じであるため、出力電圧の比は加速度計の感度の比にもなります。基準加速度計の感度はわかっているため、それを基に校正される加速度計の感度を計算で求めます。 PCB®は再校正サービスを提供しています。社内のキャリブレーションラボは、ISO9001認証およびA2LA認定されています。校正で使用される機器は、NIST(National Institute of Standards and Technology、米国標準技術局)に直接トレーサブルです。

こちらもあわせてお読みください。

ICP®加速度計一覧は、こちらから。