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音響技術

ID.セクション Ⅳ:仕様説明

Q. 50 A特性フィルターとは何ですか。

A.


A特性は、ヒトの耳が異なる周波数で、どのように音圧レベルを知覚するかを考慮して補正された出力信号です。以下に本補正データの詳細と用途を歴史を交えてご説明いたします。

多くのコンデンサーマイクロホンは製品設計段階で、下記の目的で使用されます。
(1)製品から発生する音がヒトの耳にとって不快なものでないようにするため。
(2)製品音がヒトの聴覚に影響を及ぼさないか評価するため。

人間の聴力範囲は一般的に20 Hz~20 kHzです。(これは聴覚の良い新生児の範囲で、年齢とともに、耳の蝸牛の毛包が損傷し、変化していきます。(特に高い周波数において。))

External auditory canal 外耳道
Tympanic membrane 鼓膜
Malleus 槌骨
Incus 砧(きぬた)骨
Stapes (卵円窓に付属する)あぶみ骨
Vestibular nerve 前庭神経 Cochlear nerve蝸牛神経
Cochlea (内耳の)蝸牛
Round window 正円窓
Eustachian tube 耳管
Tympanic cavity 鼓室

この20Hzから20kHzの範囲内で、ヒトの耳は、信号の周波数およびラウドネスに応じて、音を様々に知覚します。耳がどのように音を知覚するかを理解するために、FletcherとMunsonは1933年に研究を行い、測定された音と知覚された音との関係を示す等ラウドネス曲線を作成しました。
この曲線では、1kHzでのラウドネスレベル(単位:フォン)をベースに、異なる周波数において同じラウドネスレベルを得るには音圧レベルを何 dBにする必要があるかを示しています。(ある音が1kHzの音圧レベルP dBの音と同じ大きさに感じられると、その音はラウドネスが Pフォンであるといいます。)この研究から、ヒトの耳は1kHzと6kHzの間の周波数で最も敏感であり、他の周波数では自然に音を減衰させることが分かりました。

ANSI(米国規格協会)は、音圧計測器のS1.4規格にこのデータを盛り込みました。長年にわたり、様々な周波数重み付け特性が確立されました。IEC 61052規格は、 A, B, C, D特性を定めています。A特性は40フォンという低いレベルでヒトの耳がどのように音を知覚するかを表わすために定められました。
また、試験により、低周波が高音圧レベルと組み合わされると、ヒトの耳ではあまり音は減衰されないということが確認されました。B, C, D特性は、より高い音圧レベルに基づいています。B、C、Dの特性は、より高い音圧レベルに基づいており、アプリケーションの例としては、エンジンノイズ、砲撃テスト音、爆発検出、または航空機の騒音などがあります。

2003年に、IEC 61672規格では、B特性とD特性の使用をやめ、補正されていない平坦または線形なスケールによるZ特性を追加しました。今日では、高性能な騒音計には、上記のA特性、C特性、線形(Z)特性の重み付けフィルターが搭載されています。
上記の図においては、100 dBの100 Hzにおける低音圧レベルは、約20 dB減衰されます。よってヒトの耳には、100 dBの音信号が80 dBであるかのように(あまりやかましくないように)聞こえます。

ヒトの耳が製品の音をどのように知覚するかを理解することは、消費者用製品メーカーにとってはとても重要です。それらのメーカーは製品から発生する音がより耳に心地よいものであるように、A特性を使用して開発を行います。A特性を使用している企業や業界の例としては、白物家電製品メーカー(食器洗浄機、洗濯機、エアコンユニットなど)、ハンドツールメーカー(粉砕機、削岩機、ドリルなど)、コンピュータ、自動車や航空宇宙業界(環境調査や客室ノイズ測定)などがあげられます。

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