加速度計の変換タイプ

圧電型(PE)、ピエゾ抵抗型(PR)、容量型(VC)センサ

加速度計は、機械的な加速度入力の結果として電気信号を出力するトランスデューサです。最も一般的なタイプの加速度計は、圧電効果によって動作します。圧電型(PE)加速度計は、一般に2つのグループに分類されます。すなわち、低インピーダンス電圧型(例えば、PCB Piezotronicsの商標であるICP®)または電荷出力型です。他のタイプの加速度計変換方式としては、ストレインゲージ技術に基づくピエゾ抵抗型(PR)、
および(可変)容量型(VC)などがあります。

圧電効果は、材料に加えられた応力の結果として電荷が生じるという現象です。圧電効果は水晶に天然に
見られ、特殊なセラミックでは人工的に得られます。圧電型(PE)加速度計は、慣性マスを圧電結晶に取り付けることによって圧電効果を利用します。受感素子が加速を受けると、この慣性マスが結晶に力を加え、
それによって応力が生じて電荷が出力されます。電極上で収集された高インピーダンス電荷信号は、測定のために内部または外部の電子機器によって調整できます。内部電子機器を備えた加速度計は、IEPE(Integrated Electronic PiezoElectric)として分類されますが、一般的には「電圧型」加速度計と呼ばれます。シグナルコンディショニングのために外部チャージアンプを必要とする圧電型(PE)加速度計は、「電荷出力型」加速度計と呼ばれます。

電圧型の圧電型(PE)加速度計には、シグナルコンディショニングのために内蔵小型電子機器が組込まれています。ICP®はPCB Piezotronicsの登録商標であり、Integrated Circuit Piezoelectricの略であり、PCBで
製造されたIEPE加速度計を示します。PCBはこの技術の開発に最も定評がある会社とされています。業界のセンサ、アナライザ、およびデータ収録装置メーカによって、ICP®/IEPEは標準として採用されています。
 

電圧型加速度計はすべて、安定化したDC電圧と2~20 mAの定電流センサ励起によって、単純な2線式で駆動されます。内蔵の電子機器は、圧電材料によって生成された高インピーダンス電荷信号を、トランスデューサ内で、使用可能な低インピーダンス電圧信号に変換します。出力は低インピーダンスなので、信号は長いケーブル距離を伝送でき、汚れのある現場やノイズの多い工場環境でもほとんど劣化することなく信号を使用できます。

電荷出力型の圧電型(PE)加速度計は、圧電素子から直接生成された高インピーダンス電荷信号を出力します。この加速度計は、高インピーダンス電荷信号を測定に適した低インピーダンス電圧信号に変換するために、外部チャージアンプまたはイン・ラインチャージコンバータを必要とします。これらのデバイスは、フィードバックコンデンサを備えた高入力インピーダンス、低出力インピーダンスの反転アンプを利用しています。 フィードバックコンデンサの値を調整すると、チャージアンプの伝達関数やゲインが変化します。
 

出力は高インピーダンスであるため、電荷信号は周囲環境からのノイズに非常に敏感であり、適切な測定のためにいくつかの重要な予防措置が必要です。トランスデューサと外部チャージアンプの間には、特別なローノイズ同軸ケーブルが必要です。このケーブルは、摩擦電気、または動きによるノイズの影響を減らすために(グラファイトによる潤滑などで)特別に処理されています。また、トランスデューサ、ケーブル、およびコネクタを、乾いた非常に清潔な状態に保ち、高い絶縁抵抗を維持することも重要です。電圧型加速度計の単純な動作と比較してこれらの予防措置は複雑なので、電荷出力型加速度計は一般に、電圧型加速度計の内部電子機器が故障してしまうような高温用途(250°F以上、すなわち121℃以上)に限って使用されます。

圧電型(PE)加速度計(電圧型と電荷出力型の両方)の最後の重要な特性は、AC挙動です。圧電材料は静的入力による電荷出力を保持することができません。言い換えれば、動的事象を感知するだけであり、したがってDC加速度の測定には使用できません。チャージアンプの電子機器の設計(内蔵または外付にかかわらず)により、測定信号の低周波AC結合が決まります。電圧型加速度計では、これは固定値です。電荷出力型加速度計では、外部チャージアンプを使用して、一般に設定を変更してAC結合を制御できます。圧電型(PE)加速度計の一般的な低周波性能は、1/2~数Hzです。

第2の変換方式は、ピエゾ抵抗効果を利用するものです。ピエゾ抵抗型(PR)加速度計は、加えられた機械的応力により電気抵抗を変化させる受感素子を用いて設計されています。自己生成型の圧電型(PE)受感素子とは異なり、ピエゾ抵抗型(PR)加速度計は電荷信号を生成せず、代わりに変動する抵抗を示すだけであり、変動する電圧として測定しなければなりません。ピエゾ抵抗型(PR)加速度計には通常、5~15 VDCの範囲の固定DC励起電圧が必要です。

ピエゾ抵抗型(PR)加速度計は、ホイートストンブリッジ構成において、金属ストレインゲージまたはシリコン抵抗器のいずれかのピエゾ抵抗材料を利用します。ピエゾ抵抗素子は通常、加速度に応じて曲がるカンチレバービームに接着されているため、抵抗が変化します。この変化する抵抗は、定常加速度に応答するため、ピエゾ抵抗型(PR)加速度計は真のDC応答を提供できます。衝撃信号の積分を可能にするDC応答は、ゼロシフトに対する低い感度と共に、ピエゾ抵抗型(PR)加速度計が衝突試験および衝撃用途において一般的に使用される主な理由です。

最後に、(可変)容量型(VC)加速度計は、加速度に対する電気容量の変化を感知して、付勢回路の出力を変化させます。受感素子は、差動モードで動作する2つの平行板コンデンサで構成されています。これらのコンデンサは、2つの固定コンデンサとともにブリッジ回路で動作し、構造体が加速すると発振器によって生成されるピーク電圧を変化させます。検出回路はピーク電圧を捕捉し、それが次に最終出力信号を処理するサムアンプに供給されます。

ピエゾ抵抗型(PR)加速度計と同様に、容量型(VC)加速度計は通常、4線式システムで動作します。1対の信号線/アース用と、1対の電源/アース用です。必要な励起電圧は、特定の機種およびメーカによりますが、通常は10~30 VDCの範囲の固定DC電圧です。

上記の例ではセンサ1つずつ手作りで組み立てられる例をご紹介しています。しかしながら、一部のメーカは、シリコンから大量生産モノリシックセンサを製造するために、半導体製造技術を応用しています。特にピエゾ抵抗型(PR)および容量型(VC)デバイスの特性は、小型化に適しています。小型化の結果は、MEMS(微小電気機械システム、Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれます。

シリコンウェハー上に機械的構造系を形成するには、エッチングやマスキングにより1枚のウェハーから大量に半導体チップを作りだす技術を応用しています。結晶方向に沿って抵抗を形成するとピエゾレジスティブ効果を有する特性を生かし、フルブリッジストレインゲージトランスデューサを、ミリメートルのオーダーで形成することが可能です。

単結晶シリコンは非常に強いです。そして、小さな体で自分の体重の数倍の重さを持ち上げるアリの強さによって説明されるように、材料の強さの物理により、小型化は全体的な性能に大きな利点をもたらします。減衰(ダンピング)も、小さいサイズの利点の一例です。光の波長程度の次元では、空気のように粘性の無い流体でさえも、有用な減衰力を発揮できるからです。非常に限られた温度範囲の液体減衰と比較して、空気減衰(エアダンプ)は温度によってはほとんど変化しません。

容量型(VC)加速度計は、カンチレバーを平板コンデンサと同様に構成して作成することもでき、最大帯域幅の臨界減衰に対する応答を調整するために同じ空気減衰の利点を得られます。一般に、アクディブ素子は、ハイブリッドマイクロエレクトロニクスの電子部品として扱うことができる頑丈なモノリシックアセンブリを作り出す層に、サンドイッチのように挟まれて保護されています。