加速度計の内部構造

結晶形状、せん断(シェア)、圧縮、曲げビーム構造

前回は、圧電型加速度計の基本的な機能と構造について説明し、理想的な性能の加速度計の出力は「直線」の挙動であることをお伝えしました。これは、振幅と位相、および振幅の直線性に関して平坦な周波数応答を
意味します。今回は、圧電型加速度計の内部受感素子構造の一般的な設計をいくつかご紹介します。圧電材料
(水晶またはセラミック)と形状(せん断、圧縮、反転圧縮、または曲げビーム)の両方について説明します。これらの設計は、ICP®加速度計または電荷出力型加速度計のどちらであっても適用可能です。

圧電材料としての水晶またはセラミックの選択は、製造の柔軟性、形状および長期安定性におけるトレードオフに左右されます。水晶には、パイロ効果がなく、長期出力安定性(自然状態で圧電効果有する)という固有の利点があります。セラミックと比較して、水晶の電荷出力は低いですが、高い電圧感度を有します。
さらに、水晶の圧電素子は特定の形状にしかカットできないため(図を参照)、受感素子の設計形状は制限されます。他方、セラミックは、プレート、ビームおよび環状リングのような種々の形状に機械加工または
成型することができ、成形後に圧電効果を生じさせるために分極されます。この利点により、さまざまなパッケージ要件を満たすための非常に柔軟な設計が可能です。セラミックはまた、非常に高い電荷出力を有し、
低ノイズの内部マイクロ電子チャージアンプ設計と互換性があります。いくつかの特別なセラミックは、900°F(482℃)までの高温で動作します。残念なことに、セラミックは水晶と比較して高い温度係数を有し、パイロ効果があります。


今日では、圧電型加速度計の最も一般的な内部構造は、せん断(シェア)構造です。せん断設計には、三方向せん断、平面せん断および環状せん断などの構成があります。基本的にせん断設計は、水晶を内部支柱に取り付けることによって水晶受感素子がベースストレイン入力および熱過渡現象からより良好に絶縁されるという点で、従来の圧縮設計よりもずっと優れています。せん断設計はまた、多くの場合、より低い横方向感度およびベースストレイン感度を示し、そしてより良好な熱安定性を有します。
 

せん断構造

加速度計の従来の圧縮設計では、プリロードされた慣性マスと、Xカット(下図参照)水晶素子(またはセラミック素子)を組み合わせました。シンプルで信頼性の高い圧縮設計の利点は、優れた感度と広い周波数範囲を使用可能にする高い共振周波数です。圧縮設計の欠点としては、ベースストレイン効果に対する感度と、ストレイン効果として現れる熱過渡感度が挙げられます。これらの欠点を克服するために、従来の圧縮設計をわずかに変更した反転圧縮設計が生み出されました。基本的に反転圧縮設計では、加速度計パッケージの
上部から圧縮受感素子を「吊り下げ」ています。この設計は、受感素子に対する望ましくないストレイン効果を軽減します。旧式のback-to-back基準加速度計は、校正用途にこの反転圧縮設計を採用し、上面が平らでネジが切られた状態で、加速度計を直接取り付けることができます。この校正用途でさえ、せん断設計が
圧縮および反転圧縮設計に取って代わり、現代の加速度計設計技術として殆どの場合に採用されています。
これらの理由から、圧縮設計と反転圧縮設計は両方とも事実上時代遅れになっています。
 

圧縮構造

曲げビームは、受感素子構造のもう一つの形状です。薄型、低コスト、および軽量設計であり、高出力ですが、耐衝撃性および熱過渡現象に関する問題のためにあまり使用されていません。非常に薄型の受感素子が必要な用途では、曲げビーム設計が依然として唯一の選択肢です。
 

曲げ構造

要約すると、現代のほとんどの加速度計は、せん断構造設計を採用しています。様々な形状を作成できる
セラミック結晶の柔軟性により、モーダルアレイ用の低価格の環状せん断型加速度計、精密な3方向せん断型汎用加速度計、超小型加速度計、そして900°F(482℃)の超高温用途などの、用途に応じた加速度計設計が可能になりました。せん断構造の加速度計は、横方向入力や熱過渡現象などによる誤った出力に対して、実験室や現場での使用において理想的な性能に近い、高感度、高分解能を発揮します。
加速度計には何百もの様々な機種があり、選択に迷う可能性がありますが、電話等で弊社にご連絡いただければ、ご用途に合った加速度計の選定をお手伝いします。
次回は、圧電型、ピエゾ抵抗型、容量型など、様々な種類の加速度計の変換メカニズムについて解説します。