電気化学ソリューションマガジン Vol.10

インピーダンス測定器の種類と特徴のご紹介

平素は弊社製品をご愛顧いただき誠にありがとうございます。
理化学計測部 電気化学チーム 燃料電池担当です。

徐々に気温も上がり、マスク生活も大変になる時期がやってきましたが、昨年メールマガジンを作成していた頃には一部地域とはいえ、未だに緊急事態宣言が発令される状況になっているとは考えもしていませんでした。
昨年と同じように5月末頃には解除される状態になるのか、今後のワクチンの普及によって、来年には仕事帰りに一杯行けるような状況が迎えられているのか、不安と期待もありますが何とか乗り越えていきましょう!
最近では暑い日の対策として“吸汗速乾”や“接触冷感”、なかには“電動ファン付き”のマスクなど、機能だけでなく見た目も損なわない商品があるようなので活用してみるのも良いかもしれませんね。

さて今回は、弊社によくお問い合わせをいただくインピーダンス測定を行うための計測器について、その種類と特徴についてご紹介させていただきます。

description  目次

  1. インピーダンス測定器の種類と特徴
  2. 無料オンラインセミナー開催予定のご案内(終了)
  3. あとがき

1.インピーダンス測定器の種類と特徴

近年、物性評価やデバイスの解析を行う際に、インピーダンス測定という手法が頻繁に用いられています。
インピーダンス測定にはいくつかの計測方法があり、それぞれの方法を採用した各種計測器が存在します。
今回はその代表的な計測器についてその種類と特徴についてご紹介します。

【1】FRA(周波数応答アナライザ)
FRAは高精度、高S/N比が特徴の装置になります。
主に電気化学におけるインピーダンス測定で使用されます。
FRAはインピーダンス値を求める方法として、単一正弦波相関法(SSC:Single Sine Correlation)と呼ばれるデジタル相関法を採用しています。この手法は基本振幅精度:0.1%、基本位相精度:0.1°を実現でき、周波数分析器の中でも比較的精度の高い測定結果を得ることができます。
高いS/N比が要求される外乱ノイズが多い測定系の場合において、多くの電気化学インピーダンス測定では、その実験環境上、ノイズに対して充分にシールドされた環境で実験を行うことが困難な場合も多くあります。その際FRAは有効な計測器となります。また、測定手法上、低周波域(10 μHz~1MHz)での測定にも適しており、これは電気化学分野の測定対象として着目されることの多い物性を見るために、必要な時間分解能に合致しています。
このようにFRAで用いられる測定法は電気化学測定用途では最もバランスのとれた手法でありますが、欠点としては単一周波数測定であるため、測定時間が長期化しやすいことが挙げられます。
○測定器の一例

フランス・BioLogic社電気化学測定システム(ポテンショ/ガルバノスタット)   launch

FRAとは 交流インピーダンス測定とは ナイキストプロット 等価回路

交流インピーダンス測定結果と等価回路

【2】LCRメータ
LCRメータは、自動平衡ブリッジ法を用いてインピーダンスを測定する機器です。
測定対象に単一周波数の交流電圧信号を印加して流れる電流から抵抗値を算出し、位相検波も行うことで、インピーダンス測定を行っています。
数100 kHz以上の周波数範囲で応答することが要求される、半導体等の電子物性評価のためのインピーダンス測定で非常に多く採用されています。
機器によってはこの測定時に、DCバイアス電圧/電流の印加も可能であり、100m***Ω~10M***Ωと幅広い抵抗測定範囲を有し、高速・高確度で測定できることが特長です。
代表的なLCRメータの、周波数範囲は20 Hz~100MHzであり、低周波数範囲(1Hz以下)の測定ができません。また、バッテリや燃料電池のような起電力を持っている電気化学デバイスに対して精度良く測定するためにはDCバイアス除去機能が必要となります。
○測定器の一例

東陽テクニカ 4990EDMSシリーズ
インピーダンスアナライザ  launch

LCRメータとは 全固体電池 インピーダンス測定  固体電解質 粒界抵抗とバルク抵抗

固体電解質の高周波インピーダンス測定例

2.無料オンラインセミナー開催予定のご案内(終了しました)

  • [1]誘電体・強誘電体特性評価ソリューション」(終了しました)
    • 開催日時:2021年6月10日(木)13:30~15:10
    • 開催方法:オンラインセミナー(Zoom開催)
    • セミナー概要:誘電率セミナー概要測定及び強誘電体の評価について、基本から測定上の注意点やノウハウを実際の当社計測システムを交えご紹介いたします。
  • [2]「全固体電池の概要と固体電解質のインピーダンス測定」(終了しました)
    • 開催日時:2021年7月27日(火)13:30~15:30
    • 開催方法:オンラインセミナー(Zoom開催)
    • セミナー概要:自動車をはじめ様々な製品で電動化が進む中、近年ますます注目を集めるエネルギーデバイスの一つに全固体電池があります。
      本セミナーではその第一線でご活躍されている東京工業大学 菅野・鈴木研究室の鈴木耕太准教授、堀智特任准教授をお招きし、全固体電池の概要やインピーダンス測定による評価例などについてご講演いただきます。

3.あとがき

今号も最後までお読みいただきありがとうございます。
本メールマガジンが少しでもみなさまのお仕事、ご研究のお役に立つことが出来れば幸いです。

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