ResiTest8300シリーズ 比抵抗/ホール測定システム(野村 研二 氏)

東京工業大学 細野・神谷研究室よって開発されたIGZO (InGaZnOx)。
この物質を次世代液晶ディスプレイの透明トランジスタとして採用すると大手ディスプレーメーカーが決めた。
野村研二氏は、ResiTest 8300のユーザーでもあり、所属する東京工業大学 応用セラミックス研究所 細野・神谷研究室で、透明と酸化物をキーワードとして新材料の設計と探索を進めている。ResiTest 8300の導入効果や使い勝手について、野村 研二氏に詳しく話を聞いた。

細野・神谷研究室の活動概要

-- 細野・神谷研究室(以下、細野・神谷研)における開発・研究の概要について教えてください。

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「ルーチンワークとして毎日のようにResiTest 8300を利用しています。」 (野村氏)

細野・神谷研では、酸化物を中心として人間の社会に役に立つ新しい「材料」を開発しようと研究を進めています。その中でも、透明酸化物半導体(Transparent Oxide Semiconductor: TOS)による電子デバイスの開発では、最先端の研究領域を開拓してきました。研究室の主テーマは「"透明な電子活性材料の創製─電子状態から探る新しい光・電子および 化学機能」です。生物において見られる「効率的な電子の伝達系」を、文字通り無機物の中に造り込めればと考えており、具体的には、大きなバンドギャップをもつ固体中の電子の動きを巧く制御して、新しい機能を実現しようとしています。

-- 細野・神谷研を運営されている細野秀雄教授は、半導体業界だけでなく一般メディアなどにもたびたび登場されており、数多くの画期的な新材料発見に携わっていることで有名ですね

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IGZO:TFTシート

中でも2004年にNature誌で発表された「透明なアモルファス酸化物半導体In-Ga-ZnO4(通称、IGZO)」によるTFT(薄膜トランジスタ)技術は、すでに実用化レベルにまで達し、国内の大手ディスプレーメーカーが2011年中にIGZOによるTFTを採用した液晶パネルの量産を始めると発表しています。IGZO液晶の生産ラインは、既存のアモルファスシリコンの生産工程に大きな投資をすることなく改良できることから、コストの面でもメリットがあると言われています。

ResiTest 8300の利用状況

-- ResiTest 8300をどのように利用していますか。

透明酸化物半導体をはじめとした研究試料のキャリア濃度などを測定するために ResiTest 8300 を使いホール効果を測定しています。特に基礎研究の段階では材料のキャリア濃度とキャリア移動度を測定することが極めて重要で、ResiTest 8300による測定が必須となります。

-- どのくらいの頻度で利用していますか。

研究の進み具合や段階によって多少異なりますが、使用頻度の高い時期であれば、ルーチンワークとして毎日のようにResiTest 8300を利用することになります。
現在、6人ぐらいの研究者が利用しているのですが、うまくローテーションしながら使っています。

ResiTest 8300の導入理由

-- Resitest 8300を導入した目的を教えてください。

基礎研究の段階では、低いキャリア濃度を正確にを測定できるかどうかが重要なポイントになります。しかし、DCホール測定(直流電磁場法)では低いキャリア濃度を測定するのには限界があります。
一方、ResiTest 8300のACホール測定(交流電磁場法)であれば、高抵抗かつ低移動度な材料のキャリア濃度をより正確に測定できます。 当研究室でも10年近くResiTest 8300を利用していますが、他に低いキャリア濃度を測定できる装置がないというのが現状です。
(注:ACホール測定を実現する「ACホール起電圧法」は、東陽テクニカの特許技術です)

使い勝手の良さを高く評価

-- ResiTest 8300の使い勝手はいかがでしょうか。

とても使いやすく、効率的に測定を行うことができるので、迅速に測定結果を分析できます。

-- 具体的にどのような点が使いやすいのでしょうか。

「操作がシンプル」、「サンプルを破壊せずに測定できる」、「測定温度を変えながら自動的に測定できる」、「メンテナンスが不要」という点を高く評価しています。

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「効率的に測定を行うことのできるので、迅速に測定結果を分析できます。」(野村氏)
写真:細野・神谷研究室に設置されているResiTest 8300

(1)操作がシンプル
サンプルをセットしたあとは、ソフトウェアのボタンをいくつかクリックするだけで測定を開始できます。細かい設定もなども、わかりやすい画面でマウスを使って簡単に設定できるのでだれでも簡単に利用できます。

(2)サンプルを破壊せずに測定
測定によってサンプルを破壊することはありません。ホール電圧の測定のために四隅に電極を取りつけますが、必要な面積はほんの一部であるため、問題なく同じサンプルをX線解析などの他の測定にそのまま使うことができます。

(3)測定温度を変えながら自動的に測定
温度依存性を測定したいとき、自動で温度をスイープさせながら測定ができるのがとても便利です。帰宅する前に温度を設定して測定を開始しておけば、翌朝すぐに測定結果を入手できるので、すぐに分析を開始できます。

(4)メンテナンスが不要
基本的に機器のメンテナンスは不要です。そのため、測定器側の都合で測定ができないようなことがほとんどありません。使用頻度が高い測定装置なので、メンテナンスフリーの感覚で使用できるのはとても助かります。また消耗品も試料に接続する微細なワイヤーぐらいなので、利用コストもほとんどかかりません。

安心して利用できる東陽テクニカのサポート

-- ResiTest 8300への要望などはありますでしょうか。

特に大きな要望というものはありません。あえて言えば、感度をさらに高めて、ノイズも低く抑えられるようになるとうれしいですが、これはResiTest 8300だけでなく測定器全般に言えることだと思います。

-- 東陽テクニカへの期待などあればお聞かせください。

もう10年近く利用しているので、電源系などのパーツの修理などをお願いする機会がありました。その都度、東陽テクニカが迅速に対応してもらえたのでとても助かりました。
東陽テクニカは幅広く専門的な測定器などを取り扱っており、サポートもしっかりしていると思っています。今後も、安心して測定器を利用できる高度なサポートを期待しています。

取材協力

国立大学法人東京工業大学 応用セラミックス研究所 細野・神谷研究室
※ 所属は取材当時の組織名です

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