直流電子負荷装置:選定に際して知っておくべき基本事項

直流電子負荷装置:選定に際して知っておくべき基本事項

電源装置やDC/DCコンバータ、バッテリー製品などの直流出力の製品開発において、その試験を行うために電子負荷装置は欠かせない設備の1つです。抵抗負荷では負荷が変動する環境を作れなかったり、逆に発熱によって負荷が変動したりして、意図するような試験を実施できないことがあります。それに対し電子負荷装置はプログラム可能なため、一定の負荷環境や変動する負荷環境をコントロールできます。そのため、電子負荷装置は意図する試験環境を作り出すために必須の設備といえます。本記事では直流電子負荷装置の基本的な動作と、選定に際しての注意事項についてご紹介します。

1. 直流電子負荷装置の4つの基本動作モード

直流電子装置は最近の製品であれば基本的には4つの動作モードがあります。それは定電流(CC)モード、定抵抗(CR)モード、定電圧(CV)モード、定電力(CP)モードの4つです。

定電流(CC)モード

電子負荷装置(および試験対象機器)の定格電流・電圧・電力の範囲内で、入力電圧に関係なくプログラムした設定電流で掃引します。試験対象の装置に電圧変動が生じるなど、どのような条件であっても、設定した電流が確実に出力されるように電子負荷装置が調整します。

定抵抗(CR)モード

電子負荷装置(および試験対象機器)の定格電流・電圧・電力の範囲内で、電子負荷装置は固定抵抗器のように動作します。入力電圧を検出し、入力電圧に比例する電流を掃引することで、抵抗値が一定の抵抗のようにふるまいます。定抵抗モードは電池の容量テストや電子機器の起動状態テストなどによく使用されます。

定電圧(CV)モード

電子負荷装置(および試験対象機器)の定格電流・電圧・電力の範囲内で、電子負荷装置はプログラムされた設定電圧を維持するように動作し、電圧の維持に必要な電流値を掃引します。

定電力(CP)モード

電子負荷装置(および試験対象機器)の定格電流・電圧・電力の範囲内で、電子負荷装置はプログラムされた設定電力で掃引するように動作します。入力電圧を検知し、設定された電力から適切な電流値を計算し、その電流量を掃引します。

定電圧(CV)モード利用例

定電圧(CV)モードは、直流電流源や燃料電池、バッテリー充電器などのテスト用としてよく用いられます。左図はバッテリー充電器のテストの際、電子負荷で複雑なバッテリーの動きを模擬する場合の例です。

2. 直流電子負荷装置の動作原理

ここでは、CCモードとCVモードの基本的な動作原理についてご説明します。

定電流(CC)モードの動作原理

右の図は、CCモードがどのように動作するかを示すための簡略図です。 測定対象デバイスからの電流は、パワーFETと電流シャント抵抗の両方に流れます。シャント抵抗の両端電圧は基準電圧と比較し、2つの電圧差はパワーFETのドレイン-ソース間の抵抗(RDS)を制御するために使用します。負荷電流が必要な設定電流よりも大きい場合、FETのゲート電圧を調整してRDSを増やして負荷電流を減らします。負荷電流が必要な設定電流よりも小さい場合、FETのゲート電圧を調整してRDSを減らし、負荷電流を増加させます。
実際の電子負荷装置では、VREFはデジタルアナログコンバーター(DAC)によって供給されます。ユーザーが設定しているCCの電流設定は、実際にはDAC出力電圧を設定して必要な定電流を生成しているのです。 CCモードの確度は、主にこの回路で使用されているデジタルアナログコンバーターの確度によって決まります。

定電圧(CV)モードの動作原理

右の図は、CCモードがどのように動作するかを示すための簡略図です。
CVモードでは、フィードバック信号は高精度の分圧器によって生成されます。この信号を再び基準電圧と比較し、コンパレータの出力によりパワーFETのRDSを増減します。これにより、基本的には電子負荷の入力インピーダンスを変化させて掃引する電流量に関わらず、電圧を一定に保つことができます。
CCモードと同様に、VREFは通常デジタルアナログコンバーターから供給され。DAC出力を変更することでCV値を変更します。

※ 本項記載の動作原理は、AMETEK Programmable Power社の電子負荷製品の場合です。メーカーにより動作原理が異なる可能性がありますので、ご注意ください。

3. 直流電子負荷装置を選定する際の注意事項

直流電子負荷装置を選定する際、単純にカタログの最大電圧・最大電流だけを見て選定すると、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。本項では選定に際してのいくつかの注意点についてご説明します。

まずは必要な電力から

右の図は一般的な電子負荷の最大負荷曲線です。電子負荷の場合、掃引できる最大電力=最大電圧×最大電流になっていない場合が多く、まずは必要な電力からモデルを選定していくことをお勧めします。
例えば、定格12V/30Aの電源やDC/DCコンバータをテストする場合、定格360 Wの電子負荷が必要と考えるかもしれません。しかし、実際にはほとんどの場合、電圧が12 Vの時に30 Aが必要なわけではありません。試験対象装置の電流出力が例えば12 V時に7.5 A、3 V時に30 Aだとすると、定格90W以上の電子負荷で十分です。

低電圧時の動作

最大負荷曲線の電圧が低いところに注目してください。一般的に直流電子負荷装置は低い電圧の領域において、ある電圧を境に0Vに近づくにつれて掃引できる電流値が小さくなっていき、実質使用できない領域となります。この電圧を最低動作電圧(または最小動作電圧、英語表記ではVmin/Imax)と言います。電子負荷を選定する際には、試験対象の機器がこの最低動作電圧より低い電圧になることがあるか、あるいはこの領域で試験をする必要があるかを十分に検討する必要があります。

周囲温度や時間

電子負荷装置には最大負荷を掃引できる周囲温度が意外と低い製品があります。カタログやスペックシートに最大負荷で掃引できる周囲温度の記載や、掃引電力と周囲温度の関係が何点か記載されている場合がありますので、よく確認しましょう。特に抵抗消費型の電子負荷装置の場合、電流を掃引することによって発熱するので、その発熱によって周囲温度が上がるので注意が必要です。
また、メーカーによっては最大負荷を維持できる時間が制限されている製品もあります。長時間試験など使用方法によっては確認が必要な場合があります。
なお、周囲温度や時間に関しては基本的に抵抗消費型の電子負荷の場合に考えるべき事項で、電力回生式の場合は動作温度の範囲において基本的に最大スペックまで使用できます。

抵抗消費型 vs 電力回生式

電子負荷装置には、掃引した電力を内部抵抗で熱消費する抵抗消費型と、掃引した電力を内部のインバータでAC電力に変換して系統側に戻す電力回生式があります。基本的には電力回生式の方が発熱や消費電力が少なく、コンパクトで場所を取らないというメリットがあります。ただし、電力回生式は系統に電力を戻すので、選定の際には社内の設備担当者と通じて電力会社との協議が必要です。

電力回生式のメリットはこちらのページをご参照ください

4. 直流電子負荷装置に関するTips

電子負荷を電流変調器として使用する際のサイジング

まれなケースですが、直流電子負荷を「電源のパフォーマンスを向上させる高速電流変調器」として使用する場合があります。この場合、直流電子負荷に求められる電力は電源の定格電力に対して非常に小さくて済みます。これは、電流が最大値のときに負荷の両端にかかる電圧が最小(1~2V以下)になるためです。負荷の両端にかかる電圧が最大のときは電流が非常に小さくなります。
一般的に、電流をゼロから最大値まで変調させる場合、最大の負荷電力は最大電圧×最大電流の1/4程度で、電流が変動している途中のおよそ中間の動作電流/電圧時に最大電力となります。

低い電圧でのテスト

前述の通り、直流電子負荷装置には最低動作電圧があり、それ以下の電圧では使用できません。その一方で、燃料電池の特性評価やコンピューターの電圧レギュレーター評価において、低電圧でのテストは一般的です。この制限を回避する方法は2つあります。1つ目は電源を直列に接続して電子負荷から見た電圧を上げることです。この方法は、負荷が一定の場合は問題なく機能しますが、負荷を急変させる場合はうまく動作しないかもしれません。多くの場合、電源が必要な過渡電流に応答できないからです。2つ目は必要な電流値より高い定格電流の電子負荷を選択することです。例えば、Vmin/Imax=1Vで定格100Aの製品なら0.5Vでは50Aですが、定格200Aの製品なら0.5Vでは100Aです。(※前項の図のような最大負荷特性カーブを持っている場合の計算です。)

参考資料

AMETEK Programmable Po」wer社のブログ
①「What are the 4 Types of Electronic Load Modes?」
②「How Electronic Loads Work」
③「Application Tips for Electronic Loads」
④「Choose the Right Electronic Load」

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