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経時変化する系におけるインピーダンス解釈の問題点

  I- はじめに  

アプリケーション・ノート#9([1])では、線形(および非線形)時不変系で実施したインピーダンス測定を取り扱っています。稼動中の電池や腐食電極のような電気化学系は、経時不変であることがまれです。経時変化することで得られるインピーダンス・グラフからは、等価な電気回路を使用して、間違った解釈および分析にいたることがよくあります。本書では、可変抵抗器を備えた、よく使用される電気的等価回路を用いて、そのような誤った解釈にいたる例を2つ示します。

 
II 経時変系のインピーダンスプロット

II.1 R1+R2(t)/C2回路(R2が増加)

稼動中の電池や腐食電極のような経時変化を伴う測定系は、逐次サンプルの状態が変化しているため、予測することができません。

図1に示すR1+R2(t)/C2回路([2])(1)を考え、次の関係に従い時間と共に増加する抵抗R2を考えます。

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インピーダンスは、1周期の正弦波信号を使って測定され、合わせて計算されます。インピーダンスは、1周期の正弦波信号を使って測定され、次の式によって与えられる時間tでの抵抗値R2を使用し、周波数fnで計算されます。

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t(fi)は、図上における1点の測定時間、つまり測定周波数の逆数です([3])。

周波数走査は、fmax → fmin(fmax = 10Hzおよびfmin = 10−3Hz)に従って実行します。周波数はすべて、10を底とする8点に対数分布しています。R1、R2、およびC2用のパラメータについては、図2の見出しを参照してください。

図2および3のシミュレートされたインピーダンスプロットは、低周波円弧の開始を示しています。図4に示す回路のインピーダンスでは、図1で示した回路の時変ナイキスト線図に類似した経時変化のナイキスト線図を示すことができます。

両方のグラフを、図5で比較しています。これは、経時変化を知らない測定者が、必要以上に複雑な等価回路を使いデータを間違って近似させようとする可能性があることを示しています。

 

II.2 R1+R2(t)/C2回路(R2が減少)

抵抗R2の第2の変化を、図6に示します。抵抗R2の値はこれ以降、次の式に従い、時間の経過と共に減少するものとします。

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図4の回路(R3 < 0およびC3 < 0)で、[4]が成立する場合、図8の回路はR1+C2/R2/(R3’+L3)(R3 > 0およびL3 > 0)に変換できます。

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図1: R1+R2(t)/C2回路
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図2: 回路R1+R2(t)/C2 (R1 = 50Ω、R20 = 500Ω、k = 10-5Ω s-2、C2 = 2 × 10-2F)および測定図のシミュレーション(●)から構成される瞬間的なナイキスト・インピーダンス線図(t = 0およびt = tmax)ドット・サイズは、時間の経過に伴い、増加します。
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図3: 図2の3次元表示
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図4: R1+C2/(R2 +C3/R3)回路
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図5: 経時変化する系の回路R1+R2(t)/C2 (●)のナイキスト・インピーダンス線図と経時変化しない系の回路R1+C2/(R2+C3/R3)のナイキスト・インピーダンス線図。R1 = 50Ω、R2 = 500Ω、C2 = 10-2F、R3 = 100Ω、C3 = 1F。
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図6: 経時変化する回路R1+R2(t)/C2および測定図のシミュレーション(●)から構成される瞬間的なナイキスト・インピーダンス線図(t = 0およびt = tmax)
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図7: 経時変化する系の回路R1+R2(t)/C2(_)のナイキスト・インピーダンス線図と経時変化しない系の回路R1+C2/(R2+C3/R3)のナイキスト・インピーダンス線図。R1 = 50Ω、R2 = 534:375Ω、C2 = 1:1 x 10-2F、R3 = -123.75Ω、C3 = -0.125F。
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図8: 回路R1+C2/R2/(R3’+L3)
 
III システムの定常性のチェック

III.1 Kramers-Kronig(KK)変換

KK変換を使用して求めたインピーダンスZKKを、図9に示します。ナイキスト・インピーダンスZおよびZKK図は、すべての周波数で類似しているわけではありません。

 

III.2 連続測定

2つの同じ測定を連続的に実施する方が、簡単です(図10)。ここでうまく測定するポイントは、周波数をfmax → fminのように減少させた後、すぐにfmin → fmaxのように増加させ、2つのインピーダンス測定を連続的に実施することです。(図11)。

図10および11に示した2つのインピーダンス図は異なっていますが、それは研究対象のシステムが時間的に変化しているためです。

 
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図9: R1+R2(t)/C2回路の測定されるナイキスト線図のシミュレーション(●)と、KK変換を使用して得られたナイキスト線図()
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図10: 回路R1+R2(t)/C2のシミュレートされたナイキスト線図(走査fmax → fminに周波数を掃引し、インピーダンス測定を実施)
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図11: 回路R1+R2(t)/C2のシミュレートされたナイキスト線図(走査fmax → fmin → fmaxを使用して2つの連続したインピーダンス測定を実施)
 
  IV 結論  

実験結果を解釈する前に、測定対象物の不変性をEISでチェックすることは、非常に重要です。時間の経過に伴って電気化学系が変化する場合は、インピーダンスプロットの複雑性が増し、実験結果を解釈するために選択する等価回路が不必要に複雑になる可能性があります。

東陽テクニカでは、経時変化するサンプルのインピーダンスを3D(実数軸・虚数軸・時間軸)でプロットし、ある瞬間のインピーダンスデータを決定・解析するためのソフトウェアを開発しました。
詳細は、下記のリンクをご確認ください。


Z-3D 3Dインピーダンス解析ソフトウェア

 
  参考文献:  

[1] アプリケーション・ノート#9.Linear vs. non linear systems in impedance measurements.
www.bio-logic.info/potentiostat/notesan.html.

[2] Z. STOYNOV and B. SAVOVA-STOYNOV, J. Electroanal.Chem.183, 133 (1985).

[3] F. BERTHIER, J.-P. DIARD, A. JUSSIAUME, and J.-J. RAMEAU, Corrosion Science 30, 239 (1990).

[4] J.-P. DIARD, B. LE GORREC, and C. MONTELLA, Cin´etique´electrochimique, Hermann, Paris, 1996.

[5] アプリケーション・ノート#15.Two questions about Kramers-Kronig transformations.
www.bio-logic.info/potentiostat/notesan.html.

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