膝周囲骨切り術 症例紹介シリーズ Vol.1
豊川市民病院 裵 漢成 先生

『術前計画に勝る手術は実施し得ない。
 複数の柔軟な術前プランを周到に用意すべき。
 mediCAD は迅速かつ正確に術前計画が作成可能である。』

豊川市民病院 整形外科医長 / リハビリテーション科部長代行

裵 漢成(はい ひろなり) 先生

脛骨関節面傾斜が非生理的になることを忌避し、大腿骨遠位も含め下肢全体で矯正するaround the knee osteotomyが行われる機会が増えてきています。ただ、大腿骨遠位骨切り術は高位脛骨骨切り術と異なり、そのヒンジ部近傍の軟部組織の支持性が乏しく、術中及び術後の画像評価で比較的高頻度にヒンジ部骨折が存在していると報告されています。当院では、骨切りに際して小工夫することで骨折リスクを減らせる可能性を報告し、かつ初期にヒンジ部骨折を生じなければ、術後3 日目からの早期荷重リハビリが大腿骨遠位骨切り術後でも可能だったと過去にその良好な結果を報告しています1)

『術前計画に勝る手術は実施し得ない』ため、複数の柔軟な術前プランを周到に用意すべきです。mediCADは迅速かつ正確に術前計画が作成可能であり、かつ、計画立案中に下肢アライメントの変化をリアルタイムに確認できる点で大変有用であり、手放せない必需品です。

術前計画の一例

当院で行った大腿骨遠位骨切り術患者の術前計画についての実例を供覧します。

症例は52歳女性です。両側手術施行した症例ですが、ここでは左下肢についてその計画方法などを示します。術前のHKA(hip-knee-ankle)角は内反8.7°であり、荷重軸は5.9%MAを通過しています。術後の荷重軸が62.5%MAを通過するためには、矯正量として12.1°程度必要と推測されます。しかしmMPTAは86°であり、脛骨単独の矯正を行う場合mMPTA>95°となってしまうことが予想されるので、この時点でDLO(double level osteotomy)を選択肢として検討します。さらにmLDFAが90.8°で大腿骨側にも内反膝の原因があるため、この症例はDLOの良い適応であると判断しました。

DLOを選択した場合、当院ではより生理的な関節面傾斜の獲得を目指し、DLO術後の荷重軸はHKA外反3 ± 1°、mMPTAは92 ± 2°、mLDFAは86 ± 2°に近似するように大腿骨と脛骨に矯正を分散して術前計画を行います。術後にJLCA(Joint line convergency angle)が変化することを勘案して、Fujisawa pointである62.5%MAより若干under correctionになることを許容して術前計画を作成しています。大腿骨側の作図方法ですが、術中の指標としては透視で膝蓋骨の位置を確認するのが一番簡便であり、再現性も高いと考え、骨切り線の遠位を膝蓋骨上縁の高さを基準として設定しています。

ヒンジ部については大腿骨内側顆の頂点をヒンジポイントとして設定しています。一般的に言われる位置よりも大腿骨遠位内側の骨皮質から少し離れた外側骨皮質寄りになりますが、術中も透視で確認が容易であり、再現性が高く、奥に切りすぎない事で術中骨折の危険性が減らせると考えています。以上により、遠位骨切り線とヒンジ部が決定されるので、目的の矯正角度で近位骨切り線を大腿骨外側骨皮質へ伸ばし、遠位-近位骨切り線の奥行き長と、外側骨皮質部における骨切り幅を計測します。

本症例では図1に示す通り大腿骨側で約4°~5°、脛骨側で7°としてDLOの術前計画を作成しました。大腿骨側はclosed correctionを行うので、手技的なゆらぎも勘案し、おおよその角度で計画し、実際の手術状況次第でopen correctionを行う脛骨側で微調整して全体を整えています。
 

 

図1. mediCADによるDLO術前計画
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ここで重要なことは、許容する角度変化についても簡単な別の術前計画を作成しておくことです。具体的には、大腿骨側の矯正量が大きくなるのを許容するのか、小さくなるのを許容するのかを先程の下肢全長の術前計画から決定しておく事です。その場合、脛骨側をどのように変更するのかも十分検討しておきます。この症例では、大腿骨の骨切り幅を4mmにすることで、術野での再現性が高められると判断し、大腿骨を5度寄りに矯正し、その分を脛骨の矯正を弱めるように計画しています(図2)。

術後半年後の下肢アライメント評価を図3および表1に示します。患者の経過も良く、杖なし独歩で術後27日目に無事に退院されています。  

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表1. 術前・術後の下肢アライメント

  術前 術後
mLDFA 90.8° 85.2°
mMPTA 86° 92.1°
HKA angle 8.7° (内反) 4.2° (外反)
JLCA 3.9° 2.7°

大腿骨遠位骨切り術の術中における工夫点

実際の手術操作で気をつけている点が2つあります。1つは外側骨皮質の骨切り幅ですが、矯正角度に1°前後の変化が術中の手技で起きる可能性があります。従って、症例に応じて実際の矯正量が大きくなった方がいいのか、小さくなった方がいいのかを事前に想定し、術野で骨切り幅をノギスで計測し、骨切りガイドとなるキルシュナー鋼線を近位に2本、遠位に2本挿入しています。2つ目はヒンジ部に至る骨切りです。目標のヒンジ部まで骨切りを行いますが、うまく骨切り面が閉鎖しない時は無理に力を加えて閉じず、そのまま閉じ切らない間隙をそっと寄せたまま保持して、改めてその間隙に当初のヒンジ部までボーンソーを 進め追加骨切りを行います. この操作を繰り返すことで、大腿骨後方骨皮質の切り残しが確実に除去されていくので、確実に閉鎖することが次第に可能となります。

当院における大腿骨遠位骨切り術

前述の方針により当院で実施した大腿骨遠位骨切り術48 膝について検討すると、術前計画の平均矯正角度は5.3 ± 1.5°(10-3°)、術後のmLDFA 変化で評価した実際の平均矯正角度は5.1 ± 0.9°(10.1-2.3°)、術前計画と術後の計測値との平均誤差は0.1 ± 1.0°でした。なお、顆部の頂点を越えて骨切りがなされた症例は1例のみでした。また、術後3週目に当院のCT (SOMATOM Definition AS+, Siemens, Erlangen, Germany)を用いて構築した3次元画像によって、明確にヒンジ部周囲骨折の存在が指摘できたのは3膝(6.2%)でした。それら骨折例について検討すると、1例は予定したヒンジ部まで骨切りが到達していませんでした。残り2例はヒンジ部近傍の大腿骨後方骨皮質が遺残してその手前側より先に閉鎖していた症例でした。 mediCADによる術前計画と術中の工夫により、矯正量の目標設定と手術による実際の矯正が正確に実施できたと言えます。

参考文献:
1) Hai Hironari et al.(2020), “Preliminary Evaluation of the Efficacy of Postoperative Early Weight-bearing Rehabilitation Protocol for Patients after Double-level Osteotomy” Prog Rehabil Med.