整形外科デジタルプランニングツール mediCAD
兵庫医科大学様 導入事例

『多様化する膝周囲骨切り術に術前計画は欠かせない。
 mediCAD があれば簡単でスピーディーに
 術前計画が立てられる。』

兵庫医科大学 整形外科学教室 講師

中山 寛(なかやま ひろし) 先生

日本国内において40歳以上の変形性膝関節症の有病者数は2500万人に達し、さらに80歳以上の女性においては80%以上が変形性膝関節症であると言われています。その治療法の1つである膝周囲骨切り術は術後に高いアクティビティの継続が可能であり、近年、症例数が飛躍的に増加しています。本学では膝周囲骨切り術を年間200症例以上行っていますが、多様化する膝周囲骨切り術に術前計画は欠かせません。簡単でスピーディーに術前計画が立てられるmediCADは必需品です。

多様化する膝周囲骨切り術

現在、膝周囲骨切り術にはさまざまな術式があります。以前は高位脛骨骨切り術(high tibial osteotomy:HTO)が主流でしたが、変形部位で矯正することの重要性が指摘されるようになり、遠位大腿骨骨切り術(distal femoral osteotomy:DFO)や大腿骨・脛骨の骨切りを同時に行うdouble level osteotomy (DLO)も選択肢として加わってきました。さらにHTOの中でも内側を開いて矯正するopen wedge HTO(OWHTO)や、外側から骨を楔状に切り短縮させて矯正するhybrid closed wedge HTO(Hybrid CWHTO)、粗面下で骨切りするdistal tuberosity osteotomy(DTO)が存在し、さまざまな変形に対し膝周囲骨切り術を適応できるようになっています(図1)。

図1. 膝周囲骨切り術の種類

選択肢が増えることは喜ばしいことですが、その分どの術式を選択するかが非常に重要となります。術式を決める際に必要なのはまず患者の変形の状態をよく知ることです。そのため大腿骨側の変形の指標であるmLDFA(mechanical lateral distal femoral angle)や、脛骨側の変形の指標であるmMPTA(mechanical medial proximal tibial angle) などの下肢アライメント計測をレントゲン画像上で行います。また、どの程度の矯正で変形が改善されるかを術前に予測することも必要なため、膝周囲骨切り術において術前計画は非常に重要です。

mediCAD による術前計画

本学では術前計画にmediCADソフトウェアを使用しています。膝周囲骨切り術用の専用モジュールが用意されているため、ステップに沿って進めていくだけで簡単に術前計画を作成することが可能です。mLDFAやmMPTAなどの下肢アライメント計測はもちろんのこと、骨切りラインやヒンジポイントを設定しさまざまな骨切りのシミュレーションを実施することができます(図2(a))。矯正角度を調整する際は下肢アライメントの変化をリアルタイムに確認できますので、下肢全体のバランスを考慮した術前計画をスピーディーに作成できます。また、操作手順をムービーで表示してくれるチュートリアル機能があり、初めて使用する人でも簡単に操作することができます(図2(b))。

(a)骨切りライン・ヒンジポイントの設定

(b)操作手順を示してくれるチュートリアル

図2.mediCADの機能

術前計画の例

Double level osteotomy(DLO)を例に、mediCADによる術前計画の流れを紹介します。画像は両下肢立位全下肢概観を使用します。正確な管球位置と距離、膝蓋骨を正面中央に合わせることが重要です。

①OWHTOのみでシミュレーション

まずはmediCAD のステップに沿って下肢アライメントを計測します(図3)。 次にOWHTOをシミュレーションします。本症例の場合Hip-Knee-Ankle(HKA)角を3°外反、%MA 62.3% とすると、矯正角度は16.27°、開大距離は17mmとなります(図4)。OWHTOの場合、10°、10mm以上の開大角は膝蓋骨低位を誘発し、将来的な膝蓋大腿関節症につながるため、OWHTOのみでの対応は避けた方がいいと考えます。また、比較的大きな矯正角度を許容できるHybrid CWHTOを選択したとしても16.27°の矯正角度により術後のmMPTAは95.9°となります。活動性が高く、比較的若い症例においては関節面傾斜が引き起こす関節面shear forceによる問題を避けるべきであるため、DLOを考慮します。実際、本症例ではmLDFA > 90°と大腿骨側にも変形の原因が存在します。

図3.下肢アライメント計測

図4.OWHTOのシミュレーション

②DLO(OWHTO+DFO)のシミュレーション

DLOにおいてはまずDFOのシミュレーションを行います。内反膝に対するDFOは外側closed wedgeで行います。3mm以下のwedge幅でのclosedは煩雑となるため、最低でも4mmのwedgeを確保する必要があります。そのため術後のmLDFAを正常値下限である85°に設定します。本症例では6.24°の矯正を大腿骨遠位で行います。この時のDFOのwedgeは5mmとなります。DFO後のアライメントはHKA角術前12.6°内反から6.9°内反まで矯正されます(図5)。

図5.DFOのシミュレーション

次にOWHTO をシミュレーションします。
図6(a) 術後のアライメントをHKA角0°とすると、開大距離は8mm、mMPTAは87.3°、%MAは48.8%となります。
図6(b) 術後のアライメントをHKA角2°外反すると、開大距離は10mm、mMPTAは89.2°、%MAは57.3%となります。

図6.DLOのシミュレーション

このように術後パラメータと術後下肢アライメントの関係を随時シミュレーションし、関節鏡所見と合わせ、症例に合った術前計画を行いますが、この作業の際にmediCADは非常に有用です。本症例はHKA2°外反を選択しDLOを行いました。術後1年時のパラメータはmLDFA 86°、mMPTA 89.6°、HKA角2.1°外反、%MA 56.4%とほぼプランニング通りとなっています(図7)。本症例では粗面下骨切り術を選択しています。

図7.術後1年時の下肢アライメント

mediCADは大腿骨、脛骨のtorsion(回旋)の計測が可能であり、さらに3Dでのシミュレーションも容易となっているため、複雑な症例においてより効果を発揮します(図8)。

図8.Torsion計測、3Dシミュレーション

今後の展望

我が国は超高齢化社会に突入し、活動性の高い高齢者も増加しています。人工膝関節置換術では術後のスポーツ活動にも制限があります。今後、膝関節軟骨、半月板などの再生医療のさらなる発展とともに、膝周囲骨切り術は変形性膝関節症の手術療法として核になると考えます。