Lake Shore Cryotronics Inc.(レイクショア / USA)
フラックスメータ 480型
480型は、様々なセンシングコイルに対応できる マイクロプロセッサ制御の高精度積分型フラックスメータです。内蔵アナログ積分器の動作の最適化によりドリフトを大幅低減し、高速パルスからゆっくりとした立ち上がりの測定まで様々な磁気測定を精度よく行えます。
株式会社東陽テクニカ 理化学計測部
phone03-3245-1103
Mail:keisoku[at]toyo.co.jp
特長
- 5 3/4 桁表示
- 低ドリフト
- 自動ドリフト補正(2 段階)
- 高速ピーク捕捉(~ 2 μ秒立ち上がり)
- GPIB・RS232C・リレー・アナログ出力
- カスタムコイル10 個のパラメータを登録可
- DC およびAC 磁界計測(~ 50kHz)
- 磁気モーメント(Wbcm)・磁位(A)の測定
- コンパレータ機能
480 型は様々なセンシングコイルに対応できる、マイクロプロセッサ制御の高精度積分型フラックスメータです。本機のアナログ積分器は、柔軟度が高く、仕様的にも優れており、高速パルスからゆっくりとした立ち上がりの測定まで、様々な磁石の磁気測定で効果を発揮します。内蔵のマイクロプロセッサで積分器の動作を最適化することにより、ドリフトの大幅低減に成功しました。さらに480型は、「マニュアル操作」でも、高速応答が求められる「自動計測システム」にも十分対応できます。
フラックスメータは、ガウスメータの機能を補完する計測器です。ガウスメータはピンポイント部分の磁束密度を計測しますが、フラックスメータでは、巻いたコイルの内部を通過する磁束量を測定します。コイル面積の入力により、ガウスメータと同様に磁束密度の測定もできます。
仕様
測定部仕様
- 入力数:
- 1
- 入力形態:
- 2線式、グランドリファレンス
- 入力抵抗:
- 100kΩまたは10kΩ選択可
(高抵抗コイル利用の場合、0Ωも設定可)
注)大部分のアプリケーションでは100kΩが最適です。入力抵抗100kΩの時、ドリフト性能がより向上します。10kΩの時には、測定感度が高くなります。
- 最低入力電圧:
- 60V
- 入力耐電圧:
- 100V
警告)60~100Vの入力では計測器を破壊しませんが、他の計測器を損傷したり、作業者に怪我を負わせる可能性があります。
- 読みの更新レート:
- 5回/秒(ディスプレイ上)、30回/秒(GPIB、RS232C)
DCモード(静磁界の計測など)
- 測定分解能:
- 5 3/4桁以内
- 積分器静電容量:
- 1μF(公称値)
入力抵抗 | 100kΩ | 10kΩ | ||
---|---|---|---|---|
レンジ | 300mVs | 30mVs | 30mVs | 3mVs |
分解能 | 0.001 mVs |
0.0005 mVs |
0.0005 mVs |
0.0005 mVs |
- 確度:
- オフセット確度:±10μVs±DC積分器ドリフト
ゲイン確度:読みの±0.25%
(最大変動率<10Vs/秒)
- 最大dφ/dt:
- 20μVs/分
- 最小dφ/dt:
- 60Vs/秒
- 積分器ドリフト:
- ±1μVs/分、0.0004%フルスケール/分(300mVsレンジにて)(100kΩ入力抵抗で温度一定の場合)
DCピークモード(永久磁石の磁力評価、着磁パルスのピーク値計測など)
- 測定分解能:
- 4 3/4桁以内
- 積分器静電容量:
- 1μF(公称値)
入力抵抗 | 100kΩ | 10kΩ | ||
---|---|---|---|---|
レンジ | 300mVs | 30mVs | 30mVs | 3mVs |
分解能 | 0.01mVs | 0.001mVs | 0.001mVs | 0.001mVs |
最小読み値 | 0.05mVs | 0.005mVs | 0.005mVs | 0.005mVs |
- 確度:
- オフセット確度:±100μVs±DC積分器ドリフト
ゲイン確度:読みの±5%(最大変動率<10Vs/秒)
- 最大dφ/dt:
- 20μVs/分
- 最小dφ/dt:
- 60Vs/秒
- 読みの更新レート:
- 通常レートの1/4に減少
ACモード(交番磁界の実効値計測など)
- 測定分解能:
- 4 3/4桁以内(30μVレンジでは3 3/4桁に減少)
- 積分器静電容量:
- 0.1μF(公称値)
入力抵抗 | 100kΩ | 10kΩ | ||
---|---|---|---|---|
レンジ | 30mVs | 3mVs | 300μVs | 30μVs |
分解能 | 0.001mVs | 0.0001mVs | 0.01μVs | 0.01μVs |
最小読み値 | 3.000mVs | 0.3000mVs | 30.00μVs | 3.00μVs |
- 周波数応答:
- 2Hz~50kHz
- 確度:
- 読みの±1%±10μVs(サイン波で10Hz~10kHz)
読みの±5%±10μVs(サイン波で2Hz~50kHz)
- 積分器ドリフト:
- 該当しない
ACピークモード(モータ磁束の正・負ピーク値、高速着磁パルス計測など)
- 測定分解能:
- 3 3/4桁以内
- 積分器静電容量:
- 0.1μF(公称値)
- 入力抵抗:
- 100kΩ
レンジ | 30mVs | 3mVs | 300μVs |
---|---|---|---|
分解能 | 0.01mVs | 0.001mVs | 1μVs |
最小読み値 | 0.01mVs | 0.001mVs | 5μVs |
- 確度:
- 読みの±5%±10μVs
(サイン波で10Hz~10kHz)
読みの±10%±10μVs
(サイン波で2Hz~50kHz)
- 読みの更新レート:
- 通常レートの1/4に減少
フロントパネル
- ディスプレイ:
- 20文字2行、蛍光表示管
- ディスプレイ分解能:
- ±5 3/4桁以内
- ディスプレイ更新レート:
- 5回/秒
- 表示単位:
- VS、WbN、Vsφ、Wbφ、T、Wbcm、A、%
- 表示の乗数:
- p、n、μ、m、k、M、G
- アナンシエータ:
- AC AC入力信号
DC DC入力信号
∧∨ 正・負のピーク
R リモート動作
♪ アラームオン
- キーパッド:
- 21個のフル動作キー
インターフェイス
- GPIB:
- SH1、AH1、T5、L4、SR1、RL1、PP0、DC1、DT0、C0、E1
- RS232C:
- DA-9コネクタ、ボーレート9600
- 外部リセット形式:
- 接点を閉じる
アラーム
- アラーム数:
- 2
- アラーム設定:
- Hi、Lo点を設定、Hi-Lo内か外か判定、可聴音出力可
- アクチュエータ:
- ディスプレイ・アナンシエータ、発信音、リレー
リレー
- リレー数:
- 3
- 接点:
- ノーマルオープン(NO)、ノーマルクローズ(NC)、コモン(C)
- 接点定格:
- 30VDC(@2A)
- 動作:
- 3番目のリレーは、HiとLoのアラームに連動。アラームの状態は表示しない。主導操作可能。
- コネクタ:
- 脱着式端子ブロック
モニタ・アナログ出力
- スケール:
- ±3V=±Vsレンジのフルスケール
- 確度:
- 読み値の±1%±10mV(DC~10KHz)
読み値の±5%±10mV(10KHz~50KHz)
- 最小負荷抵抗:
- 1kΩ
- コネクタ:
- 脱着式端子ブロック
コレクト・アナログ出力
- スケール:
- 設定自在
- レンジ:
- ±10V
- 分解能:
- 0.3mV
- 確度:
- ±2.5mV
- 最小負荷抵抗:
- 1kΩ
- コネクタ:
- 脱着式端子ブロック
一般仕様
- 使用時周囲温度:
- 15~35℃(規定確度を保証)、10~40℃(確度仕様を減じる)
- 電源仕様:
- 100,120,220,240VAC,+5%~10%、50または60Hz、20W
- 大きさ:
- 217mm(幅)×90mm(高)×317mm(奥)、ハーフラックサイズ
- 重量:
- 3kg
- 承認:
- CEマーク
アクセサリ
- RM-1/2:
- ラックマウントキット
(フラックスメータ1台を482.60mmラックにて)
- RM-2:
- ラックマウントキット
(フラックスメータ2台を482.60mmラックにて)
- 106-739*:
- メイティングコネクタ付き端子ブロック(8ピン、2個組)
プローブ・コイル(別売)
- FNT-6R04-100:
- 磁界測定用プローブ(100cm2)
- FNT-5P04-30:
- 磁界測定用プローブ(30cm2)
- FH-2.5:
- ヘルムホルツコイル(直径63.5mm)
- FH-6:
- ヘルムホルツコイル(直径152.4mm)
- FCBL-6:
- PROM付きケーブル(183mm長)
特注のプローブおよびコイルを制作いたします。
ご相談ください。
*480型本体に添付されています。
オプション
フラックスメータ 480型用 コイル・磁界測定プローブ
型名 | FH-2.5 | FH-6 | FH-12 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
内径 | 63.5mm(2.5") | 152.4mm(6") | 304.8mm(12") | |||
コイル抵抗(概算値) | 35Ω | 110Ω | 140Ω | |||
使用温度 | 10 ~ 40℃ | |||||
コイル定数(概算値) | 0.013weber・cm/volt・sec | 0.016weber・cm/volt・sec | 0.047weber・cm/volt・sec | |||
入力抵抗 | 10kΩ | 100kΩ | 10kΩ | 100kΩ | 10kΩ | 100kΩ |
レンジ(概算値) | 390μWb・cm | 3.9mWb・cm | 480μWb・cm | 4.8mWb・cm | 1.4mWb・cm | 14mWb・cm |
39μWb・cm | 390μWb・cm | 48μWb・cm | 480μWb・cm | 140μWb・cm | 1.4mWb・cm |
型番 | FNT-6R04-100 | FNT-5P04-30 | ||
---|---|---|---|---|
エリア・ターン(概算値) | 100cm2 | 30cm2 | ||
コイル抵抗(概算値) | 6.5Ω | 110Ω | ||
平均コイル直径 | 1.04cm | 0.39cm | ||
周波数レンジ | 10kHz | |||
使用温度 | 10 ~60℃ | |||
入力抵抗 | 10kΩ | 100kΩ | 10kΩ | 100kΩ |
DCレンジ | 30mVs(3テスラ) 3mVs(300m テスラ) |
300mVs(30テスラ) 30mVs(3テスラ) |
30mVs(10テスラ) 3mVs(1テスラ) |
300mVs(100テスラ) 30mVs(10テスラ) |
100cm2 磁界測定プローブ
ほとんどの磁界計測で用いることができます。
注)プローブの付け根にプリントされているLakeShore の商標の側へ向かって、磁束がコイルを貫く場合、「+Φ」と読み取ります。
30cm2 磁界測定プローブ
狭いギャップまたは磁界勾配が大きい場所では、コイル径の小さいプローブを使います。
注) プローブの付け根にプリントされているLakeShore の商標の側へ向かって、磁束がコイルを貫く場合、「+Φ」と読み取ります。
カスタムコイル製作の目安
コイルの感度は、コイル部分の磁束変化(d Φ /dt)により発生する瞬間電圧(Vcoil)で決定されます。コイルの巻数も感度を決定する上で大変重要で、巻数の増加に伴コイル感度も上昇します。感 度の高いコイルの製作は可能ですが、発生する瞬間電圧(Vcoil)が積分器の許容入力電圧(60V)を超えないように設計してください。着磁器の磁束測 定のアプリケーションでは、急激な磁束変化により、過大な瞬間電圧がコイル両端に発生しますのでご注意ください。磁束の最大変化率がわかれば簡単に瞬間電 が計算できます。
Vcoil ∝ N (d Φ/ dt) とB=Φ /A よりVcoil ∝ NA(dB/dt)
この場合、Vcoil:瞬間電圧(V)、N:巻数、A:コイル面積(cm2)、t:磁束の変化時間(s)、
dt Vcoil = NA(dB/dt)× 10-8となります
例:ある着磁器の磁束密度が0 ~ 3T(30,000G)まで1ms の時間で変化する場合、コイルの面積が1cm2 で、巻数が100 ターンとすると
Vcoil = (100 ×1cm2)×(30,000G/0.001s)× 10-8 = 30V
と計算できます。入力電圧の変化率が20μVs/分~60Vs/秒以内で設計してください。コイルの大きさも重要で、特に低磁界計測用のコイルは発生電圧 を測定できるレベルへ上昇させるために、直径1m 以上になる場合もあります。特に磁束密度を測定する場合には、コイルの面積に対して均等な磁界がかかることが求められます。磁界勾配が急である場合には、 コイルの口径をできる限り小さくする必要があります。均一な磁界でない場合には、コイル部分の平均磁束密度を表示します。
アプリケーション
フラックスメータ 480型 - アプリケーション例
磁石の手動特性試験
480 型では、表示の更新スピードが速く、明るく見やすいディスプレイを採用しているため、手動による磁石の試験や選別に最適です。特長の低ドリフト性能により、頻繁にドリフトの補正を行う必要がなく、しかも、リモート用端子にフットペダルを接続し、それを踏むだけで読み値をリセットできるため、両手を計測器 にではなく、作業に充てることができ、生産性を大幅に向上できます。さらに、アラーム(コンパレータ)機能により、Go/NoGoを判定し、発信音により 通知したり、リレーの開閉を連動させ、他の機器を駆動することができます。
磁石の自動特性試験
自動試験では、試験時間を最小に抑えることが求められます。480型では、標準装備のGPIBとRS232Cインターフェースにより、ほとんどの機能をコンピュータ制御できます。インターフェース使用時の読みの更新レートは30回/秒と速く、セットリング時間も高速で、しかも、読みのリセット状態から素早く復帰して新規の測定サイクルを開始できるなど、スループットを向上させる様々な機能を装備しています。また、リレーやアナログ出力により、コンピュータインターフェースを使わずに、自動試験システムを構築できます。
着磁パルスの磁界計測
着磁装置およびそのコイルフィクスチャは、着磁する磁性材料とその形状を考慮して、材料を完全に磁化できる「磁界の強さ」が得られるように設計されます。し かし、着磁装置が必要磁界を発生できる最小の電圧で運転される場合、着磁周期の最短化と着磁コイルの長寿命化が図れます。480型の高速ピーク捕捉機能により、同一着磁パルスの正・負両方のピーク磁界を捕捉・表示できるため、着磁装置設計時の必要最小電圧の決定に役立ちます。広帯域のモニタアナログ出力により、着磁パルスの波形を記録することもできます。また、着磁コイルフィクスチャの老朽度や温度変化、巻線間のショートなどの問題もピーク磁界を定期的に 計測することで、品質管理上のコイルの健全性を判定することができます。着磁の瞬間に高電圧が入力の両端に発生しますが、480型では、それらの発生電圧に対しても保護されています。
モータの磁束測定
ステータ部分に永久磁石を使用しているモータの磁束測定には、ロータ部分に巻線しそれをサーチコイルとしてフラックスメータに接続して測定を行います。ロータ部分に磁石を使用しているモータには、ステータコイルをサーチコイルとして磁束測定を行います。測定はそれぞれ、ステータやロータを回転させて行います。480型の高速ピーク捕捉機能により、回転時の正と負のピーク値をホールドできます。
磁気モーメントの測定
ヘルムホルツコイルと480 型フラックスメータにより、永久磁石の磁気モーメントが測定できます。ヘルムホルツ定数がわかれば、モーメントは正確に決定できます。未校正のヘルムホルツコイルでも、コイルパラメータの入力により信頼性の高いデータが得られます。VSMでも磁気モーメントを測定できますが、それらははるかに小さい値に限られます。
・磁気モーメントとは
磁気モーメント(m)は、平面の電流ループまたは磁化された物体によって、空間のある点において発生する磁界の強さ(H)の測定値です。CGS単位系では、磁気モーメントはemu で表され、SとN極間の距離と永久磁石の極の強さをかけたもので定義されます。多くの場合、双極子モーメント(j=Wbm)で定義されます。SI単位系ではモーメントは(Am2)で表され、導電ループ内の電流値にループ面積をかけたもので定義されます。
1 emu = 103 Am2
磁気モーメントは、永久磁石の様々な特性要素の決定のために測定されます。例えば、磁化率(M)は磁気モーメントを磁石の体積で割って算出できます。
材料分析
480 型の高分解能および低ドリフト特性により、分析測定にも利用できます。ノイズフロアが低いため、480型の高分解能が活かされます。設定自在のフィルタにより、読み値を安定に保つことができます。オートおよびマニュアルのドリフト補正機能により、積分器の低ドリフト特性を最適化します。さらに、標準装備のGPIBおよびRS232Cインターフェースにより、自動データ収録/コントロールが可能です。
磁位の測定
磁位は、永久磁石の内部磁界の強さ(H)を表します。電流が流れていない2点間の磁位差は、磁界の強さ(H)と比例します。ポテンシャルコイルによって測定された「磁界の強さ」と他の方法で測定された磁束密度により、磁石の第2象限内の動作点が決定されます。
480型フラックスメータにポテンシャルコイルを取り付けて、永久磁石上の2点間の磁位差を測定できます。このポテンシャルコイルには一般に、長くて薄いソレノイドが使われます。コイルの反対側をほぼゼロ磁界の状態にして、コイルのチップを磁石の極に対して垂直に置きます。2極間での読み値の差が磁位差となります。
・磁位とは
磁位は、磁界中にある2点間の磁化力の線積分値です。電気回路内の電圧と類似するスカラ値です。磁位のシンボルはUで、CGS単位系では、磁位をギルバート(Gb)または(Oe・cm)で表します。SI単位系では、Aで表します。
480型 リアパネル
1.電源入力部
2.GPIBインターフェイス
3.RS-232Cインターフェイス
4.端子ブロック
(リレーとアナログ出力)
5.プローブ入力部
(LakeShore製プローブ用)
6.ユーザコイル入力部