電気化学測定
基礎電気化学に関するFAQ
Qよく使用される作用電極はなんですか?
電気化学的な反応を調べたいとき、その現象が起こる電極が作用電極をなります。一般的には、白金、金、グラッシーカーボンなど耐食性の良い素材が選ばれます。同じ素材でも、使用するpH、溶媒等により電位窓が異なります。目的の反応が、電位窓内に収まっているか考慮する選択する必要が有ります。
Q作用電極は、購入後そのまま使用できますか?
ディスク作用電極は、出荷前にCV測定による検査を行ってから出荷されます。しかし、最良のボルタモグラムを得るためには、作用電極の表面がきれいであることは最も重要な要素です。ディスク型の作用電極ご使用の際には、適切な研磨処理を行ってください。
Q参照電極によく用いられる多孔質ガラス(バイコール®ガラス) は、強塩基の溶液でも使えますか?
バイコール®ガラスは(強)塩基性の溶液(pH≧10)で溶解してしまいます。塩基性の溶液に浸ける場合、耐薬性のあるあるセラミックフィルターの使用をお勧めします。
Qよく使用される参照電極は何ですか?
以下のような参照電極が一般的に使用されています。
参照電極 | 構成 | 電位 vs. SHE(@25℃) | 略号 |
---|---|---|---|
水素電極 | Pt-Pt|H2|HCl(a=1) | 0.000 | SHE |
飽和カロメル電極 | Hg|Hg2Cl2|飽和KCl | 0.2444 | SCE |
銀-塩化銀電極 | Ag|AgCl|飽和KCl | 0.199 | Ag|AgCl |
水銀-硫酸水銀(Ⅰ)電極 | Hg|Hg2SO4|飽和K2SO4 | 0.64 | Hg|Hg2SO4 |
Q参照電極の適切な位置は?
溶液中で三電極セルの測定を行う時、参照電極と作用電極の位置が離れていると、正確な測定ができないことがあります。参照電極と作用電極の間の抵抗(溶液抵抗)を出来るだけ小さくして電位降下(IRドロップ)を抑えることが重要です。そのために、以下の点を考慮してください。
(特に測定溶液そのものの抵抗が高い場合は注意が必要。)
- 参照電極ー作用電極間の距離は短く
- ルギン細管を使用し、細管の先端を作用極に近づける
細管の径の2倍程度の距離まで近づけることができますが、それ以上近づけると電極表面での電流や電位分布に影響が出てしまうことがあります。 - 電極面積の小さい微小電極の使用
電極面積が小さければ流れる電流は小さくなり、結果として電位降下の影響も小さくなります。
Q参照電極の性能を確認する方法はありますか?
参照電極(Ag/AgClの場合)の電位が正しいかを確かめる簡単な方法を下記に示します。
- 飽和塩化ナトリウム水溶液の入ったビーカーに、性能を確かめたい参照電極と同じタイプの参照電極を入れてください。
注意:この同じタイプの参照電極を基準とするため、この電極は、実際の実験には使用せずに、常に参照電極の溶液に保存されていることが望ましいです。 - 1.のビーカーに、性能を確認する参照電極を入れてください。
ポテンショスタットでOCVを測定することで簡単にチェックできます。 - テストする参照電極にWEのリード線を、基準となる参照電極(実験に使用していない)にCEとREのリード線を接続し、OCV測定を行います。その結果は2電極間の電位差となります。
電位差が10mV以上ある場合は、参照電極の内部溶液を交換し、同様の測定を行ってください。それでも電位差が小さくならない場合は、内部溶液だけでなく液絡部(バイコールチップまたはセラミックフィルター)を新しいものにしてください。
※定期的な交換をおすすめします
Q参照電極はどのように保存すれば良いのでしょうか?
Q参照電極の溶液部はどのように交換するのでしょうか?
チップは、付属のテフロン製の熱収縮チューブで保持されています。古いチューブを切り、電極の先端から取り外してください。
新しい熱収縮チューブを先端に差込み、新しいチップをピンセットを用いてガラス管の先に置いてください。
その際、チップはチューブに固定されていないため、 シールされるまでピンセット等で固定してください。ヒートガンを用いて熱風を当てチューブを収縮させます(チューブをヒートガンの熱風の発射部の中に入れ ないでください)。熱風はチップが固定されるまで当てます。(熱収縮チューブは縮むと半透明から透明に変わります)。
※※バイコールチップを扱う場合の注意点※※
- 手で直接触らないでください。手に付着している不純物により、詰りが生じる可能性があります。チップを交換する際にはピンセット等を用いてください。
- バイコールチップは参照電極に取り付けるまで、絶対に濡らさないでください。
Q非水溶媒の溶液で水系の参照極を使用することは可能でしょうか?
非水系溶媒に水系の参照極を使用することは可能です。
ただし、測定溶液への水の混入(汚染)を防ぐために、ダブルジャンクションの参照電極等を用いて、非水溶媒と参照電極中の水溶液を隔てる必要があります。
この場合、非水溶媒-水溶液間の抵抗が高くなることが多く、作用極と参照極間の溶液抵抗が増すため、注意が必要です。
上記問題を解決するためには、非水溶媒の参照電極を使用します。
非水系溶媒で用いられる参照電極は、以下の組成が代表的です。
0.1M 硝酸銀(AgNO3)+0.1M 過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)のアセトニトリル溶液に銀線を浸漬させることにより、Ag/Ag+の疑似参照極になります。この参照電極は、ベンゼンや、メタノール、アセトニトリル、DMFなどの非水系溶媒に使用することが可能です。
※電極の内部溶液は他の非水溶媒に変えることも可能です。
Q対電極(カウンター電極)の役割はなんですか?
対極は、3電極系の測定(作用電極、参照電極、対極)に於いて、作用電極での酸化還元反応と見合った反応が起こる電極で、作用電極と同等の電流が流れます。対極は安定であり電気化学的挙動がよくわかっている白金が一般的に使用されます。 また対極の面積が小さいと作用電極上の反応が制限されてしまうため、作用電極に比べ面積を大きくする必要があります。
電解重合等で対極での電解反応生成物が作用極での目的の反応に影響を及ぼす場合は、ガラスフィルターなどで対電極を隔離する場合が有ります。