技術資料

低温測定の基礎と温度センサー選定ガイド ~レイクショア製品で学ぶ極低温計測のポイント~

概要

本記事では、東陽テクニカが開催した「技術者のための30分オンラインセミナー「Lake Shore社製低温測定機器のご紹介」」の内容をもとに、低温計測の基礎知識とレイクショア社が提供する温度センサー/コントローラーの特徴をご紹介します。

Lake Shore(レイクショア)社の紹介:
温度計測の世界的リーディングカンパニー

Lake Shore(レイクショア)社は1968年創業、米国オハイオ州コロンバス近郊に工場を構える低温計測・磁場計測の世界的サプライヤーです。温度センサーだけでなく、磁気特性測定装置、材料特性解析システムなども手掛けており、東陽テクニカは1991年より日本の総代理店として販売・技術サポートを提供しています。

温度センサーの基本原理:4つの代表的な反応素子

温度センサーは、熱電力・電気抵抗・半導体接合・キャパシタンスなど、物理的な原理に基づいて温度を電気信号として取り出します。セミナーでは、特に次の4種類を詳しく説明しました。

  1. 熱電力を利用した「熱電対」
    2種類の金属を接合し、温度差に応じた電位差(熱起電力)を測定する方式で、工業用途で最も広く使用されています。構造がシンプルで丈夫な一方、極低温用途では精度が不足することがあります。

    熱電対

  2. 電気抵抗式(RTD / 金属、半導体)
    ・正の温度係数(PTC):金属材料。温度上昇により電子の散乱が増え抵抗値が増加。
     例:白金抵抗温度センサ、白金コバルト、ロジウム鉄
    ・負の温度係数(NTC):半導体材料。温度上昇によりキャリアが増加し抵抗値が減少。
     例:ゲルマニウム、Cernoxや酸化ルテニウム抵抗センサ
  3. 順方向電圧を利用したダイオード温度センサー
    シリコンダイオードの順方向電圧が温度に比例して変化する性質を利用。 温度1Kあたり約2mVの変化があり、信号が大きいため扱いやすいのが特徴です。
  4. キャパシタンスセンサー
    極低温領域(10mK 付近)で使用され、磁場の影響をほぼ受けない特性を持つ特殊センサー。

温度センサーの選定ポイント

セミナーでは、用途に応じたセンサー選びの重要性をご説明しました。

熱電対

  1. 使用温度範囲

    センサーによって適正範囲は大きく異なり、以下が代表例です。


    センサー種類と使用可能温度範囲(目安)
    酸化ルテニウム:10mK~40K
    ゲルマニウム:50mK~100K
    Celnox:100mK~420K
    白金抵抗:約14K~873K
    シリコンダイオード:14K ~500K
  2. 標準カーブの有無
    標準カーブがあるセンサは個々のセンサ間のばらつきが少なく、故障した場合などは予備のセンサに交換するだけですぐに未校正のセンサであっても標準カーブを使用して測定が可能です。
  3. 真空中の使用
    樹脂封止型はアウトガスが発生し高真空を損なう可能性があるため、SDパッケージなど金属/セラミック主体の構造が推奨されます。
  4. 放射線耐性
    半導体系(Siダイオード・Ge)は劣化しやすく、Celnox、酸化ルテニウム、白金系が優位です。
  5. 磁場の影響
    磁場中の精度が求められる場合はCelnox、酸化ルテニウムが適しています。

代表的なセンサーの特徴

  • シリコンダイオード

    シリコンダイオード

    • 使用温度範囲:広温度範囲(14K~500K)
    • 標準カーブ:あり
    • 磁場の影響:磁場下では大きな誤差が出やすい(特に液体窒素温度以下)
    • なお、個々のばらつきが少ないため、 センサー交換の互換性が高い。
  • Celnox

    Celnox

    • 使用温度範囲:100mK~420 Kと広範囲
    • 標準カーブ:なし
    • 放射線耐性:あり
    • 磁場の影響:極めて小さい(8T下でも誤差 -0.15% 程度)
    • ただし個体差が大きい → 購入時校正必須
  • 白金抵抗温度計

    白金抵抗温度計

    • 使用温度範囲:最大873 Kまで対応
    • 標準カーブ:あり
    • 放射線耐性:なし
    • 磁場の影響:T≧30K以上のときのみ推奨。
    • なお、30 K 以下では個体差が増え、校正が必要。応答が遅い(熱容量が大きいため)
  • 酸化ルテニウム

    酸化ルテニウム

    • 使用温度範囲:10mKといった極低温用の定番。ただし40 K以上では感度がほぼなくなるため、用途は限定される
    • 標準カーブ:あり
    • 放射線耐性:あり
    • 磁場の影響:小さい

    パッケージ構造:薄膜・基本型・応用型の違い

    温度センサーは同じ素子でもパッケージングによって性能が変わるため、用途に応じた選択が重要です。

    パッケージ構造

    • ベアチップ(薄膜):応答が最速、配線が切れやすく取り扱いが難しい
    • 基本型パッケージ:セラミック・サファイア基板上に実装、取り扱いやすく堅牢、真空向けにも適合
    • 応用型パッケージ:熱流入を抑制する構造(巻線やエポキシ充填など)、固体との接触測定、長時間安定性が向上。SDパッケージなどは数千時間の高温安定性を備え、高真空やハンダ付け条件にも対応します。

校正の重要性:精度は校正で決まる

セミナーでは「温度センサーの価格差は校正の有無による」と説明しました。校正の精度については以下のようなものがあります。

  • 標準カーブ使用(最も安価)
  • レイクショア校正(±5 mK精度)
  • NISTトレーサブル校正
  • 高温向け校正(900 Kまで対応)
  • 特に、Celnoxや白金抵抗の極低温~低温領域では個体差が大きいため校正が必須です。

温度コントローラー/モニター

温度センサーからの信号を受け取り、ヒーター出力を制御する温度コントローラーは低温測定の中心です。

  • 極低温向け(0.1K~対応):372/350シリーズ
  • 一般的な低温対応(0.3K~対応):336/335シリーズ
  • (2K~対応):325
  • 新モデル「346型」:100 W ×4系統(最大400 W)、10チャンネル標準、最大26チャンネルまで拡張可能、多点温度制御に最適。
    センサーとコントローラーの組み合わせにより、使用可能温度範囲が変わるため注意が必要です。

まとめ

低温測定の最適化は「センサー × パッケージ × 校正 × 制御」の総合設計

本セミナーでは、低温計測における原理からデバイス構造、校正、制御システムまで多岐にわたる内容が紹介されました。
低温測定の精度は、適切なセンサー選択(温度範囲・磁場・放射線)、パッケージ構造の理解、 校正の有無・精度、温度コントローラーとの組み合わせといった多数の要素が組み合わさって初めて成立します。
極低温から高温まで、さまざまな実験環境に対応するレイクショア社の製品は、研究者にとって信頼性の高い計測パートナーとなるでしょう。

本記事でご紹介した製品ラインアップ

  1. 温度センサ
  2. AC レジスタンスブリッジ 372型
  3. 4ch 低温温度コントローラ 350型
  4. 4ch 温度コントローラ 336型
  5. 2ch 温度コントローラ 335型
  6. 温度コントローラ 325型
  7. 次世代型温度コントローラ 346型(リリース予定。お問い合わせください。)

    詳しい製品情報・デモ測定・技術相談については、以下までお問い合わせください。

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