技術資料

【半導体特性評価】比抵抗/ホール効果の測定ノウハウとホール測定手法について

半導体の基本

日常生活において半導体という言葉を聞かない日はあるかもしれませんが、半導体を使った機器に接しない日はありません。半導体は、家電製品、スマートフォン・タブレット、自動車電装部品、信号機(LED)、クラウドデータセンターとさまざまなところで使用されています。また近年では省エネや再生エネルギーの取り組みが活発化しており、パワーデバイス、太陽電池や熱電材料で半導体が大きな役割を担っています。

半導体とは?

電気的性質で分類すると物質は、導体、半導体、絶縁体(誘電体)に分かれます。

  • 導体:多数の自由電子の存在による低抵抗体
  • 半導体:絶縁体と導体の中間。条件により導体になったり、絶縁体になる。
  • 絶縁体(誘電体):自由電子が殆ど無く高抵抗体

図1

半導体Siについて

半導体の代表的なものとして、Si(シリコン)があげられます。 このSi(シリコン)に不純物をドープすることでキャリア濃度との整合をおこないます。 さてSi(シリコン)には最外殻に4つの電子があり、そこに最外殻に5つの電子がある、不純物であるP(リン)をドープすると電子が余り、キャリアタイプがN型の半導体となります。 同様に最外殻4つのSi(シリコン)に最外殻3つのB(ホウ素)をドープすると、正孔(ホール)1つでき、P型の半導体となります。
この電子/Holeの移動の速さと含有量が半導体の特性を決める重要な要素となります。

図1

パワーデバイス

この半導体で現在活発に研究が進んでいるのが、パワーデバイスです。電気自動車(EV)・ハイブリッド自動車や電車などのインバータに使用されています。

  • 交流→直流変換 (蓄電時)
    例えば家庭用電源を用いて、何らかの電池を充電しようとする場合、交流を直流に変換(整流)する必要がある。
  • 直流→交流変換 (給電時)
    電池から再度送電網へ電力を供給する場合、今後は逆に直流を交流に変換する必要がある(インバータ) 。

パワーデバイスに求められる条件

  • 高電圧対応
    -高い電圧をかけても壊れないこと
    -性能劣化(例えばダイオードの漏れ電流が増えるなど)しないこと
  • 大電流対応
    大きな電流が流せること
    大きな電流を流したときの損失(例えばMOSFETのON抵抗)が小さいこと
  • 高耐熱性
    外部から熱が加わったとき・自らが発熱しても正常動作すること
    耐熱性を持つことで冷却用のファンやヒートシンクが不要であること

Siにかわるワイドバンドギャップ半導体

シリコンを用いたパワー半導体は多く使用れていますが、シリコン由来による性能向上の限界が近いと言われています。代わりに注目されているのが、SiC、GaN、GaO、ダイヤモンドなどに代表されるワイドバンドギャップ半導体です。性能改善および低コスト化により、実用化(量産製品化)されているものが年々増えています。

半導体材料に求められる物性

移動度は高(速)いこと(=結晶に固有の理論値がMax.)、キャリア濃度を任意に制御できる(真性 intrinsic ノン(アン)ドープ/P型アクセプタ・ドープ条件/N型 ドナー・ドープ条件)が求められます。この移動度とキャリア濃度を算出するために、比抵抗・ホール測定が必要となります。

比抵抗とホール測定について

比抵抗とは、材料が電気を通しやすいかを比較するための物性値です。単位は[Ωm]、 慣例的に[Ωcm]も使われます。

図1

またρ (ロー)の逆数のσ(シグマ)は以下のように表されます。
これは電気の通しやすさを表します。
ただし抵抗測定だけでは、移動度とキャリア濃度を算出することはできません。そこで必要となるのが次に述べるホール測定です。

図1

ホール測定とは

まず、ホール効果とは、電流が流れている物体に垂直方向で磁場をかけると、電流と磁場の両方に垂直な方向で起電力が生じる現象です。

サンプルに対してまず磁場を印加、対角線に印加電流を流します。もう一方の対角線で電圧を測定します。

図1

ホール電圧の計算式は以下のように表すことができます。

RH: ホール係数、VH: ホール起電圧[V]、B:印加磁場(磁束密度)[T]、I: 印加電流[A]、d:サンプルの厚さ[m]

μH: 移動度[m/(V・s)]、ρ: 抵抗率(比抵抗)[1/(Ωm)]

n: キャリア濃度、q: 電荷[C]

測定上の注意点・ノウハウ

比抵抗測定:Van der Pauw法

図1

Van der Pauw法 抵抗測定のスイッチパターン

図1

Van der Pauw法の注意点

この測定方法のメリットは、サンプルの形成が比較的しやすく、膜厚のみが分かっていればサンプルの縁で抵抗値を測定することが可能です。
実際に、サンプルに異方性が無い場合は、多くの方が Van der Pauw で測定されいます。 逆に、異方性があるサンプルでは,Van der Pauw では正確に測定を行う事ができなので、 バータイプの測定が必要になります。

  • A) 正方形/円形の対称性を持った電極配置であること(ホール測定を行う時)
  • 図1

    図1

    当社のサンプルホルダに取り付けたサンプル例です。サンプルとツメ電極との間にオーミックコンタクトとなる電極材料を蒸着しています。

  • B) 試料は厚みが一定で、可能な限り均一であること
  • 図1

    酸化亜鉛(ZnO)にてP型作製に成功?
    サンプルの膜厚の違いで、電流の流れる経路が正しくないと、図のように試料外側(P型)と内側(N型)で全く逆の特性が見える場合もあります。(出典:国立研究開発法人物質・材料研究機構 大橋直樹氏当社主催セミナーでの講演資料)

  • C) 電極はサンプルの縁に、限りなく小さいこと
  • 図1

  • D) オーミックコンタクトが取れていること
  • 図1

    半導体に電極をつけた場合、ダイオード的な接触か、または抵抗的(オーミック)な接触か確認することが必要です。

    図1

    この図は、左側で金を使用してオーミックコンタクトを得られなかった場合、右側はアルミでオーミックコンタクトを得られた場合の測定データ(抵抗測定/ホール測定)を示しています。

    図1

    また、オーミックコンタクトが取れない場合、電極の抵抗が高ければ、そこが局所的に発熱することもあります。熱による抵抗値の変化もあり、正確な測定をおこなうことができません。

    図1

    どのような金属が電極材料に向いているかを表したイメージ図です。例えば、p型半導体に向いているのは、金や白金などがあります。n型にはアルミやチタンなどがあります。

基板の比抵抗/ホール測定を行っていないか、確認すること

図1

・基板はサンプルに対して十分に大きい抵抗の材質である事が理想
・空乏層を通り 基板に電流が流れていないか?

測定系の注意点

高抵抗試料を測定する際は

  • 大きな入力インピーダンスを持った電圧計を準備する
    • 汎用的な電圧計は入力インピーダンスが100MΩ~1GΩ
      これでは、2端子間抵抗>100MΩの試料は測定不能
    • ResiTest高抵抗モデルは入力インピーダンスが100TΩ
        • サンプルホルダの絶縁性を確認する
          • 高抵抗試料の場合はサンプルホルダからの漏れ電流も測定精度に影響を与える
          • 試料を付けていない場合の漏れ電流の測定も重要

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