VSM/AGMの原理・特長と磁性材料の評価

VSMの原理と特長

VSMは、Vibrating Sample Magnetometerの略称で、振動試料型磁力計とも呼ばれています。
VSMは、操作が簡便かつ高速測定が可能であること加え、5.5K~1200Kまで温度を変化させ、測定を行うことができます。また、低磁場から高磁場まで磁場を印加することも可能で、幅広い磁性材料の測定に使用されております。
VSMでは、磁化した試料をロッドに取り付け、直流磁場中にて、一定の振動数で振動させます。図1のように、磁場を印加させるマグネットの両端には、検出コイルが取り付けられております。コイルを通過する磁力線の変化により、試料の磁気モーメントに比例した信号である、交流の誘導起電力を得ることができます。

図1:VSMの原理図

AGMの原理と特長

AGMは、Alternating Gradient Magnetometerの略称で、磁場勾配型磁力計とも呼ばれています。
AGMは、非常に高感度な測定ができるSQUID 磁力計と比べても、一桁ほど測定感度が高いのに加え、高速に測定できるのが特長です。そのため、磁化が非常に弱い岩石中の磁性鉱物の測定などにも用いられております。
AGMでは、直流磁場内にて試料に微小な交流磁場を印加させることにより、試料の磁化による周期的な力を生じさせます。図2のように、試料を保持したプローブの上部には、圧電素子が取り付けられており、試料により生じる微小な応力の変化を電気信号に変換します。この電気信号は、試料の振動振幅に比例し、試料の磁気モーメントに比例します。また、印加する交流磁場の周波数を、プローブの共振周波数に合わせることにより、機械的な共振を利用した、非常に高感度な測定を実現しています。

図2:AGMの原理図

磁性材料の評価について

磁性材料の評価は、磁場を正負の磁場に掃引させることに得られるヒステリシスカーブによる解析が主ですが、その測定で得られる結果は、測定対象物の磁気モーメントの平均値となります。このため、対象物中の磁気相互作用や保磁力の分布に対する情報は得ることができません。近年では、ナノスケールの磁性材料やナノコンポジット磁石などの研究も盛んになっており、磁気特性を評価するためには、平均化された特性だけでなく、材料中の構成物質間の相互作用などについての評価も重要になってきております。

磁性材料の評価について

FORC 測定は、First Order Reversal Curve 測定の略称で、磁性材料中の構成物質間の磁気相互作用や保磁力分布などを解析できる測定手法です。主に、古地磁気学において、岩石中の磁性粒子の解析などに用いられてきました。しかし、最近では、磁性材料の研究分野においても、この手法で材料を評価する研究が行われてきております。
FORC 測定では、一度測定物を磁場Hsatにて飽和させた後、逆磁場Haを印加し、再び磁場Hsatまで磁場を掃引します。この一連の測定を、磁場Haを少しずつ変化させ、ヒステリシスカーブ内を埋めるように細かく行っていきます。図3はLake Shore 社のAGMを利用し、New Orleans 大学で合成されたニッケルナノワイヤーのFORC 測定を行った結果となります。図3(a)は、測定から得られたデータ処理前の結果で、横軸は磁界の強さ、縦軸は磁気モーメントとなります。得られた結果は、データ処理され、図3( b)のように3Dの等高線図にプロットされます。縦軸Huは磁気相互作用の分布、横軸Hcはスイッチング磁場の分布、高さは磁気モーメントを磁場のパラメータで偏微分した値となります。
この研究では、ワイヤーの長さや直径、ワイヤー間の平均距離などを変化させて試料を合成しています。得られたFORC 測定の結果を比較することにより、ワイヤー間の相互作用やナノワイヤー合成についての知見を得ています。

次に、図4にメーカ担当者がギリシャでサンプリングした岩石をFORC 測定で解析した結果を示します。結果から、単磁区粒子の特長である閉じた等高線の分布がみられると同時に、多磁区粒子の特長である、開いた等高線の分布がHu 軸まで広がっている特長もみられます。この結果から、この試料は単磁区粒子と多磁区粒子の中間的な性質を示す、擬似単磁区粒子であることが示唆されます。

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アクセサリ販売および修理サポートは2026年5月8日をもって終了予定でございます。

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株式会社東陽テクニカ 理化学計測部