東陽テクニカとキーサイト・テクノロジーが提案する、
FFTベース測定技術を利用した新しいEMIコンプライアンス測定ソリューションを紹介するスペシャルサイトです。
新ソリューションの原理から、効果的な測定事例、製品の詳細まで測定業務に役立つ情報をお届けいたします。
まずは最新EMIレシーバー「PXE」で解決できることを動画でご紹介!
EMI測定において、こんな事お困りではないですか?
check 測定値がばらつく、再現性がない
check 同じEUTなのに、前回と測定値が違っている
check 対策の際に、NGの信号が見つけられない、改善効果を把握しにくい
check EMIレシーバーの操作が難しくて、うまくノイズを観測できない
これ、全てFFTベースのEMIレシーバーで解決できます!
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では、FFTベースの測定技術、ソリューションとはどういうものでしょうか?
本サイトでは、以下をご紹介致します。
- 最終測定前のノイズの絞り込み
- 測定値のバラつきの低減
- 広帯域ノイズに埋もれた狭帯域ノイズの発見
- 東陽テクニカ:放射・伝導エミッション計測評価ソフトウェア 「EPX/RE」&「EPX/CE」&「EPX/VE」
- キーサイト:フルコンプライアンスEMIレシーバー N9048B PXE (掃引及びTDS両対応モデル)
さらに… AIで効率的な対策作業には EMI対策アシストソフトウェア『EMINT』
1. FFTベースの測定技術とは?
計測で利用されているFFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換)とは、オシロスコープのように時間軸でサンプリングした信号を、演算処理により周波数軸(周波数スペクトラム)に変換・表示するものです。
従来、EMCのような周波数スペクトラムの解析では、ヘテロダイン方式による掃引型の測定が主流でした。これは、従来のFFTでは下記に述べるような制限事項があり、ノイズ測定には不向きで、かつCISPR規格で求められる測定器仕様を満たせなかったためです。
従来のFFTの制限事項とは?
FFT演算を行う際、時間軸でサンプリングしたデータの一部を離散的に抜き出してスペクトラムに変換していたため、時間軸方向でかなりのデータの抜けが発生します。
CW信号の場合はこれでも実用上問題は少ないのですが、ノイズ測定の場合、時間的に変動するものは、取りこぼしたり、測定レベルの読み値の信頼性が損なわれる問題が生じます。
Time Domain Scan (TDS)
従来のFFTの制限を解決したのが、Time Domain Scan (TDS)と呼ばれる手法です。FFTを利用して時間軸でサンプリングしたデータを周波数スぺクトラムに変換する作業は同じですが、サンプリングデータを時間的にオーバーラップをかけてFFT処理することにより、データの抜けを無くし、測定レベルの確度をはじめ、CISPR規格で求められる測定器の仕様を満たすようになっています。
従来の掃引型にないTDSの特徴は、一定の帯域幅をまとめてスペクトラムに変換するため、QP検波のような時定数が長いものでも、掃引型のように測定ポイントごとに時定数時間処理する必要はなく、ある程度の帯域(30MHz程度)を1測定ポイントの時間とほぼ同じ時間で処理できます。
例:測定範囲 150KHz~30MHz(RBW 9KHz、 dwell time 1秒)の場合
- 掃引型でQP検波測定すると完了まで約4時間弱
- TDSでは同条件で約2秒
これにより、特定の測定条件では、大幅に測定時間を短縮できるようになりました。しかし、次に解説するTDSの制限事項により、多くのケースでユーザーがメリットを享受するにはいたりませんでした。
従来のFFTとTime Domain Scan (TDS)の動作の違い
TDSの制限事項とは?
TDSは、FFT演算を大量に行うため、従来の演算ハードウェアの処理能力の限界により、表現できる周波数スペクトラムの帯域幅が制限されました。一般的にはピーク検波の場合で、40MHz程度、QP検波を行うとさらに演算負荷が重くなるため帯域は30MHz程度まで制限されたりしています。
これにより、伝導帯域の測定では測定時間の大幅な短縮が可能ですが、30MHz~1GHzの放射試験においては、TDSだと数10MHz幅の測定を小刻みに繰り返して測定する結果、全体の測定時間が長くなり、掃引型の測定を置き換えるまでには至っていません。
lightbulb豆知識
CISPR 16-1-1で記載されている測定器は以下の4つです。
- tunable voltmeter
- EMI receiver
- spectrum analyzer
- FFT-based measuring instrument
FFT-based measurement instrumentとして、その他の測定器と同様CISPR規格で定められた測定器仕様を満たすのは当然ですが、measurement timeの間、連続的に信号を評価する事が求められており、この点において従来のFFTをそのままEMIコンプライアンス測定に利用することは出来ません。
FFTを利用して、上記の要求を満たすことができる手法の1つとして、TDSが位置づけられます。
Accelerated Time Domain Scan(A-TDS)
TDSの登場により、伝導帯域でのQP検波測定など一部のEMI測定試験でメリットが生まれましたが、さらに機能を拡張し、30M~1GHzの放射測定への対応を狙った
のが、A-TDSです。
A-TDSは、高性能なハードウェアエンジンにより、ピーク、QP、EMIアベレージの3検波同時で、TDSの帯域幅を従来の10倍以上の350MHzまで拡張し、
この周波数帯域内の全周波数について、最小Dwell time 50msecで一切の取りこぼしなく、連続的に測定をすることを可能にしたものでした。
この連続的にギャップレスで測定する機能をReal Time Scan (RTSC)と呼んでいます。
この度、このRTSCはさらに機能向上が図られ、TDSの帯域幅が従来の350MHzに加え、さらに1GHz まで拡張され、3検波同時測定、最小Dwell time 50msecは
そのままで、1GHzの広い周波数帯域の全周波数において、一切の取りこぼしなく、連続的に測定することが可能になりました。
さらに、1GHzのTDSの帯域幅は、3.2GHzまで設定することが可能です。
1GHzの広帯域化により、自動車などQP検波で1GHzまで測定される場合の測定時間の大幅な短縮はもちろんですが、Real time scanを使うと、30MHz~1GHzの
一般的なEMI測定全般に大きなメリットが生まれます。
自動車の例:
測定範囲 30MHz~1GHz(Dwell time 1秒、ピーク/QP/EMIアベレージ3検波)の場合
従来のTDS測定(30MHz FFT帯域幅、RBW 120KHz) 約80秒
従来のA-TDS測定(350MHz FFT帯域幅、RBW 120KHz) 約5.8秒
新A-TDS(1GHz FFT帯域幅、RBW 9kHzおよび120KHz) 約2秒
TDSの周波数スキャンモード(30-1000MHz)での動作イメージ
Real time scan (RTSC)が実現する新たなEMI測定
RTSCは、TDSをベースに1GHz帯域内の信号・ノイズに対し、連続的、ギャップレスの測定を行う事が出来ます。
この時、ピーク、QP、EMIアベレージの3検波のトレースを同時に表示、最小50msecからのDwell timeに対応していますので、検波ごと、いつ、どの動作でノイズが発生したかを把握したり、ノイズの変動など真の立ち振る舞いを観測する事が可能です。
また、RTSCの操作は、スタート周波数とストップ周波数、Dwell timeを設定するだけのシンプルな体系ですので、スペアナやレシーバーの操作経験の少ないユーザでも簡単にすぐ利用出来ます。
Real time scanのギャップレス測定について
Real time scan (RTSC)を利用した新たな放射エミッション試験
RTSCを活用することで、30MHz~1GHzの放射エミッション測定について、冒頭で述べた以下のような問題を解決できます。
check 測定値がばらつく、再現性がない
check 同じEUTなのに、前回と測定値が違っている
check 対策の際に、NGの信号が見つけられない、改善効果を把握しにくい
check EMIレシーバーの操作が難しくて、うまくノイズを観測できない
RTSCは原理的にノイズの取りこぼしがなく、変動するノイズの変化も見逃しません。これにより従来の掃引型のスペアナやEMIレシーバーのように、測定条件や測定者ごとに値が異なるという問題を排除できます。
また、ベテランの測定者以外、対策が主な用途のR&Dエンジニアでも、簡単な操作でノイズの立ち振る舞いが観測できるので、本来の現象確認や対策に集中できます。
Real time scanでの各種表示画面の例
Real time scan (RTSC)を放射コンプライアンス試験に利用する
RTSCのギャップレス測定という特長をプリスキャンに利用する場合、30MHz~1000MHzの測定帯域を1バンドで測定することが可能になります。
ギャップレスであるため、従来の掃引測定に比べて、取りこぼしやバラつきを抑えた、格段に信頼性の高い測定を短時間で実現できます。
プリスキャン結果から、いくつかの代表的なノイズをピックアップした後、フルコンプライアンスのTDSを用いて最終測定を行うことで、
フルコンプライアンス測定結果として利用することが可能です。
後述する東陽テクニカの放射エミッション計測評価ソフトウェア「EPX」シリーズはRTSC機能をフル活用、上記の工夫を盛り込んだ、新世代の自動測定ソフトウェアとなっています。「EPX」シリーズを利用すれば、多くのユーザがベテラン測定者並みの信頼性の高い測定を実現できます。
Accelerated Time Domain Scan (A-TDS) の注意事項
多くのメリットがあるA-TDSですが、測定帯域幅を1GHzに広げたことのトレードオフが存在します。CISPR規格で規定される測定器仕様のうち、以下の点において
適合できません。
・極めて狭いパルス幅のインパルスで、繰り返し周波数10Hz未満のものは、CISPR16-1-1の測定確度を超える可能性がある。
ただし、当社製ソフトウエア「EPX」を使用すれば、そのようなインパルスの存在を自動で見分けることができ、存在していないことが確認できれば、
フルコンプライアンス結果として使用することができます。
A-TDSの最大1GHz帯域のRTSCを利用すれば、ギャップレスでノイズの真の振る舞いを把握することにより、ノイズ源の特定はもとより、従来の掃引測定や、
狭帯域のTDSに比較し、ユーザの経験や知識に関係なく、格段に測定値のバラつきを低減できます。
これにより、再測定やリワークなど、無駄な作業を回避できます。
2. A-TDSの効果的な測定事例
A-TDSを利用すると、EMI放射測定において、これまで頭を悩ませていた多くの測定の問題を解決できます。ここでは、いくつかの改善事例をご紹介します。
事例その1 「最終試験の対象ノイズを合理的に絞り込み、試験時間を短縮する」
従来、掃引型のスペアナやEMIレシーバーでプリスキャンを行う際、掃引に時間がかかるQP/EMIアベレージ検波は選択出来ませんでした。ユーザーは、ピーク検波およびそのMAX Holdのトレースから、QP/EMIアベレージ検波でのレベルや挙動を想像して、最終試験で測るべきノイズをピップアップすることになります。この時、リミットに対するマージンを考慮すると、実際に測るべきノイズより多くの候補を最終測定せざるを得ません。これは非常に手間と時間のかかる作業です。さらに、手間を惜しむと、本来測るべき最悪値を取りこぼす恐れもあります。
これに対し、RTSCでは、プリスキャンでもピーク/QP/EMIアベレージの3検波を同時に測定出来ます。これにより、QP/EMIアベレージ検波でのレベルを実際に把握することが出来るので、測るべきノイズを合理的に判断できます。また、細かいDwell timeの設定により、時間的に変動するノイズのレベルや周期も確認できるので、最終測定の測定条件を間違いなく設定、正確な測定が行えます。
ノイズの可視化による合理的な判定で無駄を省き、正しい条件設定による最終試験で、作業効率と正確性を両立できます。
実際の測定例 (東陽テクニカ 放射・伝導エミッション計測評価ソフトウェア 「EPX」の測定画面)
同じEUTを従来の掃引測定とRTSC測定、それぞれで最終試験のための候補ノイズをピックアップしています。
RTSC測定では、大幅に候補ノイズの絞り込みができています。

掃引測定の場合 ピーク検波のみでの候補ノイズ
(ピンクの矢印部分)

RTSC測定の場合 ピーク/QP/EMIアベレージ検波同時表示での候補ノイズ
(ピンクの矢印部分)
事例その2 「測定値のバラつきを低減する」
測定の度に値がバラつく、同じEUTなのに前回の値と異なる、これらはEUTの動作状態を確認すると同時に測定の確からしさも検討する必要があります。 そもそも時間的に変動するノイズなどは、発生タイミングを考慮した測定の条件設定がない限り、取りこぼしたり、正しいレベルを測定出来ていない恐れがあります。従来の掃引測定の場合、このノイズの立ち振る舞いを、ユーザの経験や知識で予測して対応する必要がありました。ただ、全てのユーザが同じ品質の作業を行うのは非常にハードルが高く、測定者によって、結果が異なるという悩みもよく耳にします。
A-TDSの最大1GHz帯域のRTSCを利用すれば、ギャップレスでノイズの真の振る舞いを把握することにより、従来の掃引測定や、狭帯域のTDSに比較し、ユーザの経験や知識に関係なく、各段に測定値のバラつきを低減できます。これにより、再測定やリワークなど、無駄な作業を回避できます。
以下は、実際にハイブリッド車の放射ノイズを、掃引、狭帯域のTDS(約30MHz帯域)、RTSC(A-TDSによる30MHz~100MHz帯域一括)の3つの測定手法を行い、測定手法ごとのバラつき(偏差)をまとめたグラフです。掃引や狭帯域のTDSに比較して、RTSCによる偏差の少ない(=再現性が高い)様子が分かります。
事例その3 「複雑なノイズに騙されない!」 広帯域ノイズに埋もれた狭帯域ノイズ
EMI測定を難しくしている典型的なノイズとして、広帯域ノイズに埋もれた狭帯域ノイズがあります。広帯域のノイズはスイッチング電源などでよ見受けられますが、最近はスイッチング周波数の高速化もあり、より広範囲なノイズが出る傾向があります。
従来の掃引測定の場合、プリスキャンではピーク検波とMax Holdのトレースを見ていきますが、Max Holdのトレースで最悪値を読むと、見かけ上レベルの小さい狭帯域ノイズはMax Holdのトレースに隠れてしまい、ピックアップの候補になりません。
しかし、実際には殆どの広帯域ノイズはインパルス的なので、QP検波では大した値にはならないのに対し、埋もれた狭帯域ノイズでも連続的だったり、頻度の高いものだったりすると、QP検波で大きなレベルを示します。気づかないと、本来は測定すべきノイズなのに取りこぼしてしまう恐れがあり、要注意です。
RTSCは、この様な広帯域ノイズに埋もれた狭帯域ノイズを、どなたでも簡単に識別出来ますので、測るべきノイズを取り逃がす危険を避けて、測定の信頼性を向上できます。
測定画面
3. A-TDSに対応した製品

東陽テクニカ
放射・伝導エミッション計測評価ソフトウェア EPXシリーズ
本サイトでご紹介しているAccelerated TDS(A-TDS)及びReal time scan(RTSC)をフル活用できる新世代の自動計測ソフトウェアです。
A-TDS/RTSC機能を搭載したキーサイト社製EMIレシーバー N9048B PXEを組み込んだ測定システムを構築、制御するキーのソフトウェアとなります。

キーサイト・テクノロジー
N9048B PXE フルコンプライアンスEMIレシーバー
業界初のAccelerated TDS(A-TDS)およびReal time scan(RTSC)を実装したフルコンプライアンス※4のEMIレシーバーです。
※4 A-TDS、RTSC以外に、Standard TDS(狭帯域のTDSでCISPR規格に適合)や従来の掃引測定も実装しており、フルコンプライアンスのレシーバ―となっています。
4. よくあるご質問
はい、「PXE」単体及び「EPXシリーズ」ソフトウェアを組み合わせたデモや、実際にお客様の暗室に機材を持ち込んでEUTの測定を行うデモに対応しております。
ご希望の際には、本サイトのお問合せもしくは、弊社営業までご相談ください。
はい、「PXE」はCISPR 16-1-1:2019およびMIL-STD-461Gに完全適合した、フルコンプライアンスEMIレシーバーです。
「PXE」は、従来と同様のレシーバースキャン測定および、Standard TDS(狭帯域TDS)とA-TDS(広帯域TDS)の2つのTDS測定モードに対応しています。このうち、レシーバースキャン測定とStandard TDSがCISPR 16-1-1:2019およびMIL-STD-461Gに完全適合しています。A-TDSは、一部の特殊なノイズを除いてCISPR 16-1-1:2019に適合しています。
はい、RTSCでQP検波のDwell timeを1秒以下にした場合でも、Max Holdのトレースの値を読めば、従来の掃引測定においてDwell timeを1秒以上にしたQP検波の値と等しい結果が得られます。
これは、RTSCがギャップレスに測定することにより実現しています。
はい、「PXE」は新しいA-TDS(広帯域TDS)以外に、EMIレシーバーとして従来の掃引測定にも対応、「EPX」でも掃引測定を選択できますので、これまでと同様な測定も実施できます。
また、Standard TDS(狭帯域TDS)、A-TDS(広帯域TDS)どちらでも、従来のTDSと同様、TDSの帯域幅をステップさせて任意の周波数スパンを掃引のように測定する事もできます。
「PXE」はキーサイトの最上位グレードのスペクトラムアナライザー「PXA」をベースとしています。1GHzでのDANL(表示平均雑音レベル)は、-174 dBm/Hzを実現しており、TDS以外の基本性能でも業界最高水準を達成しています。
はい、5chまでの同時Click測定に対応しています。(オプションとなります。)
はい、標準で対応しております。

